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103、ヒラリー・オフリー side 失態

 

 私はどこで間違えてしまったのだろう……。

 私はあの日何をした?



 ◇



 階段の方から騒ぎが聞こえた。マリアンナの声だ!


「マリアンナ、どうしたの?」


「ヒラリー、話しかけただけなのにこの人たちが私を悪者にするの」


 マリアンナは確かにそう言った。言ったからこそ私は質問したのだ。


「あの……なぜマリアンナを悪者にするのですか?」


 あのときのあの女生徒はどんな様子をしていただろう。ラドニー先生が逃げるように女生徒を連れていくのを見て私は咎めたのだった。


「ちょっと! 質問に答えてください!」


「そのようなことはしていない。危ないことをしたから注意しただけだ」


 先生が静かに叱るように言っても信じられなかった。だったらなぜ逃げるの?

 しばらくして、Aクラスの方からマリアンナがあの女生徒を呼び止めようとしたときに肩をつかんで引き寄せたため、それが原因で階段から落ちそうになったところをラドニー先生が助けたという話が出回ってきた。


 あれ?

 マリアンナが言っていたことと違うような……?


 Bクラスには高位貴族の家の子もたくさんいて、あの女生徒はスチュアート公爵家のアリシア様だとわかった。そしてBクラスでは概ねAクラスからきた話が受け入れられていた。


 マリアンナはなんて言ってた? 話しかけただけなのに悪者にするって言ってなかった……?

 あれ?


 私は混乱しながらも放課後にはマリアンナたちと会っていた。違和感を覚えていたのに。


「マリアンナにひどいことをする女生徒が殿下のそばにいるなんて、許せないわね」


「ヒラリーも見てたでしょ?返事もしてくれなくて……」


「……ええ、そうね」


 マリアンナはシクシクと泣き出した。


「そんな女は殿下に相応しくないわ。どうにかできないかしら?」


「とりあえず今回のことは抗議しましょう。これではマリアンナがかわいそうだわ」


「そうよ、次会ったときはしっかり抗議しましょ」


 私は当たり障りなく相づちを打つだけで、話には消極的になっていた。


「ねえヒラリー、ヒラリーは私の味方よね」


「ええ……そうね」


 泣きながら聞いてくるマリアンナに否定はできず、私はマリアンナに疑問を持ちながらも集まりにはそのあとも参加していた。



 ◇



「殿下、お待ちください!」


 あれは食堂で出会ったときのことだった。


「なんだ!呼び止めるとは不敬に当たるぞ」


 側近の方は私が不敬だと怒っていたが確かめなくては。


「よい。なんだ?」


「アリシア様が、このマリアンナをいじめているらしく、今もマリアンナが泣いていたのです」


「何があった?」


「マリアンナがいうには話しかけると隣にいるラドニー先生に怒鳴らせてマリアンナが悪いように仕向けると言ってて……」


「聞くに値しない」


 !!!


 殿下はアリシア様に笑顔を向け、アリシア様の腰を抱き、マリアンナが殿下の腕を取ろうとしたのを振り払われていたのを見て何かが抜け落ちたような気がした。


 私は殿下やアリシア様たちが去ったあと、どうやって教室に戻ったのか覚えていない。気がついたら放課後になっていた。

 Cクラスのリリアが教室まで呼びにきたけれど、あのグループに戻るつもりはない。


「リリア、具合が悪いから帰るわ……。リリアごめんね。もう行けないわ」


「顔色が悪いわよ。早く家に帰って休んでね。あ、心配だから馬車まで見送るわね」


「ありがとう」


 リリアはいい子なんだ。優しくて、本好きで、とても気が合う友達。このまま何も言わずにいても良いのだろうか。

 廊下を歩きながら私の気持ちはだんだんと沈んでいった。声が出ないまま馬車の待機所につくと、「また明日」とリリアが去ろうとしたのを見て、思わず腕をつかんでしまった。


「ヒラリー、どうしたの?」


 きょとんとした顔をして私を見るリリアに、私は意を決して言った。


「リリア、マリアンナはアリシア様のことで嘘をついているわ。今のうちに離れないと取り返しがつかなくなるわよ」


「ヒラリー、どうしたの?」


「とにかく、リリアはアリシア様に何もしない方がいいわ。いいえ、それよりもマリアンナから離れた方が……」


「ヒラリー落ち着いて!」


 私は一人でぶつぶつ言って、回りが見えてなかったようでリリアはとても困った顔をしていた。


「ヒラリー、ヒラリーが言いたいことは分かったわ。このことで悩んでるのなら、今からあなたの家に行ってもいいかしら?ゆっくり話がしたいわ」


 私は小さく頷いた。


「じゃ、私たちは用事があるから帰るって伝えてくるわね」


 リリアは足早に図書室の方に向かっていった。


 私は一人だけ逃げるのが嫌だっただけだ。マリアンナが平気で嘘をつくことも怖かったし、せっかくBクラスに入ったのに、何かやってしまってクラスにいられなくなるのも怖かった。でもリリアと二人でならなんとかなるかもしれない。


 私はリリアを待っていると、リリアが廊下を歩いているのが見えたのと同時に、マリアンナが笑顔で私の方に歩いてくるのが見えた。


 リリア、どうして一緒に来たの?


「今からヒラリーの家に行くのよね。私たちもご一緒するわ。いいわよね?」


 ああ、私はどこで間違えてしまったのだろう……。



誤字報告ありがとうございます☆



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