第44話 スカウティングのフィールドにやってきたぞ
昨日の投稿でうれしい事と困った事があったんだ。
うれしい事はコメントが11件もついた事。
二桁は初めてでうれしかった。
ただ。
そのすべてが後書き小話のコメントだった。
困ったなー。
本文のコメントもお願いねっ。
「ここがAI技術交流会場か」
統合リーダーが出してきた条件。
それはAI開発の要員をスカウティングすること。
現在、自動車AIの開発で手の空いている技術者が全くいない状態。
本来であれば、新しいAIの受注などできない。
だけど、ひとつだけ手がある。
それがAI技術者のスカウティングだ。
「しかし、AI技術者のスカウティングと言っても特殊技術だからスカウトする相手がみつかるはずがない」
そう反論したら、そのままこのAI技術交流会場に連れてこられた。
AI技術交流イベントが開催されているこの会場は、今日1日で来場者が3000人を超えるという。
そのほとんどがAI技術者だ。
「このイベントには全国から優秀なAI技術者が集まってくる」
統合チーフはそう太鼓判を押した。
その中には、俺の目に留まる技術者もいるはずだ。
AI技術交流イベントは、最新のAI技術を発表する場であり、AI技術のセミナーも開かれている。
もうひとつの目的はAI技術者の転職斡旋。
増員をもとめている会社は募集ブースを設けて、条件等を話し合う場を用意している。
本来は新たにAI技術者になる人を募集するという建前になっているが、実際は転職組が多いのはAI技術者なら誰もが知っていること。
「このイベントに来ているAI技術者はいい話があればキャリアアップの転職をしたいと思っている人が沢山いるんだ」
「要は俺がその中から、俺のAIを作るスキルを持っている技術者を募集ブースに連れていけばいいんだな」
「その通り。もし、使える技術者がいるなら特別な待遇で受け入れるぞ」
「面白い!」
3000人から俺のAI開発チームを選んでいいということか。
「その上、採用になったらスカウティング費として採用時の年収の1割を出そう」
「乗った!」
俺はこうしてAI技術交流イベントで俺のAI開発要員を探すことになった。
「次世代AIは、ビッグデータと共生関係を生み出します。そのために必要なソフトが…」
「観てください。このカメラワーク。ドローンとAIの組み合わせで映像の世界が改革され…」
「このAIウオッチは世界初の身に着けるAIとして開発されて…」
あちこちのブースで開発している機器やソフトを展示している。
自社の存在をアピールしてAI技術者を集めたり、開発会社同士のコラボや販売会社とのつながりを持とうとしている。
「さて、どのあたりから隠れた天才AI技術者を探すかな」
「おや、翔太さんじゃないですか」
「あっ、常務さん」
日本一の自動車メーカーのAI担当常務さん。
フットサルの試合の打ち上げで抜け出して以来だ。
「何をしているんですか。もし、転職を考えているならうちに来てくださいよ」
「あー、俺じゃなくてな。元の会社のスカウティングを頼まれてな」
「うわっ、翔太さんのAI技術者スカウティング! うちのも頼みますよ」
「そちらはいくらでも応募があるでしょう?」
「メカ系の技術者ならそうですが、AI系は足りないんですよ。特に翔太さんに手伝ってもらった部署が大きくなっているから、足りないんです」
「あー、地味子リーダーは元気か?」
「ええ。今は30人の部下を率いて頑張っていますよ」
そんな話をしていたら、いつの間にか常務の会社のスカウティングまでやることになってしまった。
まぁ、俺のAIと常務の会社のAIではタイプが違うから必要な人材も異なるから、ついでに引き受けた。
条件は同じ年収の1割で。
もちろん、俺が推薦するAI技術者は特別待遇を用意してもらうことになった。
今日のイベントが終わるまでに最低20人のAI技術者をみつけないといけない。
忙しくなってきたぞ。
駅前にあるベンチの下にその柴犬はいた。
夕方の6時に来て終電が来ると帰る。
毎日、毎日。
雨の日も雪の日も、同じ時間、同じ場所。
今日もベンチの下でじぃーと駅の改札を見ている。
何かが起きるのを待っているようだ。
「今日も待っているんだね」
通る人が声を掛けたりしている。
その柴犬の名前は、「ポチっと」。
「ポチっと」待っているよ。
うん。「ポチっと」待っている。
いつまでも、いつまでも。
/
ポチッと・・・して欲しいな。




