102、エドワード王子 side 内勤
あと二日したら僕はアリに会いに行く。そうしないと僕は僕でいられない。
「指折り数えるだなんてかわいいなあ」
声がした方を振り向くと父上が壁に寄りかかり腕組をして立っていた。
「父上……僕はそんなことはしていません!」
父上は父上の執務室の方向を指差してから歩いていく。付いてこいと言うことらしい。
父上の執務室に入るとテーブルの上にたくさんの資料があり、父上が指差す。
「どれでもいいよ」
二、三枚取って読むと、視察のための資料だった。
「一週間ぐらい行くらしいからさ、ついでに仕事しておいで。この辺りなら行きやすいかな。あとこれも……」
「父上……多すぎませんか?」
「口実は多い方がいいかなあと思ってね。あ、行くまでにこれもやっておいてね」
「……はあ……」
あまりの量にため息しかでなかった。
「ああ、それと、ランのところから借りてるみたいだけど、くれぐれも怪我させないようにね。あとがうるさいから」
「はい。完全には無理かもしれませんが、学内ではラドニーを付けてます」
「ではラドニーにも私から伝えておこう。行っていいよ」
「では失礼します」
僕は両手いっぱいに資料を持たされ、おそらくうんざりした顔で自分の執務室に向かった。
執務室に着くとバートから手紙が届いていた。中身を確認すると、僕は一瞬目を見開いたが、手紙を読み終わると引き出しに丁寧にしまった。
それから僕は執務室で遅い夕食を取り、かなり遅い時間まで仕事をしてから眠りについた。
まだ夜が明けきる前の薄暗い中、目が覚めた僕は重い体を引きずるように汗を流しにいく。
「眠れないのが普通になってしまったなあ……」
独り言がついつい声に出てしまう。汗を流し手早く服を着て執務室に移動した。外は夜が明けて次第に明るくなっていった。
◇
夕方まで軽食は取りつつも執務に専念していたが、従者からバートが来たことを告げられ慌てて迎えた。
「すまない。少し立て込んでいた」
「かまいません。お忙しい中申し訳ありません」
「早速だが、明日の新入生歓迎会だが、リリーシュをエスコートさせてほしい」
「元よりそのつもりです。よろしくお願いいたします。それとあの女たちの企みですが……」
「ああ、昨日読んだが、あれは本当か?」
「リリーシュが確認したようです」
バートは表情を変えずに話す。
「ではその準備も平行してしておこう。くれぐれもリリーシュに怪我がないように対応しなければ、頼んでいる手前申し訳ないからね」
「妹は大丈夫ですよ。ご心配には及びません」
「まあ、頼りにしてるよ。では手筈通りに」
「承知しました」
バートが執務室から出て五分足らずでタキレスとサイテスが訪ねてきた。
「タキレス、サイテス、さっそくだが様子はどうだった?」
僕はすぐに本題に入り学園の様子を聞くと、明日の打ち合わせをした。
「タキレス、サイテス、新入生歓迎会で何か起こるかもしれないし、起こらないかもしれない。どちらにせよ明日は特によろしく頼むよ」
「わかった」
「承知しました」
準備は万端とは言えないかもしれないが、出来る限りのことをした。近衛の配置はラドニーに任せたので後は明日を待つだけとなった。
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