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デビュー

「あああああ、あのはあはははじめまぢて、わたあし、横浜バロンズGMの……」


「超有名人に挨拶などいらんですよ、私はレッドソックス編成部長斎藤です。硬い前置きは抜きにして早速交渉と行きましょうか。件の那須野仙谷桜井3選手とうちの鈴成の交換トレードですが、知ってのとおり、鈴成は拒否権をほのめかしておりまして」


「それでも鈴成投手が欲しいんです」

 あおい、話の都合よくいきなりドモリが取れて通常モードに。

「でも本人に拒否権を行使されたら魅力的な話でも」


「いえ、まだ抜け道はあります。鈴成投手が入団時に交わした契約書の内容をあるルートから仕入れたんですが、そこにはこうありました。年俸総額25億円以下の貧乏球団への移籍は拒否できると。つまりは球団名は決して指定されてないんです」


「でもバロンズに今季総額年俸はたしか22億でしたな」


「それは昨日までおはなしでして、今日、総額3億円の外国人を獲得しまして、25億を越しました」

 動いたのはもちろん美少女フロント陣の一人小林ましろである。

「!? とういうことは……」


「拒否権行使できないんです。これで選択権は斎藤編成部長に委ねられました」


「まいったなー、鈴成のような大スター、実のところ僕の一存ではどうもならんのよ。オーナーやら球団社長やら監督やスポンサーの話もきかんと」


「そのスポンサーがあまりの鈴成投手の悪童ぶりに眉をひそめているとの噂もありますが、オーナーにしても、鈴成投手がいても勝てない現状に苛立ってるという話もありま

すが」


 レッドソックスは鈴成のMVPクラスの活躍が2年続いても3位がやっとのチーム状況。


「スーパースターがいる球団が勝てるって話でもないんもんねえ」


「オーナーはご高齢ですぐの結果を求めてるとも聞きましたが」


「那須野と仙谷でねえ、そうなるかなあ」


「仙谷投手のFIPをご存知ですか?」



「その横文字は聞いたことはある。守備から独立した投手のみの力を示す指標でしょ? たしか奪三振、四球数、被本塁打だけを抜き出し、味方の守備や運で変わる被安打数は完全無視とかいう」


「その指標で鈴成は1.99で仙谷は2.32です。鈴成の防御率1.51で仙谷は3.23で鈴成は多少運や守備が味方し失点数が減り、仙谷は守備の悪さでだいぶ無駄な失点を増やしてることになります。しかも仙谷は狭いMMパークで被本塁打数がかさ増しされています。つまり広いレッドソックスの本拠地普円球場では被本塁打が減り、鈴成と変わらなくなる」


「……そしてうちの方がバロンズさんより守備がいいから実際の防御率はもっとよくなると。さすが、噂の野球マニア少女。新しいところをついてアピールしてくるねえ。仙谷くんはいいけど、那須野くんはどう処理すればいいの? うちは4番もサードもいるんだし那須野くんは手に余るよ」


「不必要ならそのままどっかにトレードにして必要不可欠な選手と交換すればいいんです。那須野は本塁打数や打点など旧来指標がいいから騙される球団はあるはずです」


「三角トレードを提案ですか、初っ端の交渉で大胆な提案しますなあ」


「それに桜井欲しくないんですか? 新聞

報道によるといたくお気に入りのようで」


「……(しめしめ引っかかった)ああ桜井くんねえ、報道出て初めてまともに見たんだけどスイングスピードがいいね、積極的な姿勢も買えるし。スーパースターの素材だね、確かに」


「なら決定ですね、大トレード……」


「いやいやだから案件がでかすぎて即決は不可能だよ」


「即決しないとまずいですよ……近々鈴成投手のよくない噂が明るみになるらしいです。去年した3敗が発端らしい事件で」


「それは、敗退行為でもしたってことかい! 冗談も程がある。いくら鈴成が悪童でも野球には真摯だ。そんなマネするわけない」


「……」 

 ここでそれまで調子のよかったあおいが急につまりはじめ、横にいるお目付け役のエリカに目で助けを求める。

「そろそろ限界? お初にしては上々だったよー。でも無理があるかな、最後の脅しは。よし、そろそろ助け船を出すかあ」

 いよいよ真打ち登場か。


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