109、マリアンナ・ブラウニング side 荒唐
残酷な表現があります。ご注意ください。
なんで?どうしてこうなってるの?
私、悪くないわよね?
「エディ助けて!」
◇
私はいつもよりも早めに学園にきていた。ついに、ついにこの日がきたんだわ。
「おはよう、マリアンナ」
「おはよう、ステラとリネット!」
二人も早めに来ていたらしく、私たちは回りに人はいないが小声で確認のための打ち合わせをしていた。ステラは緊張しているのか、いつもよりも早口で話をし、リネットは意気込んでいた。
「二人とも落ち着いて。今からこれだと、本番まで持たないわよ。ふふふっ」
「ちょっと緊張しちゃって……」
私たちは落ち着くために外の空気を吸いに行くことにし、中庭にある池の辺りまで散歩に来た。時間が早いのと、この先は道場しかないのとで人はおらず、鳥の声がする程度で静かだった。朝の光に照らされた池の水はキラキラとしていて、とても綺麗だった。
「この池、あまり見たことがなかったけれど綺麗だったのね」
「女子は道場には行かないからね」
「この辺りとかでランチしても気持ち良さそう」
私たちは当たり障りのない会話をしばらくして、体がリラックスできたころに教室に戻ると、クラスのほとんどの子が登園していた。
「おはよう、遅かったね」
「バートおはよう。早く来すぎたから散歩に行ってたのよ」
「そう……」
隣の席のバートは不思議な人で、普通に話しかけてはくるけれども、こちらからは話しをしようとするといつもできなかった。うーん……。
改めて話しかけようとバートの方を向くと、すでに他の子と話していて結局今回も諦めた。
そろそろ新入生歓迎会が始まる時間となり、会場である講堂に移動することになった。一年生はEクラスから入場するため、私のクラスはすぐに順番が来る。
その際、婚約者がいる人は男性側に合わせての入場となるが、相手が上級生の場合は一年生の方に合わせることになっている。もちろん婚約者がいない人はパートナーを探してもいいし、一人での入場でも可能だ。婚約者のいないバートが列にいなかったのは、他のクラスにパートナーができたのかもしれない。
私たちはドキドキしながら入場すると在校生からの拍手で迎えられた。キョロキョロ見回すと護衛の騎士の人数は思ったより少なく、これならなんとかなりそうだと小声で話し合った。最後の入場者として王族のエディが入ってきたが、あの女をエスコートしていてとても不快な気持ちを抱いた。
「エディは私のなのに……」
私は思わず口にしてしまったが、歓声の方が大きく誰にも聞こえていなかった。
入場が終わると学園長、生徒会、新入生代表の挨拶があり、それが終わるとダンスの始まりとなる。私はまだ踊れないのでステラたちと用意されていた食べ物の方に向かった。
「殿下、にこやかに入場されてましたね」
リネットがため息をつきながら言った。
「そうかしら? あの女が卑怯な手を使ったのよ」
ステラは憤慨しながら言っているが、手はお皿にいろんな食べ物を乗せていっていた。
「まあまあ、今は食事を楽しみましょう」
会場の中央では高位貴族の人たちが踊っていて、それを眺めるもの、話に夢中になるもの、私たちのように食事をするものと各自それなりににこやかにしていた。
「さて、そろそろ出番ね。準備しましょう」
会が進むにつれ、時間を見計らって準備をはじめる。午前もだったが、午後になってもエディの回りには人がいっぱいだった。
ヒラリーとリリアが午前中に先生と話をし、お願い事の一つはすでに行ったと伝えてきたため、あの二人には次も約束通りに動くように伝えた。
そしてその時がきた。アリシアがおそらく護衛と思われる私服の男を連れてトイレに向かって歩いていた。トイレに入ったのを見てから近くに待機していたロバーツ先生に変装したステラが話しかけた。
「女子のトイレに男の人がいて入れません。どうにかなりませんか?」
と。
ステラだと気がつかないロバーツ先生はすぐに護衛の男の方に行き、
「先ほどもいいましたが、女生徒がトイレに入れません! 護衛の方は女性にかわるか、しばらく下がるかのどちらかにしてください!」
先生は女性ということもありすぐに抗議してくれ、護衛を睨むように見ていたからか、護衛もトイレから離れた。
その言い合いをしているうちに清掃員の格好をした私がトイレに入り、それに続いて変装したステラやリネットたちが入ってきた。この学園は一時間に一度、女性の清掃員が掃除に入るので、私はその女性に学園からの嘘の休憩時間を伝え、道具をこっそり借りてきていた。
トイレの中でアリシアが個室から出てきたのを見計らって睡眠薬を嗅がせると、おもしろいくらいに気を失った。脈に触ると、ゆっくりと鼓動がしたのでまだ死んではいない。
その後は三人で急いで清掃用の車輪の着いたゴミバケツにアリシアを入れ、何食わぬ顔で私は次の清掃場所に行く振りをして、ゴミバケツを押して外に出た。ステラたちは別のトイレで変装を解き、会場に残り様子を見る。
私はいつもよりも速く歩き、目的地である学園の池に向かっていた。苦労して池に到着すると回りに誰もいないことをまずは確認した。耳をすませても鳥の声以外はしなかったので、予め用意していた重りをゴミバケツの中にいるアリシアの首に掛けた。
私は気合いを入れ、ゴミバケツを倒し、中にいたアリシアを池に落とした。池を見ていると落とした辺りから小さな泡が浮いてきて、最後にごぼっと大きな泡が出て来て静かになった。
「これでエディは私のものだわ!!」
うれしさで気分が高揚しついつい叫んでしまった。と同時に誰かが走ってきて私をつき倒し、池に飛び込んだ。
呆然としていると、私はいつの間にいたのか騎士に囲まれ、後ろ手に拘束された。そのまま乱暴に引きずるように騎士団の馬車に乗せられ牢屋に放り込まれた。
どうして?
あの悪い女をやっつけてあげたのに、どうして私が捕まるの?
「エディー! 助けてー!」
私は何度も何度も助けを呼んだが、声が枯れてもエディは来てくれなかった。
読んでいただきありがとうございます。
ブックマークや高評価★、感想など頂けるとうれしいです。
励みにしますのでぜひよろしくお願いします(*^^*)




