第9話 統合チーフに襲撃された俺…
「ねぇ、翔太さん、起きて」
「なんだ?」
「お客さんよ。さっきからインターフォンなってるし」
「なんだ? 朝から」
俺は仕方ないから、玄関に向かった。
俺の部屋のインターフォンはカメラ付きじゃない。
だから、受話器を取って話をしないと誰だか分からない。
「こんな朝っぱらから誰だ?」
「私だが」
ん? 聞いたことがある声だな。
誰だっけな…あっ、AI開発会社の統合チーフだ。
「あ、すみません。今、開けます」
統合チーフは、辞めた会社の上司の上司になる。
駄目上司と違って、統合チーフは元プログラマで話が分かる人だったな。
俺のプログラマとしての才能を買ってくれていた。
まぁ、辞めたから、もう関係はないのだが。
「朝からすまんね。最近、会社に出ていないと知ってきたんだが」
「えっ、会社は辞めましたよ」
「あー、上司を殴ったそうだな。だが、あれは一方的にあいつが悪いんだ」
なんだ?
どうも、会社は俺の肩を持ってくれるようだ。
なんでそんなことが起きるんだ。
「まぁ、正直に話をしよう。君が見つけてくれたバグだが。あれが例のバグに関係していることが分かったのだ」
「うわっ、本当ですか?」
あのバグは9000億円の損害賠償になるような重大なものだからな。
それに関係していると分かったとなると、俺はすごいことをしたのかもな。
「ああ、本当だ。昨日それが検証され、発見の功労者を呼び出そうとしたら辞めたって話になってな」
なんか面白いことになってきたな。
あいつ、目を白黒しただろうな。
「しかし、まだバグが解明した訳ではなくてな。広範囲に関係があるからどこがどう影響しているか分かっていない」
「俺にどうしろと言うんですか?」
「手伝って欲しい。条件はなんでも飲むぞ」
ほう。そこまで言うのか。
それなら、吹っ掛けてやるとしようか。
「それでは期間は2週間。徹夜くらいはやりましょう。それで200万円の給料でどうでしょうか」
「了解した。期間の話は伸びるかもしれないが、そのときはまた話そう」
「即決ですか。大丈夫ですか。そんな簡単に決めてしまって」
「私が任されている案件だからな。必要なことは私が決めるよ」
すごいな統合チーフ。
どうみても俺の方が給料よくなってしまうんだけどな。
「それでは準備してくれ」
「あ、今日は昼に2時間だけ外出します。やらなければいけないことがあるので」
「わかった。後は私達を助けてくれ」
統合チーフは帰っていった。
☆ ☆ ☆
「お昼からって、何をするの?」
「それはな。昨日の買い取りで得た金を半分、遺品整理の社長に手渡しに行くんだ」
「えっ、なんで? だって、すでにお金は3万円払ったって言ってたじゃない?」
「ああ。だが、58万円になったからな。半分は社長に渡そうと思うんだ」
「・・・どうして、そんなことが必要なの?」
それは、チャンスの問題だな。
これからもっと多くの遺品を鑑定させてほしい。
そのためには、社長のとこにも利益が戻るようにしておかないとな。
「うーん。そうなのね。わかった。あれね。損して得取れって」
あー、そうだ。
目の前の損得なんかよりずっと重要なものがある。
それが分からないと、俺の上司だったチーフのようになってしまうからな。
「じゃあ、お昼は一緒に行きましょう。あと、何日かは徹夜になるかもしれないのね」
「ああ」
さすがにプログラマをしているときに、カスミは関われやしない。
徹夜でデバックしている間は、留守番だな。
「分かった。大人しく待っているね」
「そうしてくれ」
俺は2週間帰れなくなる可能性も考えていた。
ところが…
今日はマレーシアのクアラルンプールにいる予定なんです。
トランジェットで降りるので、wifiは対応していないので、ネットに入れません。
コメントのレス等は、明日、バリ島に着いてからになります。