表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/113

第28話 個サルビジネスを組み上げろ

「とにかく、ゲームに参加した人の満足度が本当の勝負だ」

「そうなるんですね。難しそうですね」


今、俺はニッキーが連れてきた4人の元Jリーガーと話をしている。

最初のイベントの打ち合わせでだ。


イベントの内容は、町田で新しくできたフットサルコートを3連休の間借り切って行う予定だ。

コートが3面あり、そのうち2面を借りる。


今回のイベントに参加するのは8人の元Jリーガー達。

有名なのはニッキーくらいであとは、それほど有名ではない。


だけど、元Jリーガーというのはブランド価値がある。

ニッキー率いる元Jリーガー達。


このJリーガー達とチームメイトになって戦う人たちを募集するのだ。


「開催は2週間後。それまでにどれだけ参加者を集められるか、だな」

「すでに日本フットサル協会の協力は取り付けてありますよ」


集客には、どれだけ多くのフットサル好きに告知できるかが重要だ。

そのために、日本フットサル協会を巻き込むことを考えた。


実に簡単にそれが実現したのはニッキーの力によるところが大きい。


「元Jリーガーの新しい仕事を生み出したい」

というニッキーの気持ちを協会のお偉いさんに訴えたのがよかったのだろう。


そして、俺のメッセージ。


「フットサル愛好家が増える流れを作ろう」


これも効いたのかもしれない。



フットサル人口は8年前に比べて半分になってしまった。

その理由は俺がみれば明らかだった。


個サルというシステムだ。


チームに属するのではなく気楽に空いた時間でフットサルを楽しみたい。

そんな声に応えたシステムだ。


しかし、そこには落とし穴があった。


ただフットサルをしたい人だけを集めてチームを作る。

そのチームでフットサルの試合をする。


これで本当に楽しくフットサルができるはずない。

フットサルはチーム競技だ。


寄せ集めのチームでゲームをしても、楽しいチーム戦が味わえるはずがない。


中には、仕切りたがり屋がいてキャプテン気取りで指示を出したりする。

初めて会った奴にそんなことをされて、ゲームがつまらなくなった。


そんな参加者の声があがっている。


ダンジョンに挑む冒険者だって、いくら個人スキルがあっても寄せ集めでは簡単に全滅してしまう。


「いいか。リーダーが重要なんだ。リーダーを誰にするか、よく考えて答えを出すように」


賢者の魂に嫌というほど言われ続けてきた。

一見、リーダーに向いているようにみえて、そうじゃない者がたくさん存在する。

自意識ではリーダー向きだとしても、客観的に見たらリーダーを任せるとチームが崩壊する。


そんな似非リーダーをたくさん見てきた。


フットサルなら負けても命を落とすことはない。


しかし、そんな楽しくないチームでは「次も参加しよう」という参加者が出てこない。

リピート参加者がいないようだと、ビジネスとしては失格だ。


どんなに人集めをしても、リピート率が低くては穴の開いたバケツに水を注ぐようなものだからな。


日本フットサル協会がどんなに頑張ったとしても、フットサル人口が減り続けるという結果になってしまっているのは、そんなことも関係しているのだろう。


「時間が空いた時に気楽にフットサル試合を楽しみたい」


そういう人たちが本当に求めている物。

それが提供できるかどうか。

ビジネスとして継続するためには、そこが重要だ。


本当に求めている物。

それは、熱くなれる試合だ。


学生の頃、部活で味わった物。

時間が学生の頃のように自由にならない社会人。


練習の時間はとりたくないが、熱くなれる試合をしたい。


それが表には出てこない本当のニーズだ。


「中には寄せ集めチームで指導力を発揮したいと思う参加者もいるのだが、どうなると思う?」


俺は20代の元Jリーガーに質問してみた。


「えっ、寄せ集めで、ですか?」

「そうだ」

「主導権争いになりません?」

「そうなるな」

「不満になりますか?」

「そうなるんだ。その結果がリピート率低下だ」


認めてもいない相手に仕切られるというのは単に不快なだけだ。

チーム戦なのに、だれも仕切らないか、もしくは、不快な仕切りをされるか。


それが現在の個サルの問題だ。


賢者の魂から教わったことをベースにフットサルに応用して説明していく。


「でも、寄せ集めなんですよね」

「そうだ。ただし、ひとつだけ答えがある」

「どんな答えでしょう」

「元Jリーガーだ」


そう。

寄せ集めチームであっても、元Jリーガーがひとり入っている。


チームをまとめ上げるのは、誰がするのが適任か。

当然、元Jリーガーだ。


「寄せ集めチームで熱い試合をする」


これがこのイベントのキモだ。

これが成立するなら、このやり方はビジネスとして成功する可能性がある。


「このイベントの本当の勝敗は、次のイベントに何人のリピートを生み出せるか、にある」


自分のチームに参加したメンバーが次のとき再び自分のチームに何人リピート参加するか。

その率が高い元Jリーガーだけが、続けてこのイベントに参加し続けることができる。


「もちろん、ニッキーのような有名な元Jリーガーが有利なのは確かだ。ただし、それを超えるほどのリピーターを獲得できる人も出てくるかもしれないぞ」


要はどれだけ熱い試合ができるかだ。


いくらチームが勝っても、自分が力を発揮できなかったら熱くなれない。


チーム一丸となって、本気で試合をする。

それができれば、次も参加したいとなる。


「これがこのイベントの評価システムだ。異存があるなら言ってほしい」

「すごい!」「そう来たか」「やります」「負けられないな」「やりましょう」


ここに集まった元Jリーガーは、本気になったな。


元々、こいつらは闘争心を持ったやつらだ。

それをちゃんと生かせる評価システムがサッカー以外にない。


チームを一丸にして熱い試合をして勝つ。


これに本気になれない奴はいらない。


「それじゃ、他の連中にも伝えてくれ」


こうして、『元Jリーガーとフットサルを楽しもう』という、ベタなタイトルのイベントはスタートしたのだった。


40分の1ゲーム、8000円という通常の5倍にもなる参加費のイベントとして。


個サルのビジネス的側面の問題点を、賢者の魂の教えで解消できるのか?


続きが気になるなら、ブクマをしてね。


最後に賢者の魂の一言を。


「評価ポイントを入れることが面白い小説を増やすのは自明の理だ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 元Jリーガーが接待は言い過ぎですがアシストに専念して ゲームを盛り上げて参加者の見せ場を作ってくれる、 素人でもその日ワンプレイのMVPになれるなら有料でも 参加したくなりますね。
[一言] 確かにサービス業は参加者に時間を忘れるほどの楽しさを与えられないとなかなかリピートはないですからうまいやり方ですね。 問題はもとJリーガーの能力でしょうけども。
[良い点] 面白かった [一言] 賢者様に言われちゃしょうがねえw 評価いれました
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ