第51話 いきなりできるっておかしくないか
「翔太さんできました」
そんな電話が掛かってきて驚いた。
在真からの電話だ。
「できたって何が?」
「ブロックチェーンの骨董品鑑定書です」
なんだ?
銀座で飲んでから、まだ3日しか経っていないぞ。
そんなに簡単にできるはずないだろう。
俺だってAIプログラマーをしてきたんだ。
どのくらいシステム開発が大変か知っているんだぞ。
いくら真珠色のオーラの持ち主と言っても、チートすぎないか?
「今日時間あります?」
「ああ。今日は暇だ」
最近、家でぐうたらしていることが多い。
休みなく魔王討伐を目指していた異世界の30年の反動かもしれない。
そう言ったら、すぐに在真がやってきてしまった。
俺の部屋にな。
「何? 誰?」
「あー、カスミ悪い。起こしたか」
「あれ? 翔太さん一人住まいじゃなかったんですか?」
「まぁ、こいつは居候だから気にするな」
「いや、女性がいるのなら…」
「近くのカフェいくか」
「私も行く~」
「いいか?」
「えっ、あっ。もちろんです。どうぞどうぞ」
なぜか、カスミがついてくるという。
だから15分待ちになってしまった。
やはり女の支度は時間が掛かる物らしい。
「お待たせ」
「おや早いな」
時間を見ると13分30秒だった。
今までの記録だな。
「この時間なら、スナバも空いているだろう。近くにあるからそこでいいな」
「はい。スマホはありますよね」
「ノートパソコンはいらんか」
「基本はスマホなんです」
「私のスマホもできる?」
「何をするのか分かっているのか?」
「知らない~」
何も考えてなくてついてくるって言ったな。
ただ、こいつは頭使わない時の方がするどいからな。
骨董品の鑑定をクイズ式に出したら全滅の癖に、なんとなく気に入っているという品はすごい奴だった。
人の鑑定でも、厭な感じっていう奴は確かにおかしなオーラがあるし。
「なんとなく鑑定スキル」をもっているんじゃないのかと思ってしまう。
☆ ☆ ☆
在真が待っている喫茶店に着くと、にこにこして迎えられた。
本当に完成したらしい。
「ここからアプリをダウンロードしてください」
「こうか?」
俺のスマホでQRコードを読ませると簡単にダウンロードが始まって、完了した。
タイトルはないが、鑑定用のアプリらしい。
「タイトルは翔太さんが決めてくださいね。セットするだけでタイトルが出ますんで」
「そういうのは苦手だな。後でカスミ決めてくれ」
「えっと、何のアプリなの?」
カスミは何の説明もなく着いてきたからな。
だいたいブロックチェーンの話もしていないし。
説明の前にカスミのスマホにアプリをダウンロードして。
「これはデジタル鑑定書のアプリだ。例えばそうだな。それ貸して」
カスミがしているアンティークのペンダントを外してもらう。
前に不用品回収品でカスミが欲しいと言ったから買い取りした品だ。
なかなかのオーラがある品で骨董品屋に鑑定してもらうと8万円の鑑定が出た。
「これの鑑定をデジタル化するとしたら、どうなるのだ?」
「えっと、まずは鑑定人を登録しましょう。フェイスブックやっています? なら、そこからログインして」
簡単に俺の鑑定人としての登録が終わったぞ。
おいおい、その登録だけで3日じゃできないだろう。
「あ、実は前から作ってありまして。デジタル骨董品鑑定ならちょっとの変更で済むんです」
そうは言っても、3日はないな。
どうなっているんだ、こいつの頭の中は。
「で、ペンダントを写真を撮りまして。名前を付けて」
ペンダントを骨董品として登録ができたらしい。
これに俺が鑑定すればいいんだな。
「翔太さん、ペンダントを鑑定してみてください」
「☆で評価するのでいいか?」
「ええ。それが基本ですから」
では、☆は3つだな。
俺が今、動画鑑定しているときの基準だと3相当だからな。
「で、カスミさんはさっき登録したペンダントを見てください」
「あ、翔太の鑑定が入ってる」
「まぁ、そんな感じです」
単純なものだな。
「これがブロックチェーンに載っているということだな」
「ええ。厳密に言うと、ブロックチェーンではなくて」
それから在真は骨董品鑑定のバックボーンになっている技術を解説しはじめた。
僕って料理を作るのが好き。
その代わり、洗濯が嫌い。
「洗濯なんて洗濯機がやってくれるじゃない」って言う人いるけどね。
料理はどこを目指すのか。
そんなことを考えながら、マスターしていった。
まずはレシピ通りに作る。
「本格麻婆豆腐」のようなキーワードで検索して出てきたレシピ。
それに書いてある分量、時間を守ってつくる。
ちゃんと美味しいのができた。
次はどれを省略すると美味しくなくなるのか。
それを確認するために作る。
すると、簡単に作る時とちゃんと作る時のレシピが手に入る。
次は、献立を組み立てる能力。
冷蔵庫の中にある材料だけでちゃんとした献立になるように作る。
そのためには、素材別のレシピを持っていないとね。
冷蔵庫にある材料でパパっと作って美味しいごはん。
「おいしいっ~」
って言ってもらえると嬉しいから、食べてくれる人の喜びそうなアレンジも加えていく。
味を濃くする、辛味を抑える、好きな食材をプラスする。
おいしいって言ってもらえることが増えてくる。
僕の小説の作り方は料理と似ているかも。
ざまぁを少々入れて。
基本の味付けは金儲け。
こんな感じで、読者が喜ぶ小説を書いてみる。
ポイント評価やブクマで、「おいしい」を確認してみる。
「あ、やっぱり、こっちの方向は楽しいのか」
ってね。
ポイント評価が入ると、楽しく読んでもらっていることが確認できるんだ。
面白いと思ったらポイント評価もよろしくね。




