第85話 鬼退治には準備が必要なんだよな
「よし。バリ島に乗り込むのは1カ月後だ」
私はもう、完璧なプランが出来上がっている。
今の私は、以前の私とは桁違いの頭脳を持っている。
あのポーション。
身体を強化する以上に私の場合は頭脳を強化したようだ。
普通の男だと、高校出の頭が悪い素人でも、初めてやる肉体労働の手順を組み立てられるくらいの頭脳強化がされる。
私の場合はそもそも、頭の出来が違うんだな。
ほとんど天才の域まで、ポーションが頭脳を強化する。
いくら強化すると言っても元のパワーが低いと限界があるということだ。
私の強化した頭脳は、翔太の野郎をつぶす最高の計画を立てたのだ。
まずは、ハッキング。
しょせん、翔太のやっているビジネスはすべてネット上にある。
そこにある情報をハッキングすれば、あいつのリソースはすべて私の物だ。
あいつががんばっているおかげで、私の未来の資産はうなぎのぼりだ。
だいたい、あいつレベルの頭脳で作り上げたビジネスは、私のスーパー頭脳をつかえば簡単に10倍にすることができる。
M&Aの専門家に試算を依頼した結果、あいつの持っているビジネス価値は12億円を超えているという。
もちろん、まだ始まったばかりの物が多いが、可能性だけでそのくらいの値が付くという。
その資産がすべて私の物になり、さらに10倍の価値になる。
私の新しい人生はもう始まっている。
「あーら、シャチョさん。なんか、いいことあったの?」
「はぁ、誰が社長だ?」
「あなた、シャチョに違いないわ。だってカッコイイんだもん」
いきなり声かけられた女、良く見るといい女だな。
透けるような真っ白の肌。
青い瞳、金色の髪。
「君はどこの生まれかな」
「ポーランドよ。今、日本の飲み屋で働いているの」
「どこの店だ?」
歳の頃は20代半ばくらいか。
白人はこのくらいの歳が最高に美しい。
背はヒールを履いているのだろう。
私より10センチは高い。
すらっとして、ボンキュボンのナイスバディ。
私の輝かしい人生の門出を祝って、この女性の店で祝杯でもあげるとしよう。
「よし、その店に行こう」
「本当? シャチョさん。今夜は楽しませるわ」
☆ ☆ ☆
「いやぁ、失敗した。ぼったくりバーだとは思わなかった」
美人のポーランド人とロシア人がたくさんいるお店だった。
調子にノッテ飲んだら、請求書が35万円だった。
「こんなの払えるか」と、すごんだら、奥からガタイがいいのが出てきた。
私は逃げるふりをして店の外に走り出した。
そして、袋小路になったところに行きあたってしまった。
「もう、逃げられないぞ。手間をかけた罰として請求は2倍だな」
「ああ、分かった。払うか払わないかは、拳で決めないか?」
「おまえ、バカか? 痛い目を見るぞ」
もちろん、痛い目を見たのはこいつの方だ。
まだポーションが効いている状態だったからな。
「まぁ、綺麗なねーちゃん達を触りまくって騒ぎまくったから、良かったとしよう。祝杯を上げたし計画を実行するとしよう」
私はすご腕と言われているハッカーに会いにいくことにした。




