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Assassin Crow  作者: なぼ
3/12

Assassin Crow 1.5

「ー…おい、待て…っ」

ここは静かな本部入り口通路。

一見普通の建物のようだが天井には施設内にエネルギーを運ぶパイプがいくつも埋め込まれている。

ここは静か故声が通りやすい事もあってか、アサシン達はこぞって喋りたがらないエリアとしても有名だった。

そんな場所の静かな空気は1人の男によって切り裂かれていた。


「ウェイン!!」

「んあ?」


ウェイン、と呼ばれ首をぐりんと動かす小さい男。

どう見ても聞く気がない彼にコルドは続けた。


「心当たりがあるとは、何か知って…」

「知らねー」

「は?」

「だから知らねーよ、犯人は」


犯人は、というと他にありそうな言い方をわざと含むウェイン。

それに気付きそうもないコルドに段々と苛々が募る。


ーそれもそうだった。あんな簡単に割れた情報が偽で、真の報酬も目的も不明。

そんな茶番に長時間付き合わされていた事を考えるだけでも嫌なのに、

増してウマが合わないコイツ(コルド)とずっと付きっきりだった事もあって

ウェインの苛々は沸点ギリギリを保っていた…


「あのな、そもそもこの仕事は偽の仕事だったんだ、とんでもなく舐められてた、な!

お前とのコンビはここで解散…」


解散だ、と言いかけた所でコルドが言葉を遮った。


「いや、まだ終わっていない。大金がある」


(そうだった)


今になって思い出した依頼主から貰った大金。

最初はケースに入れていたが、即口座に移していたのだった。

それもコルドに任せっきりだった為、ウェインはすっかり忘れていた。


「あー…半々にする?」


もう怒りを超えて面倒臭さが出てきているのか、気怠い声で提案をするウェインに対し、


「たわけ!誰かが俺達を貶めようとしているのだ、そんな証拠を消す様な真似、出来る訳なかろう」


と必死に反論するコルド。言ってる事がまともな事もあり、


(出たよ頑固ヤロー…)


などと思うウェインであった。


「じゃあなんだ、手伝うってか」

「いや」


コルドはいや、とひと息溜め。


「話がある」


と真面目な顔をして答えた。



ー…場所を移した2人は行きつけのバーへ。

ここはプライベートルームがあるバーで、2人ともがよく利用している所だった。

2人ともよく頼んでいる『いつものカクテル』をグラスの中でくるくると弄んで、一口。

ひと息ついたところで、コルドが口を開いた。


「実はこの依頼が来る前に探っていた事がある。とある【黒の組織】の一員についてだ」

「?」

「…とある噂があってな、【黒の組織】が戦闘人形(ギア)を作っていると。ギアを作るのはよくある話だがここからが少し違っていてな。そのギアに能力を付加して特殊能力を持ったギアを作ろうとしているらしい」


戦闘人形…通称ギアは機械仕掛けの武器であり、ヒト型が特に多い事で有名だ。

そのギアは先程述べた通り機械仕掛けの為、能力を持ったギアなど前代未聞であり、もし本当であれば賞与も貰え、世界にも影響が出るであろうというものだ。

しかし、ギアにはまっっっっったく興味のないウェインは気怠そうに返事をする。


「はぁ」

「当然、その能力はどこから持ってくるのか、という話になるが…」


敢えて間をあけるコルド。

何かに察したウェインは目を見開いた。


「…!まさか最近の拉致事件ってのはー…」


「そういう事だ」


そう、この仕事がある前々から頻繁にニュースで話題になっていた拉致事件。

一般の奴から犯罪者側の人間までもが拉致されている事から、義賊だ、愉快犯だなどと世間を賑わせていた。

そのニュースは勿論アサシン内でも通っており、「仕事がある日は特に注意した方が良い」などの至極真っ当な意見から「目立つと攫われる」などの噂まであり、特に話題になっていた。


「能力者全ての力をギアに注ぎ込む事で製造するのだと」

「全て、って事は生命力もか…じゃあ拉致られた奴は…」

「この世にいない事になる」


空気が少しばかり張り詰めた。

和らげる為コルドが一口コクリ、とカクテルを喉に通し話を続けた。


「そして、拉致した報酬として金と地位が与えられるそうだ、非正規にな」


そこでまたも察したウェイン。

今度はげんなりとした様子だ。


「…そこでオレか……気持ち悪りぃな」


ウェインをよそにコルドはごそごそとスマホを取り出した。


「で、だな。この武器、見覚えあるか?」

「?」


唐突にコルドのスマホを渡されたウェイン。

気怠そうにスマホを見てみると画面には画像が大きく表示されていた。

その写真は夜撮られたであろう、月らしき光の球が左上にあり、下部分は恐らく建物と鉄骨、そして振り上げた腕と、その手に持っている武器らしき物が、逆光のせいか全て影で写っていた。


「こんな影絵じゃわかんねーよ。っつうかこの写真、お前が?」

「写真は殺された情報屋の端末から抜いた。…この独特な形、収集家で本職でもないと現場では使えんだろう」


シルエットはデコボコとした持ち手で、なんとなく想像できる武器であったが、軍は勿論アサシン内でも特にそれを好んで使う奴は居なかった。

収集家で、アサシン内部であれば多少確率は上がるだろうが、と上げた名は。


「俺が考えるに、ゲイル・カートンではないかと思う」

「…っ」


ウェインはその名を聞き、笑いを堪えるが保たずに吹き出してしまい


「あああああのゲイルだと!?あいつが?無理無理無理無理無理!あんなヘッピリ武器ヲタクが!!?」


はははは、と声を上げ笑うウェイン。


「そういう思い込みが1番危ういのだぞ」


かなり笑われているような気がしてブスッとコルドは言葉を差す。


「ごめんごめん、…んで、それが何?」


ひー、と泣きながらコルドに問うウェインに対し

真っすぐな瞳を向ける。


「そこでだな。…お前の協力が要る」

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