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第72話 俺はバリの親分と初めて会った

「いらっしゃいませ。バリの親分さん」


カスミが出迎える。

これで今回のミーティングの参加者が揃ったぞ。



まずはバリの親分。

彼が投資資金の大半を用意することになる。


続いて40代投資家。

今回の企画の発案者で、すべての参加者を結ぶ役割も持っている。


美術品・骨董品オークションサイト運営会社の副代表さん。

日本語ができるということで全権を背負ってきたらしい。


そして、俺と在真とカスミ。


「このたびは新アートオークションの件でお集まりありがとうございます」


なるほど、このプロジェクトは新アートオークションと言う名前なのか。


「ちょっと待て」

「えっなんでしょう? 親分さん」


いきなり、バリ島の親分が割り込んできたぞ。


「なぜ、このミーティングがこんな豪華なパーティなんだ?」

「えっと、どうしてでしょう。翔太さん」

「別に意味はない。ただの快適な場にしようとしただけだ」


どうもバリ島の親分はこのパーティが気にいらなかったようだな。


「俺は未来を作る投資のミーティングだと聞いてやってきた。無駄足だったな」

「あー。パーティは嫌いだということか?」


まぁ、バリ島の親分は大富豪だからな。

こんなパーティは慣れているのだろう。


「パーティは意味があってやるものだ。結婚披露や新築祝いのような、な」

「それならば、このメンバーが集まった祝いだな。それじゃ駄目なのか?」

「まだ、俺はおまえらのプロジェクトに参加すると決めてないぞ」

「それは俺も一緒だぞ。参加するとは決めていないぞ」


英国人と40代投資家があたふたし始めた。

せっかく、うまくいきそうな投資話なのに、主要メンバーのふたりがいきなりトラブり始めたんだから当然か。


「あー。もちろん、まだスタート前のプロジェクトですから。まずは顔合わせということで」

「だから、なんで、こんな豪華なパーティが必要なのかってことだ。それが納得できないなら、椅子に座らず帰るぞ」

「ずいぶんと器の小さな男だな」


完全に決闘状態になってしまった。

どうも、俺とタイプが似ているところがあるらしい。


「親分さん。翔太さんは単にパーティがやってみたかっただけなの」

「はぁ? どういうことかなお嬢さん」

「余計なことを言うなカスミ!」

「余計なことじゃないわ。だって翔太さんが親分さんに誤解されるなんて嫌なの」


うーむ。

カスミの「嫌」が出てしまったか。


それは仕方がないな。


カスミは俺も含めて大抵の相手に柔らかく接する。

合わせるのが上手いともいう。


ただし、一度「嫌」という言葉が出ると、まず引かない。


俺であっても、カスミの「嫌」に勝てる気がしない。

なんどか「嫌」にぶつかって俺が折れたからな。


「翔太は親分さんみたいな大富豪じゃないわ」

「そうだろうな。大富豪なら自分で金は用意するだろう」

「だけど。快適な場を用意しようと思って豪華なパーティの形にしたと思うの」

「そうですよ。せっかく大きなプロジェクトのための顔合わせなんですから」

「ハイ。キット、ソウデス」


なんかホストの俺を抜きにして、パーティの意味を語りだしたぞ。

どうしたものか。


「すると。こいつ、パーティを開催するのは初めてということか?」

「そうなの。いつもは銀座のクラブでミーティングしているわ」

「銀座のクラブだと!」


カスミ、余計なことを言うな。

一度しか連れて行ったことがないだろう。

どうしても銀座のクラブがみたいっていうから、ニッキーとのミーティングにおまけ参加させただけだぞ。


「バリ島だと知っているところがないから、このヴィラでのパーティになったの」

「そうだったのか。それにしては、ずいぶんと手際がいいな」

「翔太さんは何もしていないわ。このヴィラのバトラーが優秀なの」


なんでカスミがホストの俺の代わりに説明しているんだ。

それも内情バラシまくりで。


「そうだったのか。すまん。俺が勘違いしたようだ」

「えっと。どんな勘違いしたんでしょう。よかったら教えてもらえると」


今度は40代投資家が質問しているな。

たしか、尊敬する大先輩ってバリ島の親分のことを言っていたな。


「俺が豪華なパーティに呼ばれると気持ち良く金を出す男だと思われたか、とな」

「あー。そんなはずがないじゃないですか。バリ島の親分ですよ」

「いや。そういう奴らがよくすり寄ってくるからな」

「翔太さんはそんな人ではありません。日本ではボロアパートに住んでいるんですよ」


おいおい。ボロはいいすぎだろう。

築20年だが、メンテナンスはしっかりとしている2Kのアパートだぞ。


「アパート! 家賃を払っているのか!」

「ああ。家は買ったことがないぞ。このヴィラも1カ月のレンタルだ」

「もったいない。家賃はな、払う物ではなくもらうものだぞ」


まぁ、そうだろうな。

バリ島の親分は不動産投資が中心だと聞いているしな。


「まぁ。俺は不動産には興味がなくてな。新しいビジネスを創るのが好きなんだ」

「ほう。どんなビジネスを創ったんだ?」


俺がなんて説明をしようかと思っていたら、40代投資家が分かりやすく説明してくれた。


「おいおい。すごいじゃないか。よく短期間でそんなビジネスを創れたな」

「俺はただ、やりたいことをやっただけだ。すごいのはこいつだぞ」

「誰だ、そいつは?」


みんなの視線が在真に集まる。

俺は紹介してやった。


「来年は年収100億円になる天才AIプログラマー、在真だ」

「ほう。年収100億だと。俺よりも上じゃないか」

「ただし今年は年収200万円だがな」


バリ島の親分は大笑いした。

つられて俺も笑ってしまった。


俺達が笑っていたら、他の連中もつられて笑ってしまった。

大爆笑の後、バリ島の親分は席に座り、新アートオークションのミーティングが始まったのだった。


価値観というのは人によって違う。


お金に大きな価値を感じる人もいる。

人との関わりに大きな価値を感じる人もいる。

常識に従うことに価値を感じる人も、それに価値を感じない人もいる。


僕にとって、重要な価値がある物が「自由」なんだ。


僕が小説家になろうと思ったのは、「小説家になろう」を知ったとき。

この読者の評価だけで、人気小説が決まる仕組みがすごく僕に合っていたから。


どんな小説を書くか。

どんな小説がいい小説と評価されるか。


それが読者が決めてくれる。

そこに自由を感じたんだ。


「文章はこう書くのが正しいんです」


そう決めつける国語が僕は苦手だった。

どうして、それが正しいのか分からない。


そこには自由が感じられない。

だから、僕は文章が下手だと思って育った。


それが間違っていると知ったのは、インターネットを知ってから。

正しいという文章の書き方を無視して、話すように書いた僕の文章がアクセスを集めだした。


どういう文章が正しいではなく、読みたくなる文章がアクセスを集める。

どんな文章でもオッケーという自由がネットにはあった。


もう21年前から僕は文章を書いて生活をしている。

いろんなことに縛られない自由がネットにはあるから。


僕にとっては自由というのがとても大切な価値観。


あなたの価値観と僕の価値観。

違うかもしれないけど。


あなたの価値に僕の小説が少しでも当てはまるなら。

ポイント評価して欲しいな。


ほちっと、してね。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 本編(あとがき)が面白いところ [気になる点] 前書き(本編)も面白いところ [一言] 楽しみに読んでいます。頑張ってください。
[一言] 私も国語や夏休の読書感想文が大嫌いでした大した読解力や勉強もしない教師が偉そうに人の感想を評価して偏った思想の元評価する異常さでだから教師が指定した作品ではなく好きな作品の感想文を書きました…
[一言]  ご投稿お疲れ様です。  書くということの正しいとは何か、これは難しいかなと思います。  無闇やたらと句読点をうたれた文章は間違いなく読みづらい。自由と言ってもやはりある程度の正しさが必…
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