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第67話 ゼッケン3番が生み出した新しい流れ

「あの3番は5年前、騒がれた高校生です」


ニッキーによると、5年前の高校サッカー全国大会で注目されていた選手がいた。

とにかくドリブルがうまくどんなガードも抜いてシュートを決める。


彼ひとりの力で全国大会初出場のチームが決勝戦まで勝ち進んだ。

ところが、相手チームのラフプレイで左の腱を傷つけてしまう。


病院に搬送された彼は即手術を受けるが、サッカー選手にとって腱の損傷は致命的だった。


この年のJリーグにスカウトされるナンバー1注目選手だった彼はそれ以来、サッカーの世界から消えた。


「どおりですごい技術を持っているはずです」

「ちょっと待て。彼は腱を損傷しているということか?」

「ええ。しかし、彼の動きはそれを感じさせません」

「それは、ドーピングの効果だ」

「ええっ、そんなこともできるんですか?」


そう。

エクスポーションには一時的に痛みを抑える効果がある。

また、傷ついた箇所をカバーする効果もある。


ただし、そのエクスポーションが効いているときだけだ。

効果が消えた時、本来の痛みを感じてしまう。


その上、さらに腱を傷つける可能性大だ。


「大変だ。やめさせましょう」

「いや、あいつは覚悟の上だろう」


試合前に見た決死の覚悟の表情。

やっと意味が分かった。


「5年前、Jリーガー一歩手前まで行った男だ」

「そうですね」

「プロの世界で闘うことを夢見ていたんだろう」

「まぁ、そうですね」

「形は違えど、プロ経験者との闘いが実現できたんだ」

「えっ。なるほどです」

「俺達はただ、最高の試合をしようじゃないか」


エクスポーションを使っている奴ら。

それが俺の目を曇らしていたのかもな。


3番もそうだが、他のメンバーもJリーガーを夢見た連中だろう。


たしかに何かが足りなくて夢は破れた。

それがエクスポーションという物を手に入れたことでまた夢を見てしまった。


Jリーガー経験者を相手に試合をすること。

そして、本気でぶち当たって闘うこと。


それがあいつらが選んだ道なのだろう。

要はサッカーを愛するということだ。


「よし、細かい作戦はやめだ。本気でいけ。そして、プロ経験者の本気をみせてやれ」

「「「「はいっ」」」」


もちろん、俺は異世界で得たスキルを総動員して元Jリーガー達にサインで伝える。

あとは、本気度の勝負になる。


「あいつらにプロ経験者のすごさを思い知らせてやろう。負けるなよ」

「「「「はい」」」」


懐かしい感覚だ。

魔王軍に挑戦するときは、同じようなことを言っていた。


必ずしも力で勝っている訳ではない。

しかし、本気で闘い、連携することで勝ちを得てきた。


本気を引き出すことは、あっちでは当たり前のことだった。


「いくぞー」

「「「「はい」」」」


後半は本気になったニッキー達が押す展開になった。

点数は同点になっていった。


そして、ラスト1分。

ニッキーが放ったシュートで逆転した。


ピピーーー。


審判のホイッスルが鳴って試合終了。

かろうじて勝ちの結果になった。


しかし、それ以上に全力でぶつかりあう試合は、敵味方関係なく満足感を感じていた。

両チームのメンバー達はお互いに健闘を称えあっている。


そんな中に割り込んできた男がひとり。


「あー。元Jリーガーにしてはギリギリの試合で余裕がなかったですね」


マイクを持ったヤホーニュースのおっさん記者がニッキーに質問してきた。

他の記者たちも、後ろから続いてくる。


ニッキーが答えようとするのをゼッケン3番が割り込んでくる。


「そんなことはありません! プロの本気、しっかりと感じさせていただきました。胸を貸してくれて、ありがとうございました」


しっかりと礼をする。

他のメンバー達も深々と礼をする。


「ありがとうございました」


俺達も深々と礼をする。


所詮、記者たちは観客に過ぎない。


コートの中で闘った連帯感。

これを感じることは想像力を必要とする。


俺達と相手チーム。

揃って、観客たちにも礼をする。


まるでプロの試合の様に応援が飛び交う試合だった。

応援のおかげで最高の試合ができた。


そんな感謝の気持ちが自然と礼という形で現れた。


「翔太さん。素晴らしい試合でした。フットサルはやったことがないですけど、私も観ているだけで熱くなりました」


おっ、文秋の美人記者じゃないか。

ICレコーダーを向けて俺にインタビューをしてくる。

後ろにはキー局のテレビカメラも来ている。


俺達の方にもゼッケン3番や元Jリーガー達もそれぞれインタビューを受けている。


「俺も素晴らしく熱い試合だと感じた。こんな試合に参加して俺も久しぶりに熱くなった」


そう。

魔王との闘い以来かもしれないな。


「今度、新しいフットサルのサービスを始めるようですね」

「おっと、そんなことを掴んでいるのか?」

「週刊誌をなめないでくださいよ。スクープが私達の試合なんですから」


そんなことを言っているが、嬉しそうな表情をしている。

こうやってみると、彼女もプロの記者なんだな、と思う。


「では、まだ未発表なのだが、新サービスを発表しよう。最先端AIを使ったフットサルチームマッチングサービスだ」


俺は在真が3日で作ったシステムを使ったサービスの話を発表した。


作中にも美術品が出てくるけど、僕が考えるアートのことを話してみよう。


僕は元々、美術館とか全然興味がなかった。

アートを見ても、「ふーん」だった。


それが変わったのが作中にも登場するモネの睡蓮。


僕が初めて睡蓮を見たとき、蓮の葉の下が揺れて見えたのだ。

もちろん、絵だからそんなはずはない。


「きっとモネが見た物を、絵を通して見ているんだ」


それ以来、僕はこの作品が「感じることができないはずの物を感じられるか」で判断するようになった。


同じモネのパリ万博って作品では、パリ万博で浮かれている街の人たちの歓声が聞こえた。

街の人など全く描かれていないのにね。


この判断を持ってから美術館が好きなった。

アートと出会うのが楽しくなった。


興味ないが興味あるに変わるのは。

ひとつのポイント評価が変わるとき。


小説のポイント評価はまた違うけどね。

ポイント評価を入れることで何かが変わるかもね。

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― 新着の感想 ―
[一言] 3番は純粋に全力でJリーガーとサッカーしてみたかっただけでしたか。 本格的に体を壊さないですんでよかったですね。
[一言] めちゃくちゃ申し訳ないけど本編より後書きが好きなんだよなぁ⋯ もちろん本編も面白いよ!
[一言]  ご投稿お疲れ様です。  自分の価値観が変わるような出会いがあるってとても素敵なことですね。ポイントが毎日入れられるような変化も素晴らしいんじゃないかな(チラッ
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