第46話 俺は真珠色オーラ男の正体を知ったぞ
「そうなんですね。スカウトしていたんですか」
「ああ。だが、あなたをスカウトする気はないがな」
「そうですよねー。僕はAIプログラマーじゃないですし」
なんか、思ったより軽い男だな。
オーラだともっと何か複雑な男だと思っていたのだがな。
「ちなみに、ブロックチェーンに興味ってあります?」
ブロックチェーンか。
そっちなのか。
俺は急速に興味が失われていく気がした。
ブロックチェーンというのは、仮想通貨のバイトコインに使われているプログラミング技術だ。
数年前にバイトコインが急激に値上がりした。
1年で40倍くらいになったから、バイトコインに投資していた人は億万長者になった。
億り人って呼ばれていたな。
俺は転生前も転生後も投資というか投機には興味がない。
しょせん実用性がないバイトコインというものは、ただの投機対象でしかない。
今の鑑定能力を使えば、値上がりする対象はみつけることができるだろうが、そういう形で金を儲けるつもりはない。
投機というのは、損をする人がいて得をする人がいる。
結局、金の奪い合いでしかない。
生産的でないから、俺は儲かると分かっていても、そこに参入する気はない。
「ブロックチェーンというとあれだろう。バイトコイン」
「ええ、そうです。バイトコインのベース技術になっているのがブロックチェーンです」
「悪いが俺は投機には興味なくてな」
2年前もやたらとバイトコインの話をしてくる友達がいたが、面倒くさいから縁を切った。
残念ながら、こいつも、同類か。
「あ、バイトコインとかそれの類似の仮想通貨じゃないんです。ブロックチェーンそのものです」
そう言われて気が付いたが、俺はブロックチェーンのことをほとんど知らない。
バイトコインに興味がなかったからブロックチェーンにも興味がなかった。
「ブロックチェーンというのは、驚くほど未来的なものなんですよ」
「そうなのか。どこがそんなに未来的というんだ?」
たしかバイトコインは、国に依存しないグローバルな通貨になりうる。
そんな話は聞いたことがある。
しかし、俺はそんなことは信じてはいない。
所詮、換金できる以上、国に関わりを持つことになる。
換金した時点で税金は発生するし、税務署の監視の元になる。
「ブロックチェーンの話、興味あります?」
こいつ、ブロックチェーンオタクだな。
しかし、真珠色のオーラに免じて、話くらいは聞いてやるとするか。
「今日はこの後、時間あるか?」
「ごめんなさい。用事があって。明後日なら大丈夫です」
「それなら明後日の夜でいいか?」
「はい」
☆ ☆ ☆
2日後の夜。
「いらっしゃいませ、翔太さん」
「ああ、純ちゃん。今日はふたりだ」
澪ちゃん、いや、ここではママさんか。
ママさんは、他のお客さんの接客中か。
「私でいいかしら? それともママさんを呼ぶ?」
あ、澪ちゃんとの関係、バレているのか?
それともカマかけをしているのか?
「いや。今日はこの人と話をするのが目的だから、ママさんはいい」
「あら。そうなの? じゃ私がお相手するわね」
純ちゃんに案内されてすこし奥まった席に連れてこられた。
ここは、隣の席との間に衝立があって、話をするのに向いた席だ。
「翔太さん。ずいぶん高そうな店ですね」
「ああ。座ってひとり5万円というとこか」
「ええーーっ。そんなにお金持っていません」
「大丈夫だ。クレジットも使えるぞ」
「ええーーっ」
「冗談だ。俺がここに来たかっただけだ。おごりだぞ」
「あ、ありがとうございます」
深々と頭を下げられてしまった。
真珠色のオーラの癖に金はないようだ。
もっとも、金儲けが好きな奴は金色のオーラになるから違うのだろう。
「ブランデーでいいか?」
「僕はなんでもいいです」
「じゃあ、純ちゃん。入れてあるXOとつまみを適当に頼む。そこそこお腹は空いているから」
「はーい」
純ちゃんのハンドサインひとつで黒服さんがボトルと水割りセットを持ってくる。
ここはとにかく何事もスムーズだ。
「それで未来的なブロックチェーンの話を聞くとするか」
「はい。よろしくお願いします」
もう何にも手がつかない。
連絡が途絶えてしまってからは。
だって、理由がわからないの。
ケンカした訳でもないし、怒らせた訳でもないの。
なんの前触れもなくいきなりなの。
それまでは楽しくLINEとかしてたわ。
毎日のたわいもない話をしてたの。
そりゃ、そんなにマメじゃないから既読スルーもあったわ。
でも、翌日の朝には必ずレスがあったの。
それなのに、あの日からもう2週間。
全くレスがなくなっちゃった。
もう、多くは望まないわ。
会いたいなんて言わない。
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