二通り
「あおいさん、チームを強くするには2通りあるって知ってる?」
「え? 急になにエリカ代行」
「まずは、チームを緊急に徹底的に作り変える方法。今いる選手のほとんどをより実績がある強い選手に入れ替える。うまくいけば今年でも優勝できる方法。ただし、お金がかかるし、全盛期が同時期の選手を集めるから同じ時期に衰える。さらにチームを根本的に変えたわけではないから、即効性はあるけど長く黄金期が続かない方。それに結局金にあかせて勝ったというイメージが私らについてしまう」
「もうひとつは?」
「地道にチームを変える方法。スカウト部門、データ部門、外国人獲得、コーチなどを徹底的に変革させる。今年来年の優勝はないが、数年後に結果は必ず出る、強さは持続する。ただし、その数年結果が出ない間世間は待ってくれるかが問題。話題沸騰の今の時期に結果が出ないとなると叩きに叩かれ私らの立場は危うくなる」
「うーん、難しい問題だけど、私はエリカがどっちを選ぶか何となくわかる……」
「付き合って数日だけどわかるようになった?」
「ええ、嫌でもね……。答えは両方……つまりすぐに勝って長続きもする方法」
「よくお分かりで! さすが、頭脳明晰なあおいさん! そうそう、そうなのよ、今年も勝つし来年もずーと勝つ! 嫉妬されるくらいに勝って勝って勝ち続ける!! チームを根本的に変えてしかも今すぐ勝つ!」
「やっぱねえ……」
「そのためにとんでもないトレードをやろうと思うの。狙いはズバリ国内最強投手、鈴成翔太を採ろうと思う」
「えええええ? 鈴成といえばまだ22歳ながら4億円貰うスーパー大エース。実績ルックス個性とも抜群で知名度も抜群。そんな選手、うちの全員を出しても取れないでしょ?」
「そんなことはない。鈴成はあと数年で間違いなくメジャーにいく投手。しかも、入団時に約束したポスティングでね。今ポスティング移籍で入ってくるお金は全盛期の10分の1もない。昔なら100億入ってたのに今は10億もいかない。となれば球団はトレードも考える。10億円程度ならトレードで鈴成より長い期間使えるいい選手をもらったほうがいいとね。それならうちにもいるでしょ?」
「スラッガー那須野とエース仙谷を合わせても足りないかも…」
「でもそこに若手有望株をくっつけたら?」
「いける……けどそもそもそんな有望株がいる?」
「いないけどいなければ作ればいい……」
「は、またおかしなことを言い出す……」
「櫻井っているでしょ、2年目の外野手」
「いるし、そこそこの選手でしょ、育っても年間20本塁打位の中距離砲がせいぜいの」
「そう、それがせいぜい。レギュラーにはなれるがスターにはなれない選手。でも桜井をスーパースターの卵と勘違いさせることができるとしたら……」
「は! そうか未来とか将来性とか誰にも明確にはわからない。相手に錯覚させることさえできればトレードは成立する……」
「そのための布石を代行就任前から打ってたの……気づかない? 妙に桜井がメディア露出多いって?」
「確かに今年のバロンズガイドブックの表紙はなぜか桜井だったし、雑誌新聞ネットなどの有望株特集には桜井が必ずいた。この選手去年の2軍成績.243 6本で高卒ルーキーとしてそこそこだけどそこまでチヤホヤされるレベルかって違和感はずっとあった」
「それ各メディアやうちの広報部に桜井を推すように私が強く言ってた結果なのよ」
「これだけ布石を敷けば……」
「他球団の編成部は桜井をスーパースター候補と思い込む。さらに鈴成がいるレッドソックスの編成はお人好しで騙しやすいから……桜井を付けれくれるならと……となる」
「鈴成を獲得できる! 去年19勝3敗で防御率1.53のスーパーエースを……」
「論より証拠。早速交渉に入りましょう!あ、でもここからはGMの仕事ね」
「あ、そっか……」
「データをみて裏から指示するだけがGMじゃないのよ。GMの最も大きな仕事は交渉でしょ、交渉、コミュ障のあなたにできるのかな、できなきゃしょうがないけどねえ、ウフフ」