第71話 俺はヴィラで贅沢なことをしてみたぞ
「翔太さん。来ちゃいました」
「よく来たな。在真」
カスミとヴィラでのんびり2日ほど過ごした後、在真がやってきた。
明日の打ち合わせに参加するためだ。
もっとも、俺が動画で自慢したのもひとつの理由だがな。
「うわぁー、すごいとこに泊まっているんですね。僕も行きたいです」
「いいぞ。部屋は余っているからな」
「本当ですか!」
このヴィラはベッドルームだけで5つもある。
そのうえ、それぞれ大きな浴槽があるバスルームがついている。
「実は後から、女の子もくるんですが……」
「なんだと! そんな相手がいたのか」
「銀座のあのお店の子なんです。翔太さんがバリ島にいるから行ってくるって教えたら、私も行きたいって」
「おおっ、いつも指名するあの子だな。美人じゃないか」
「やっと僕にも恋人ができそうです」
まぁ、バリ島でひとつの部屋で豪華なヴィラ生活を送ったら、そうなるわな。
いくら銀座の女でも、この雰囲気だと落ちるだろう。
「もちろん、その子も歓迎だ。在真と一緒の部屋だぞ」
「えっ。まぁ……がんばります!」
ヴィラの庭ではパーティの準備が進んでいる。
バトラーに一言、パーティがやりたいって言ったらすべて準備してくれる。
明日の投資の打ち合わせはヴィラでのホームパーティの形でやる予定だ。
「なんだか、すごいことになっていますね」
「ああ。ここに泊まる客は富豪連中だからな。パーティ開催があたり前らしい」
「何言っているんですか。翔太さんだって、もう富豪ですよ」
「そういえばそうだな。在真が富豪になるのはあと1年だな」
「ええ。翔太さんを信じて、突っ走ります」
まぁ、明日会う投資家はきっと、俺なんか小さく見えるような大富豪なのだろう。
本当に10億円も投資してくれるのだろうか。
セッティングしてくれた40代投資家が言うには、大丈夫らしいが。
「なんですか、ここは! 豪邸どころか城みたいですね」
噂をしていたら、40代投資家が到着した。
明日の打ち合わせのために、1日前に来たのだ。
「だろう? ちょっと無駄遣いしてみた」
「無駄づかいって……まぁ、お金はあるんでしょうが」
「ああ。しかし、投資家をしているんなら豪華なヴィラも経験あるだろう?」
「私はお金を使うのは苦手で。立ち食いうどん屋でてんぷらをのせるのに迷うタイプでして」
「金はあるんだろう?」
「投資に使うお金ならありますが、自分のために使うのはもったいなくて」
うーむ。
こいつは根っからの投資家タイプだな。
お金を使うより、お金を廻すタイプ。
投資家と言ってもいろいろいるみたいだな。
「ねぇ、翔太さん。泳がない?」
「プールか?」
「ううん。ビーチに行きたいの」
確かにそれもいいな。
プールがあると言っても、海が目の前にあるんだからな。
入らないというのももったいない話だ。
「一緒にいくか?」
「いいですね。ビーチならお金もかかりませんし」
本当にこいつ、しまり屋だな。
投資家としては、浪費するタイプより安心だけどな。
「あそこに見える崖の下にあるビーチ。あれはプライベートビーチだ」
「ええっ、そうなの?」
「パラソルとビーチチェアを用意させよう」
「うん。あと、ビールね」
確かにビールもいるな。
綺麗なビーチで飲むビールは格別だ。
「在真も呼んでみんなで行こう」
「いいわね。だけど、それだと女は私だけになっちゃうわ」
「それもそうだ。メイドさんも呼ぼう」
メイドさんは明日の準備のために8人に増えている。
明日はさらに増える予定だけどな。
その中で若い子を2人借りるとしよう。
「それなら3対3ね。さぁ、泳ぐわよ」
明日の投資の話はおいておいて。
今日は今日で遊ぶとしよう。
せっかくのバリ島なんだからな。
お金の使い方って、いろいろとあるよね。
バリ島で高級ヴィラを借りて遊ぶ。
まぁ、贅沢なお金の使い方。
良いお金の使い方と良くないお金の使い方の判断の仕方をひとつ語っておこうかな。
お金を使った後、どうなるのか。
満足して安定するのが、良い使い方。
もっと使いたくなるのが、良くない使い方。
贅沢をすると、もっと贅沢をしたくなる。
そうなってしまったら、それは良くない使い方、だと思う。
それがイキすぎるとゴーンさんみたいになってしまう。
年収50億じゃ全然足りないってなる。
お金の使い方も身になるのと、そうじゃないのと分かれる。
お腹がすいている時にスナック菓子を食べると、身体が求めているのはそれじゃない。
と、いくら食べても満腹にならなくて、いくらでも食べてしまう。
食欲じゃない、たとえば人恋しいみたいものだと、何を食べても駄目。
そうなるものなんだ。
だからゴーンさんは、いくら贅沢しても満足できなくて、もっと贅沢ってなる。
お金を使った後、どうなるのか。
それで、自分の身になっているお金の使い方かどうか。
判断してみてね。
小説を読むのは逆かな。
もっと読みたくなるのは、やっぱり楽しいから。
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