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107、 リリア・スイートリー side 後悔

 

 私は本当にバカだったのだわ。


「リリア、マリアンナはアリシア様のことで嘘をついているわ。今のうちに離れないと取り返しがつかなくなるわよ」


 はじめはヒラリーが何を言っているのかわからなかった。だってマリアンナは殿下と結ばれる少女ではないの?


「とにかく、リリアはアリシア様に何もしない方がいいわ。いいえ、それよりもマリアンナから離れた方が……」


「ヒラリー落ち着いて!」


 こんなことを急に言われても理解できないわ。どういうことなの?



 ◇



 ヒラリーは学園に入る前から知っている。ヒラリーは病弱で王都に来たのは学園に入る二年前だった。たまたまお母様が参加したお茶会で出会い、話も趣味も意気投合したことで文通する仲になっていた。 文通では殿下にお会いしたことがあり、とてもかっこよかったことをしきりに話していて、私もヒラリーも入学を楽しみにしていた。


 残念ながら私はCクラスだったので、入学式以来、校舎も違うため殿下を拝見することはなかった。

 私は昼休みはよく図書室に通い、放課後は家の手伝いのためにすぐに帰宅していた。なかなかヒラリーと話す機会はなかったけれども、相変わらず文通は続けていたので仲はよかった。


 ある日、ヒラリーが手紙にあの本の令嬢がいた! と書いていたことがあった。私はどの人か知らなかったが、昼休みにその令嬢の方から話しかけてきた。


「私も本が好きなの。お友だちにならない?」


 ヒラリーがいっていた通りあの本の令嬢にそっくりで私たちは興奮していた。数日もすると、昼休みや放課後に集まるようになり、人も増え楽しく過ごしていた。私は放課後の集まりには行けないことの方が多かったが、ほんとうに楽しく、毎日が充実していた。


 それからしばらくして、マリアンナの噂が教室中に広がった。マリアンナが公爵令嬢に手を出したというものと、反対に公爵令嬢がマリアンナをいじめているという正反対のもので、教室内はこの件についてだいたい二分していた。私はこの時マリアンナの友達だからという理由でマリアンナを信じていた。


 そしてあの日、ヒラリーがマリアンナは嘘をついているわと言ったあの日。きっと発端は昼休憩だと思う。

 いつもの通りに食堂に行くと、マリアンナたちがある生徒のことをひどくなじっていたのだ。私は始めてみる生徒であったが、小柄でとても綺麗な顔をした子だった。今にも泣きそうな感じで、でもそれをたえて……そんな様子だった。

 話を聞いていると、例の公爵令嬢なのだろう。


 結局殿下が来て、令嬢を連れていくことでその場はおさまった。


 放課後になり、ヒラリーが来ないのを心配して探しに行くと、突然『マリアンナは嘘をついているわ』となったのだ。


「ヒラリー、ヒラリーが言いたいことは分かったわ。このことで悩んでるのなら、今からあなたの家に行ってもいいかしら?ゆっくり話がしたいわ」


 ヒラリーがかたい顔のまま頷いた。


「じゃ、私たちは用事があるから帰るって伝えてくるわね」


 私は足早に図書室の方に向かっていった。図書館につくなり、マリアンナたちの席に行き私は話しかけた。


「遅くなってごめんなさい。ヒラリーと私は用事があるから今日は帰るわね」


「用事? 何の? 今、私たちは大事な話をしていたのよ? マリアンナのために残れない?」


 ステラから聞かれるも、内容的に今日は譲れない。


「あ……。実はヒラリーの体調がよくなくて……。だから私も付き添ってこようと思って……」


 ちょっと嘘臭いかもと思いつつ答えていると、マリアンナから思いもよらないことを言われた。


「ヒラリーの家に行くの? それなら私も行きたい! ヒラリーが心配だし!」


「え……あ……。えっと……」


「それと気のせいかな……最近、ヒラリーが私を嫌ってるように感じるの……。何か誤解があるなら解きたいわ」


 さっきの件で行き違いがあったのかしら……?


「そうね。誤解があるなら話した方がいいわね。あの子、ちょっとナーバスになってるみたいだから……」


 マリアンナが嘘をついていると言っていることまでは言えず、やんわりと話した。


「実はヒラリーは私のことが内心嫌いみたいなの。今日も味方の振りをしただけで……」


「ヒラリーが? 本当に? 仲間だと思っていたのに。それならなおさら話をしないと! リリア、私たちも行くわ!」


「えっ。あの、誤解だと思うのよ?」


 私は話が勝手に動くのを恐れて、慌ててヒラリーのフォローをした。


「ええ、話をしないとね」


 マリアンナは分かってくれたのか、笑顔で話してくれた。これなら、マリアンナとヒラリーの行き違いも元に戻るかもしれない。


「では行きましょう」


 私はみんなをヒラリーの元に連れていった。


 そしてそれが間違いだったと分かった。ヒラリーはマリアンナを見た途端、みるみるうちに顔色が悪くなったのだ。私に対してもなぜ? という問いたげな顔をしていた。


「今からヒラリーの家に行くのよね。私たちもご一緒するわ。いいわよね?」


 ヒラリーは固まったまま返事をしなかったが、マリアンナは強引にヒラリーのうちの馬車に乗り、そして私たちにも早く乗るように了承を得ないまま言った。

 私はこの時取り返しのつかないことをしてしまったと後悔し青ざめていた。


読んでいただきありがとうございます。

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