なるべく、痛くしないから……
色々寄り道したが、気を取り直して、アミルちゃんと相対する。
アミルちゃんからは、強そうな気配を感じた。
「シェスカ、離れろ、ヤバイ気がする、周囲にいたら巻き込まれるぞ」
「は、はい……」
シェスカは離れた。
「決して戦おうとするな。アミルちゃんは手練れだ!」
俺の、アミルちゃんの強さ分析に、盗賊が目を細めた。
「ほう……、なかなかいい目をしてやがるな、坊主……」
「……ごめんね、お兄ちゃん、……いくよ」
刹那。アミルちゃんが、一陣の風となった。
一直線に、こちらに迫るアミルちゃん。
「なるべく、痛くしないから……」
瞬く間に、アミルちゃんが俺の眼前へ。
「うぉ! 間近で見ると、さらにかわいい!」
「――にゃっ!」
びっくりした表情になったアミルちゃんの足がもつれ、剣がぶれた。アミルちゃんの剣先に生えていた草花が哀れにも、ちょん切られた。
「……にゃにゃにゃ――」
アミルちゃんは、猫みたいな声だして鳴いている。戸惑っているみたいだ。
盗賊が肩を竦めた。
「おいおい、真剣な立ち合いで、茶化すようなこと言うんじゃねェよ……」
「しょうがないじゃないか」
「アミル、坊主を倒したら、褒美に魚をやるぞ」「――おい、食いもんで釣るな!」
「――え!」
俺は即座に突っ込んだが、アミルちゃんの耳がピコッと反応した。食いついてしまったようだ……チョロいのか。
アミルちゃんは盗賊を見て、訊いた。
「お魚さんくれるって、ほんと!?」
「ああ」
盗賊が約束すると、アミルちゃんがぱぁっと目を煌めかせて、涎をだばーした。耳がめっちゃ反応している。
「……じゅるり」
涎を拭うアミルちゃんのお腹が可愛く鳴った。アミルちゃんがぽっと頬を染める。アミルちゃんは、恥ずかしげな声で、言った。
「聞かなかったことにして……」
俺ら、コクコクと頷く。不幸な事故だ、今のは聞こえなかった、アミルちゃんはお腹を鳴らしていない、いいね?
「お兄ちゃん、にやけてる……」
「ごめんよ」
「……」
アミルちゃんはじとーとした目で、俺を見た。やがて――、
「よし」
アミルちゃんは、折り合いをつけたようだ。何が『よし』かわからないが、『よし』は『よし』で『よし』なのだ。
「――じゃあ頑張ってみる」
やる気を出す、アミルちゃん。
微笑ましいな。
「おう、頑張ってみろ」
盗賊が応援する。
先を越された、俺も応援しなきゃ。
「頑張れ、アミルちゃん!」
俺が、アミルちゃんを応援すると、
「頑張ってください、アミルちゃん」
シェスカまで便乗した。即席アミルちゃん応援団だ。
「うん、アミル、頑張るね」
アミルちゃんが、俄然やる気を出した。「お前らは応援しなくていいんだよ!」という盗賊の突っ込みが聞こえたが、知るか。
「いくね、お兄ちゃん」
アミルちゃんが踏み込んだ。
「ああ、来い」
思わず、答えてしまったが、説得して戦いなんてやめさせた方が良かったかもしれない、という考えがよぎって――、アミルちゃんは剣を横に振りかぶって――、
「やぁ!」
掛け声と共に、大剣が真一文字に振られる。
「――っぶね!」
油断した俺は、かろうじて受け止めた。結構、重たい一撃だった。
ちょっとよろけたが、なんとか体制を整え、足払いを狙うが、アミルちゃんは跳んで――、回って、回って、回った。
身体全体で回転しながら放たれた3回の斬撃に対応すると、刹那、アミルちゃんの剣が飛んできた。剣を捨てるなんて思いきったことをするものだ、と脳裏に浮かべながら、なんとか飛んできた大剣は凌いだが、聖剣が俺の手から離れてしまう。
すると今度は本体が飛び込んできた。俺は目を見開く、受け止めるために、両手を広げてやるが――、
「――隙あり!」
「うぐ!」
アミルちゃん渾身の、体当たりをモロに受ける。アミルちゃんが、俺の胸に飛び込んできたのは、罠だった! いや、俺が勝手に引っ掛かっただけか。
よろめく俺に、アミルちゃん、跳躍、駒のように回って右足、左足、右足と畳み掛けるように、キックをしてくる――。
――アミルちゃんの可愛いあんよが迫る!
すんばらしいおみ足にまたもや油断した俺は、ギリギリで間に合わせた前腕で、アミルちゃんのおみ足を受け、――あっ! 見えた!
アミルちゃんのお股を覆う布は、純白でショーツだった。「――白か」俺は口で転がす。
「――にゃっ!」
アミルちゃんが鳴いた。と思ったら、バランス崩して俺の胸元へ向け、落っこちた。
心なしかほっぺが赤いアミルちゃんを捕まえた俺は、ネコミミをハムハムする。手が、おちりを揉む形となったが偶然だ。
「――んんっ!」
アミルちゃん、二つの刺激に感じているのか、顔をとろけさせて、涎を垂らす。
俺は、アミルちゃんの耳元で、囁いた。
「とてもキュートな、おパンティーだった。満点あげるから、プリティなおちりも見せてくれ――」
「――いや!」
アミルちゃんったらいけずなことに、全力で拒否って、暴れだす。顔を引っ掻いて、あげくの果てに、俺の腕にがぶりと噛みついた。
「あいたぁ!」
痛みに俺が、アミルちゃんを離してしまうと跳躍し――、
「赤くなっちゃって、かわいいよ、アミルちゃん。おパンティー見せてくれてありがと」
俺は、真摯に紳士的にお礼を言った。アミルちゃんに噛まれた箇所を、ペロペロしながら。
アミルちゃんは、空中で目をぱちくりして――、
「――ギニャアアアアアア!」
刹那、絶叫したアミルちゃんが、着地に失敗した。とすんとお尻から落ちたアミルちゃんは顔を歪め、涙目になり、見事なM字開脚を披露してくれた。
俺は視界に広がる白色パンティと太ももに勃起した。鼻息が荒くなるな!
「――にゃにゃにゃにゃにゃあっ!」
アミルちゃんは、その姿勢のまま、パニくったように、鳴いた。なにがなんだかわからないって顔してる。「おい、アミル、大丈夫か!?」心配した盗賊の声はアミルちゃんには届かない。
「――にゃっ!」
俺の視線に気付いたアミルちゃん、悲鳴のような鳴き声をあげ、お股を閉じ、隠す。ああ、ユートピアが見えなくなってしまった。
アミルちゃんが、起き上がった。そのまま俺の眼前へ。
「――バカっ!」
ムスっとしたアミルちゃんの罵倒。加えて、ネコパンチがとんでくる――。俺は掌で受け止めた。お手々、ちっちゃいな。かわいいお手々だ、ペロペロしてあげよう。
手を舐められたアミルちゃんが、俺を見上げ、ちょっと嫌そうな顔をしたと思ったら――、手を無理やり引っこ抜いて、上段回し蹴りをかましてきた。
俺はつかんで受け止める。アミルちゃん、片足だちでおっとと。そして俺は――エデンを見た。
「――おぉ!」
アミルちゃんの太ももとその先のパンティーを、モロに見た俺は歓喜した、愚息もアミルちゃんが、スケベすぎて歓喜しっぱなしだ。
「――にゃっ!?」
見られてるのに気づいたアミルちゃん、真っ赤になり、必死でスカート抑えてる。何回見せてくれるのだろうか、羞じらいの表情と白パンティのコンビネーションが抜群で、興奮する。
せっかくなので、今度はおみ足に触らせてもらう。ナデナデすると、すべすべだ。ほおずりもしといた。
「にゃにゃにゃっ……!?」
アミルちゃん、混乱して焦ってる。「ヒョウガ様……」呆れたようなシェスカの声。「おい、坊主、さっきから、アミルのこと弄んでんじゃネェよ!」盗賊が怒る。外野がうるさいが、知るか。
「お兄ちゃん、やめて……」
やめる。名残惜しいが、解放してやると、アミルちゃんは、足をバネにし、伸びる。
アミルちゃんの頭がグッと迫る――。
「よっと」
俺も頭を動かし、かわした。
頭突きが空振りに終わり、アミルちゃんは「にゃっ!?」と鳴いて、驚いた顔をした。顔には、『これもかわされるの!?』って書いてあった。
あげくの果てには、駄々っ子のように俺へと引っ掻きを加えようとするアミルちゃん。俺は両手を掴んで止めた。華奢な腕だ、この腕であの大剣を振ったのか、スゴいな。
「もういい……アミルの負けだよ……」
がっくりしたアミルちゃん、どうやら諦めちゃったようだ。腕を離す。
すると、アミルちゃんは顔を俺の耳へ――、
今度は噛みつかれるかと思ったが、違くて――、
「……お兄ちゃんの、バカっ」
アミルちゃんは、俺の耳元で呟いた。そんなアミルちゃんは、頬を膨らませて、ぷんぷんな表情をしていた。
アミルちゃんはぴょん、ぴょん、ぴょーんと大剣の元へ。俺が、聖剣を探すと、拾ったのかシェスカが持っていた。なら安心だ。
大剣を拾ったアミルちゃんは、わざわざ俺の前へ戻ってくる。
アミルちゃんは、大剣を両手に乗せ、俺の前へずずいと差し出す。
俺はなんとなく大剣を受け取る。意外と重い。アミルちゃんは、こんなものを振り回していたのか。
アミルちゃんは、言った。
「勝てない、降参、煮るなり、焼くなり、エッチなことなり、好きにして」
アミルちゃんは、俺に屈服した。
「私は、お兄ちゃんのペットになる」
すり寄ってくるアミルちゃんは、俺のペットになったのだ。
俺は大剣をアミルちゃんの背中に返す。何でもしていいらしいのでギュっとしてみた、暖かい。
「ぬくぬく」
アミルちゃんは嫌がるどころか、嬉しそうだ。俺は鼻でスンスンした。とてもいい匂いがする。あっ、アミルちゃんが顔をしかめた。
「おいおい……なんだよそれ……」
盗賊は愕然としていた。俺もわからないので、可愛いネコミミを弄りながら、アミルちゃんに訊いた。
「マジでどういうこと?」
「私がお兄ちゃんを主人と認めたの、異論は認めないの」
「好意を持った人を主人とする、獣族にはそういう者もいます」
聖剣とグリズリー肉の包みを持って、こっちに来たシェスカが教えてくれた。俺は聖剣を納めながら、呟いた。
「そうなのか……」
獣族には従属する習性があるということらしい。
「好きになっちゃったの。だから私は、お兄ちゃんに、身も心も捧げるの」
そしてアミルちゃんは俺に惚れたらしい。――もしかして、アミルちゃんって、エッチなこと大好きなのかな? 嫌よ嫌よも好きのうちってね。
「……秘密の話、しよ?」
俺の耳元で、内緒話なアミルちゃんは「実はね。一目見た時から、気になってた」と教えてくれて、ポッと真っ赤になっちゃった。
「ねえ、お兄ちゃん」
デレデレなアミルちゃんは、真剣な顔をした。俺も似たような顔を心掛ける。
「なんだ?」
「アミルのこと、好き?」
アミルちゃんは、おずおずと訊いてきた。
「もちろんだとも」
俺が頭を撫でてやると――、
「うれしい」
アミルちゃんは、満面の笑みを浮かべた、
「ねえ、お兄ちゃんの名前、教えて?」
お首を傾げて聞かれたので、答える。
「蔵持彪河だ」
「――いい名前!」
食いぎみにそう言って、感激したような表情を浮かべるアミルちゃん、目がキラッキラッしている。
「ヒョウガ、ヒョウガ、ヒョウガ……」
アミルちゃん、顎の辺りに手をあて、俺の名前を口で転がす。
「――ヒョウガ!!」
アミルちゃんが、目をカッと見開いた。
「うん、覚えた」
アミルちゃん、にっこり頷く。そして訊いてきた。
「偉い?」
「ああ、偉いぞ」
「ふふん」
俺は頭を撫でてやった。ネコミミも撫でてやった。「くすぐったい」と言いつつも、ペットになったアミルちゃんは、されるがままだ。
「私は、アミル。アミル・カーン」
「いい名前だな」
「……ありがと」
照れちゃった、アミルちゃん。
すると、シェスカが、言った。
「なにはともあれ、勇者様の新しい仲間というわけですね」
「そういうわけだ。ところで盗賊よ、まだやるか?」
訊かずともわかるが、一応訊く。
「やめだやめ、アミルがそっちにつくとか、やってらんねー」
額に手をあて、ぶーたれる盗賊は、もう戦う気力をなくしたらしい。