第52話 在真の話を聞いてきたら頭が痛くなってきた
「ブロックチェーンというのは、データのブロックとその繋がりのチェーンで構成されているんです」
うん、それはそういうものだろう。
カスミもこれは分かるそうだ。
「でも、僕が作っているのは、データではなくトークンって呼んでいます」
トークン?
それは確か、外国の地下鉄に乗るときに切符の代わりになるコインみたいなものだったけ?
「トークンとは、最小単位って理解してもらえばオッケーです。生物で言えば細胞のようなものです」
話を聞いたら、在真の専門ジャンルはシステム生物学だったそうだ。
生物を研究してそのシステムを解明する。
そこから、ブロックチェーンの発展版をシステム生物学的に生み出せないか。
それが原点だったらしい。
「ほら、AIが脳のシステムのシナプスとか参考にしているじゃないですか」
「ああ、AIが人工知能だからな」1*念の為…ボトムアップ型のAIは正に「人工頭脳」かも知れませんがまだ実現はしていなかったと思います。
「それと同じように生物のシステムは分散処理において参考になるはすだと」
「で、トークンがどうした?」
こいつの話を聞いていると、話が脱線しまくりそうだ。
ちゃんと戻してやらんとな。
「あ、そうでした。トークンがまずあって、トークンとトークンがつながるんです」
「じゃあトークンチェーンか?」
「いえ、チェーンじゃないんです。もっと緩やかなつながり。だから僕はトークン結びって呼んでいます」
「あ、リボン結びみたいでカワイイ響き」
そうか?
どうも俺は英語で統一した方がいい気がするぞ。
「トークンリンクじゃ駄目なのか」
「リンクと結び。似ているようで違うんです」
「そうか? よくわからんが」
「トークン結びの方がカワイイって」
うーん。名前はどうでもいいか。
トークン結び。
トークンという細胞が結びによって繋がって、大きな機能を持ったものになる。
それがトークン結び。
「だけど、要はブロックチェーンと名前が変わっただけじゃないのか?」
「全然違うんです。単細胞動物のアメーバーが自発的に動くように、トークン結びも自発的に動くんです」
「はぁ?」
意味が分からん。
ただのデータじゃないのか、トークンって。
「自発的に結びを強くしたり、弱くしたりします。新しい結びをもとめて活動もします」
どういうことだ?
全然分からない。
「例えばですね。レストランの評価で実はライバル店の店長が悪い評価をしたとします」
「あー、ありそうだな」
「すると、その悪い評価もひとつのトークンで、良い評価の別のトークン達が結びを強めて排除にかかります」
「はぁ? いくら悪意のある評価だと言っても、ひとつの評価じゃないのか?」
評価はデータだろう。
それを別の評価が勝手に変えるなんで、おかしいだろう。
「いえ評価を変えるんじゃありません。お店トークンと悪意の評価トークンの結びを弱めるんです」
「弱めるとどうなるんだ?」
「お店の評価を知りたい人の目に触れづらくなります。実際には存在しないのと同じになります」
うーむ。
どういう仕組みなんだ、それ?
だいたい、それだとどういうことが起きるんだ?
「評価自体も評価されるんです。だから、別の利害のためにつけられた評価は評価が下がっていくんです」
「ああ、そうか。googleによるサイト評価みたいなものか」
「似ているようで違います。一番の違いは評価の基準を誰が作っているかです」
あー、確かにな。
googleによって評価基準が変わって、大騒ぎしている人たちいるからな。
「このあたりがブロックチェーンと一緒で、管理する存在がいないってことです」
「じゃあ、もしかして。トークンが結託して人間に襲い掛かってきたりするの?」
あー。出たな。
カスミもそんなこと考えるんだ。
なんでもかんでも人間に反乱興すとか、仕事を奪うとか。
そういう方向に考える人、多いからな。
「別にトークンが人間を敵視したりしないですよ。だいたいトークン結び自体が人間に由来するものですから」
評価を評価するのも、いろんなロジックが関わっているとはいえ、源になるのは「この評価どうなの?」いう評価を見た人の疑問だそうだ。
たしかに、お店の評価の中には変なのとか、いかにも業者なものとか、あるからな。
「まぁ、そういうことで、トークンが結びというもので緩やかに連携するのが僕が作ったシステムです」
あー、あれだ。
それがどういう物なのか。
ちょっと試してみないと分からないな。
新しいことを始めようとしてうまく行かない時。
例えば、「小説家になるぞー」と毎日1話づつ小説を投稿しようと決めた。
でも、3日しか続かなくて3日坊主になる。
なぜ、続けられなかったのか、と聞くと。
「時間が無くて……」
こんな答えが多いんです。
これは、副業とか起業とか。
そういうものでも同じなんです。
時間が無くて。
どうして、時間が無くなるのか。
それは、迷ったり、悩んだりしちゃう時間があるからです。
何もしないでぼーっとしている時間。
これを減らせば、なんとかなってしまうものでして。
まぁ、僕も良くあることなんですが。
これを減らすには、考える前に手を付けること。
小説を書くだったら、まずは昨日書いた分を読み返すことをする。
やればできることをして、スイッチを入れる。
すると、書けることが多いんです。
人によってはルーティーンがいいかもしれませんね。
イチローがバッターボックスに立つ前に同じことをしている。
あれと一緒で精神統一のための動きを決めて、始めること。
これもスイッチを入れることなんです。
だけど。
ポイント評価から時間はかかりません。
3秒でぽちっとすれば、ポイント評価できちゃうんですよ。
ぽちっとしてねっ。




