第37話 まぁ、好事魔多しっていうけどさ
やったー。
ブクマ1万超えました。
いまだにローファン日間1位が取れていなけど、読者数の大台は超えました。
ありがとうございます。
「来週からの予定、がっちり組みました」
「それはよかった」
ニッキーから報告で来週から1カ月、毎日イベントの予定が組みあがった。
協力を申し出たフットサル会場だけで、もう50箇所を超えている。
イベントに参加する予定の元Jリーガーは100人にもなった。
何事も順調に進んでいる。
土日祝日は全国の30か所以上でニッキーブランドの「元Jリーガーとフットサル試合」イベントが開催される。
平日でもその半分の15か所で開催される。
ひとつの開催場所で平日は5試合ほどで、休日だと10試合ほど。
1週間で1000試合も行われる予定になる。
もし、その試合の申し込みが完売したら、1試合で8人。
1週間で8000人が参加する。
参加費が8000円だから、1週間の売り上げは6400万円になる。
1カ月だと3億円近くの売り上げになる計算だ。
さすがにここまでくると、完売は難しくなってくるだろう。
そのための手がプレスリリースだ。
ニッキーをはじめ、人気があった元Jリーガーも参加している。
ニュースネタとしては、十分価値があるだろう。
さすがに全国ネットのテレビ局は無理だろうが、地方局くらいは取材にくるかもしれない。
ユーチューブ番組はもちろん来るだろう。
他にもネットニュースにのりやすいように、原稿も作ってある。
元Jリーガーとフットサルファンのチームが新しいフットサル文化を作る。
そんな内容の原稿だ。
「何もかも順調じゃない?」
「まぁ、そうとも言えるな」
俺よりもカスミが盛り上がっている。
カスミはお宝鑑定ビジネスの方を手伝ってもらっているから、フットサル事業にはノータッチだ。
ただ、観るのは好きらしく、ニッキーの出る試合に応援しに来たりする。
もう流れができあがったから、俺はそれほどイベントには参加していないからカスミの方が多いくらいだ。
「だけど、1週間でどのくらいの売り上げがあるの?」
「全部売れたら、6400万円だな」
「すごいっ。翔太さんはどのくらいもらえるの?」
「俺の取り分は2割だな」
会場費、元Jリーガーの取り分、カメラマンのフィー、その他もろもろを引いて、広告費の積み立て分も引くとそのくらいになる。
「じゃあ、毎週1280万円もの収入になるってこと?」
「あー、そこから人件費が出るからな」
今はアルバイトで協力してもらっている事務の女の子が10人ほどいる。
「だけど、そんなに人件費かかっていなくない?」
「まぁ、週だと15万円くらいかな。最低賃金でやってもらっているからな」
さすがにもう少しスタッフを増やさなければな。
また、イベントにアルバイト探しをしにいかないとダメか。
「すっごーい。翔太さん、お金持ちね」
「まぁ、こういう具合にうまく行っている時に限って、何か起きたりするんだがな」
「そんな、フラグを立てるようなこと言ったら駄目でしょ」
そうなんだが。
しかし、何かが起きるっていうのは実際、感じている。
ある程度の事前対策は考えてある。
それでも、対応しきれるかどうかの大きな何かが。
そんなことを考えていたら、スマホが鳴った。
ニッキーからだ。
「翔太さん、大変です。真似されました」
「あー、やっぱり来たか」
これだけ大掛かりにやっているんだから、そろそろ真似する奴も出てくるだろう。
そのために、ニッキーブランドを付けておいたのだ。
個サルイベントを仕掛けている人なら、フットサルコートを押さえるのは簡単だろう。
元Jリーガーだって、仕事に困っている人はいくらでもいる。
だけど、ニッキーブランドがあるから、ちょっとした元Jリーガーならブランドで勝てる。
「それも、皇帝ガズを使ってきました」
「なんだと!」
皇帝ガズは、Jリーグ発足当時から一番人気だったJリーガーだ。
Jリーグ黄金時代の大スターだ。
50歳になった今年、J1復帰とニュースになっていた。
「皇帝ガズを持ち出してきたか。どこが主体でやっているのか?」
「全国フットサル連盟です。もうネットニュースにはあがってきています」
おおっ、そんなとこがバックについているのか。
全国フットサル連盟は、俺たちが協力を依頼している日本フットサル協会と並んで、フットサルの二大組織だ。
ふたつの組織が存在しているのも、フットサルが広まらないひとつの原因だと言われている。
とにかく犬猿の仲で、こっちのイベントを知って大々的に真似をしたらしい。
「うーむ。明日にもプレスリリースを流す予定だったが先を越されたな」
「どうしましょう、翔太さん」
「縮小だな。ニッキー、悪いがフットサルコートと元Jリーガーの人たちに事情を話してくれ」
「もちろんです。ただ、なんて話したらいいか、なんですが」
「現状をそのまま話してくれ。この状態では集客が半減する可能性が高い。あと、できれば皇帝ガズとコンタクトはとれないか?」
「どうでしょう。どこまで関係しているか、ですね。連絡は取ってみます」
「よろしく頼む」
ニッキーの電話のあと、カスミが状況を知りたがったから、全部話した。
「ひどい! なにそれ。単なるパクリじゃん」
「そう言うなって。イベントというのは真似されるものなんだ」
「だけど、せっかくうまくいっているのに……」
「いいか。イベントに限らずビジネスというのは、維持することが大切なんだ」
維持ができるかどうか。
ここで、下手に対抗して集客に金を掛けたりしたら大きなダメージを受ける。
巨大な敵に対抗するためには、準備が必要だ。
今の俺には、使えるリソースが足りなすぎる。
縮小だけが手だな。
小説家になりたいワナビー君。
今日はなろうの森にやってきました。
ところが森の中にある小さな池に大切な評価ポイントを落としてしまいました。
悲嘆にくれて池の中を覗いていると、それは美しい女神様が現れて言います。
「あなたの落とした評価ポイントは、この金の評価ポイントですか? それとも銀の評価ポイントですか?」
「両方とも、僕のです。あと普通の評価ポイントも!」
その答えを聞いた瞬間、女神様の顔は般若の顔になって言いました。
「その強欲者! お前のような奴には評価ポイントは似つかわしくない!」
すると、どうでしょう。
ワナビー君は「評価ポイントを受け付けない」呪いが掛かってしまいました。
今でもなろうの森の小さな池のあたりからは、ワナビー君の声が聞こえるそうです。
「評価ポイント~」




