第36話 フットサル事業は軌道に乗りそうだ
「翔太さん。すごいです」
事務要員として雇った女子チームのリーダーから電話が入った。
まずは、女子たちにはニッキーブランドのフットサルイベントの申し込み対応をさせている。
「どうした?」
「来週のイベントの予約枠、すべて埋まりました」
「それはすごいな」
第1回のときに満員で参加できなかった人たちがいる。
その分で2割ほどはいける。
さらにリピーターで1割。
2週続けて参加できる人はそれほど多くない。
残り7割は新規の申し込みになる。
だから週の中頃までに埋まるかどうか。
そんな予想をしていた。
ところが週の最初の日で満席とはな。
「申し込みの人たちに聞いたんですが、一番多いきっかけはSNSです」
おっ、それが効果を発揮したのか。
イベントの時にカメラマンを用意して試合の時の写真を撮りまくってもらった。
その中で参加者が写っているのを参加者に送り込んだのだ。
「SNS等で利用していただけるとうれしいです」
そんなメッセージを付けて。
カメラマンにも最初から言ってある。
「SNS映えする写真を撮って欲しい」
元Jリーガーと絡んだ写真。
その一瞬の写真が送られてきたら、そりゃ自慢したくなる。
そこを突いて、拡散を狙った。
狙い通り、SNSにアップしてくれたようだ。
同時に来週のイベントの予告を入れてくれた参加者も多く、一気に申し込みが入ったようだ。
「満席になってしまったので次の予定を聞かれています」
「それなら、ニッキーと予定を立てるとするか」
事務女子たちには、満席で参加できない人たちにお詫びのメールを個人的な感覚でしてもらうことにした。
実際にはアルバイトなのだが、ボランティアスタッフでフットサルが好き同士のメールという設定だ。
やっぱり、女子からのメールなら事務的なものより、個人的な物のほうが嬉しいよな。
そんなとこでも、次につながることをやってみている。
フットサルをベースにいろんな手を使って興味を持った人とのつながりを強くする。
大切なことだな。
しかし、満席になったことで予定がちょっと変わってしまった。
予定では満席にならなかったら、次の手を考えていた。
プレスリリースだ。
新しいフットサルの楽しみ方として、情報サイトや情報誌に記事ネタを提供する予定だった。
そのために使うプレスリリースの専門家は探しておいた。
イベントの写真のうち、プレスリリースに使えそうなものは写っている参加者に了解も取ってあった。
しかし、満席では仕方ないな。
プレスリリースは1週間ずらすとしよう。
「予約券の販売状況はどうだ?」
予約券はイベントに参加した人が次にまた参加するための券。
一般募集の前に申し込みができる優先権が与えられている。
「現在、予約状況は7割です」
おや。
思ったより多いじゃないか。
この予約率がビジネスとして継続していくかどうかの分かれ目だからな。
リピーターを獲得できないのでは、新規参加者を集め続けないといけない。
だんだんと経費がかかるようになって、原価割れをしてしまう。
7割が予約してくれるとなると可能性があるということだな。
「一番率が良いのがニッキーで100%です」
さすが、ニッキーだな。
100%というのはすごいな。
「もうひとり100%がいます」
「ほう。誰だ」
最初にニッキーと打ち合わせをしたときの20代の元Jリーガーだった。
若いのにすごいな。
「予約をしてくれた方に聞いてみると。彼、褒め上手みたいですね」
「それはいいな」
予約が入るかどうかは、試合が楽しかったかどうか。
そこにかかっている。
彼のチームはきっと褒めて盛り上げて、楽しい試合になったのだろう。
「50%以下の方もいて……」
うーむ、やっぱりいるのか。
12人のJリーガーのうち3人が50%を切っているらしい。
もう一回様子をみて、50%以下なら切るしかないだろう。
楽しませることができない以上しかたなかろう。
「しかし、君は情報整理が上手いな」
「はいっ。なんか楽しくて。どうやったらイベントが盛り上がるか、いろいろと考えているんですよ」
「それは一度聞いてみたいな」
「次のミーティングまでにまとめておきますね」
よし、ニッキーに電話してイベントを平日も含めて拡大する話を進めていこう。
「どうして、しないのかな?」
「お腹がすいている時に、評価ポイントを入れたい女なんていないわ」
「そ、そういうものなのか……」




