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100/156

100、リリーシュ・アシュビー side 着実

100話目!!

いつもより文字数多目ですがたまたまです(^^;



 

「リリーシュ、少し面倒なことになった」


「兄様何かあったのですか?」


「レオナルド様とアリシア様が領地に十日ほど戻られるそうだ。それも明朝に」


「それはまた急ですね」


「ああ、それで殿下の対応をするように命じられた」


「それは大変そうですね」


「……他人事みたいに言ってるけれど、リリーシュが……だよ」


「えーっ!!」


 兄様はマリアンナの監視があるからできないらしく、私が主にすることになったらしい。ただし、明日は兄様から殿下に話をしてくれるようで少しだけホッとした。


 私たちは朝早くから学園に行き、教室で殿下を待つ。私は変装の最終チェックをしに一旦教室を出て戻ってくると、すでに殿下は登校していた。早いな。


「そうか。それにしても妹さんはすごいな」


 私の話?


「私の一族は一通りのことができて当たり前なのですごくはないですよ」


 確かに。でも自分でいうのと、人から言われるのとでは雲泥の差があると思う。


「当日までラドニーをつけるが、くれぐれも気を付けるように伝えておいてくれ」


「そこにおりますゆえ、聞こえているかと」


 静かに入ってきたつもりだったけれど、兄様には気づかれていたようだ。


「今日もよろしく頼むよ」


「承知しました」


「ところであなたの名前は?」


「私はリリーシュ・アシュビーと申します。よろしくお願いいたします」


 歳は若いですが、私なりにがんばりますという意味を込めて真剣な顔で挨拶をした。



 ◇


 今日は一日殿下と過ごすのだろうか。

 午前の授業は特に難しいところもなく普通に進んだ。こんなものか。

 殿下もスラスラやっていたので、学園はあまり難しいものは出てこないのかもしれない。


 昼休憩になり、昨日と同じようにラドニー先生と食堂に行く。なぜラドニー先生なんだろう? と思っているとラドニー先生が話してくれた。


「近衛は王族警護と決まりがあるので学園内では動けないのですよ。その点、私は学園内はフリーパスですからね」


「そうでしたか」


「といっても事情は知っているのでいざというときは動きますよ」


「頼もしいです」


 誰が見ているかわからないのでアリシア様らしくふふっと柔らかく笑う。


 食堂では近くに兄様がいるのを確認してテーブル席に座る。この食堂は食べるものを買ってから席につくシステムなので、私は野菜のサンドイッチと果実水を買ってきた。


 昨日のお肉のサンドイッチもおいしかったけれど、これもおいしそう。食べてみるとソースが少し甘めだが絶品でいくらでも食べられそうだった。食べ終わった頃兄様を見ると、くいっと小さく顎を上げた。


 兄様が顎を上げた方向を見ると、マリアンナが遠くから駆けてきてちょうど私の席の横で転んだ……ように見えるように倒れた。さすがに私の動体視力からではスローのように動きがわかる。


「アリシア様、足を引っ掻けるなんてひどいです! そんなに私が憎いのですか?」


 私の足がテーブル内に収まっているのが見えないのかしら?


「血が出て……ひどいわっ」


 ないよね。血、出てないよね。ばっちり見えてたよ!

 マリアンナは分かりやすく泣き、私は内心おもしろく思いながらも困惑した顔をする。


 誰も声をかけないけれど遠巻きに見られてるのを感じながら第二陣である取り巻きが到着した。


「まあ、マリアンナどうしたの?」


「ア、アリシア様に足を引っかけられて……シクシク」


「なんてひどいことを……」


 昨日の先陣切ってた人は今日は来てないのね。と思いつつ、口を引き結ぶ。


「どうして何もしゃべらないのですか? マリアンナに何をしたか分かってるのですか?」


「もういいわ。私がきっと悪いのよ」


「ああ、マリアンナかわいそうに……」


 まるで舞台のように大声で話す。それに対しラドニー先生は普通の声の大きさで叱る。こちらも大声で話すとエスカレートするのが目に見えてるし、食堂で大声で叱るのはやはりマナー違反だからだろう。しかし聞くだろうか。


「君たち、根も葉もないことで騒ぐのはやめなさい。アリシア嬢はそのようなことをしていない」


 案の定、全く聞いていない。そこへちょうど殿下たちが近づいてきたのが見えた。


「またお前たちか。アリシアに手を出すなら僕はゆるさないよ」


 殿下はマリアンナたちを睨みながら私の腰を抱き立たせた。殿下、相変わらずマリアンナたちに冷たくてすばらしいです。アリシア様が愛されてることにホッとしてうれしくて泣きそうになる。アリシア様はいろいろあったから……。

 殿下が「大丈夫だよ」と私に優しく声をかけたのを見た回りが、ざわざわとしているのは、殿下が私にだけ微笑んだからだろう。



「この件は職員会議で報告する」


 ラドニー先生が静かに言うとマリアンナたちは「殿下は騙されてる」だの「先生は高位貴族を贔屓している」だの言い出した。彼女たち、思った以上に残念な人たちだったようだ。


「アリシア、授業が始まるから行こう」


 殿下は丸々それらを無視し、私の腰を抱いて歩き出すと、最後まで「殿下は騙されてます。目を覚まして!」と叫ぶマリアンナに心底うんざりした顔をしていた。


 わかります。私もおもしろがらないとやっていけませんから。


 教室までいくと、やはりさっと体を離す殿下に好感度が上がる。アリシア様、やはりアリシア様は愛されてますよ。


 そのあとは午後の授業を難なく受け、放課後になると兄様がきて殿下と打ち合わせをする。その間、私は顔を変えて図書室に行き、いつもは兄様がしているマリアンナたちの監視をしばらくする。この仕事、兄様はよく我慢できるなあと感心しつつ、帰宅することにした。




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