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第23話 フットサル試合でスキル解放をして無双してみたぞ

「あ、翔太さん。いたいた」

「おっ、カスミ。来たのか」


今日フットサルの試合をすると言ったら、応援に来ると言ってた。

試合が始まる寸前に来たみたいだな。


「ずいぶんとかわいい娘ですね。恋人さんですか」

「あー、そうかもな」

「カスミです。よろしくね」


大きい会社のお偉いさんだと言ってあるから、ちゃんと挨拶をする。

挨拶は大切だぞ。


フットサルのチームメイトの若い男達もカスミを見てびっくりしている。

なかには、うらやましそうに見ている男もいるぞ。


まぁ、カスミは下手なアイドルよりかわいいから当然だな。


「みなさーん。カスミも応援するのでがんばってくださいね」

「「「おー」」」


やっぱり、かわいい娘の応援は男のモチベーションを上げるな。

そのために呼んだようなものだからな。


「おっ、ママさん。それに純ちゃんも来てくれたんですか!」


銀座のママと純ちゃんも応援しにきてくれた。

常務さん、ふたりが応援に来てくれて嬉しそうだ。

カスミも入れて美人3人の応援はすごいかもしれないな。


「みっちゃん、がんばってね」

「翔太さんもがんばってー」


こっちのチームはいきなり華やかになった。

対する相手チームは応援団はいない。

野郎ばかりで地味だな、


「おい。みんな。あんなチャラチャラした応援に負けるなよぉ」

「「「「おー」」」」


おっと。

なんと、相手のやる気にも火を付けてしまったようだ。


さて、いよいよフットサルの試合が始まるぞ。

コイン・トスで相手チームのキックオフから。


まずは観察するところからだな。


相手チームは単純な作戦でいくとみえる。

まぁ、そうなるだろう。

ひとりだけ実力が格段に上のニッキーがいるんだからな。


要はニッキーにボールを集める。

とにかく、ボールを取ったら、ニッキーにパス。

ニッキーはゴールを狙う。

そんな作戦だろう。


今もパスでニッキーにボールが渡った。


「ゴール」


さすが元Jリーガー。

開始10秒でゴールを決めた。


しかし、これは参った。

何もする暇がなかったぞ。


今度は我がチームがボールをパスで回す。

まぁ、初心者の俺には回ってこないが。


俺はまずはそれぞれのメンバーの動きをチェックする。


自分の相手の動きと共に、チームメイトの動きもチェックを忘れない。

これはチーム戦での基本だ。


魔物との闘いでも、全体を見て判断する。

それを怠ると思いも掛けないミスが発生して危機が訪れた。

フットサルなら1点を取られるだけだからそれほど問題はないが。


両チームの位置関係を把握し、可能性をトレースしておく。

起きる可能性が多い事象をいくつも用意しておくと、起きたときに対応が早くなる。

まぁ、最低このくらいをこなさないと魔王は倒すことはできやしない。


あの頃を考えると、元Jリーガーをなんとかするのは余裕に思えてくる。


「また、得点取られたぁー。翔太! がんばって」


おや、いつもは翔太さんと呼んでいるカスミが翔太と呼んだ。

それを聞いて、純ちゃんがカスミの顔をみていて、ママさんにもちょっと動揺が入った。


どういうことだ?

3人の間にどんな心理的作用が働いているのか。

応援席の動向もチェックが必要みたいだな。


「まだ3点! ドンマイ」


チームメイトの一番の若手が声を上げる。

元Jリーガーにやりたい放題をされても士気が落ちていないな。


さて、そろそろ本気でいくとしましょうか。


俺はスキルを解放して行動を開始した。


まずは、ニッキーのマークだな。

ひとりだけのプロ経験者を野放しにしては、ゲームが組み立てられやしない。


俺はいかにも素人らしく、何も考えずにニッキーにぶつかるように接近した。


すると当然ながら、ニッキーに避けられて前に出ていく。

それを確認して、俺はつまづいたふりをした。


転んだ勢いで左足がたまたまボールにあたる。


転んだ勢いで相手ゴールの右端を一直線で狙うシュート!

はい、1点目。


「やったぁ! ラッキー。1点返したわ。翔太ぁ~、すごいっ」

「翔太さんっ。カッコいい。もう1点取ったら、1日付き合ってあげるわ」


おっと、純ちゃん。

応援にかこつけて、何を言っているんだ。


しかし、巨乳美人にそう言われたらがんばらないといけないじゃないか。


もちろん、そうは言っても素直にガチ勝負はする気はない。

素人が偶然に点を取ってしまったというふりを続けていくとしよう。


まだニッキーもそう思っているのは、見れば分かる。

さて、次はあれだな、完璧なブロックだ。


ボールをパスされたニッキーがドリブルで一気に責めてくる。

そのど真ん前に俺は移動した。


両足と頭の位置で3ポイントをガードする。

何も考えずに大きく身体を開いただけに見える。


その3点は、ニッキーがフェイントをかまして行くと見せかけたライン、その裏をかいたライン、さらに裏の裏のライン。


この3つのラインを同時にブロックされたぞ、どうするニッキー。


おっ、裏の裏のラインに来たか。

でも、そこは右足が跳ね上がって、俺のガード範囲に入っている。

へっへ、残念だったな。


ニッキーのボールさばきはさすがの一言。

だけど、たまたま、ボールの移動経路に俺の右足がある。


右足の踵をボールに当てて、常務がいるとこに最高のパスを送る。

ノーマークだった常務は嬉しそうにボールを直接シュートしてゴールに叩き込む。


「ナイス、シュート! 常務さんっ」

「常務ぅ~。カッコいいっ。純、惚れちゃいそう」

「翔太ぁ~。ナイスカット~。常務さんもさすがぁ」


3人の応援を受けて、常務も嬉しそうだ。


だけど、どうなっているのかって顔で常務が俺の方を見る。


俺は意味ありげにニヤッと笑った。

常務は大きくうなずいて、声を上げる。


「よし、2点目だ。この勢いで逆転するぞ」


いいな、この常務。

AIプログラムのときもそうだったが、妙にあうんの呼吸で伝わるものがある。

俺との相性がいいみたいだな。


逆にニッキーは考え込んでいる。

なぜ2点も返されてしまったのか。

不思議な顔をしていて、考えがまとまっていない様子だ。


相手チームのリーダー、専務は真っ赤になってチームメイトに怒鳴っている。


「次は俺にボールが近づいたら、何も考えずにゴール前に走り込め!」


一番の若手にささやくように指示を出す。

俺には筒抜けだけど、それに気づいていない。


「今度こそは追加点だ。いくぞニッキー」


キーパーをしている専務がニッキーに向けてボールキックする。

俺はニッキーにまだ近づかない。


そろそろ、ニッキーは気づいていたはずだ。

おれがマークをしているってことにな。


「まかせなさいっ」


おっ、ニッキー、本気になったな。

今までは、素人相手に本気を出すのはどうか。

そんな雰囲気だった。


それがJリーガーの頃のニッキーに戻っている。

本気を出したようだな。

そうこなくちゃ面白くない。


ニッキーは、俺を避けるように大きくふくらんだラインでゴールを目指す。


甘いな。させるかよっ。


俺は一瞬だけの火事場の馬鹿力スキルを発動。

急速ダッシュでニッキーの向かう方向へと向かい、インターセプトした。


俺はスライディングをかまして、ボールの移動ラインを狙う。

それを見て、ニッキーは届かないと読んだのだろう。

ドリブルスピードを上げて俺を抜く気だな。


さらにダッシュをかまして0.1秒早く左足をボールが通る場所へと位置させる。


その後はビリヤードの要領でボールをゴールにぶち込む。


異世界ではビリヤードはなかったが、コイン落としというコイン版のビリヤードがあった。


コイン落としのチャンピオンの協力が魔王討伐に必要だったから、すべてのスキルを活用してコイン落としをマスターした。


入射角と反射角。

摩擦と回転。


俺のスライディングしている右足がキューだ。

スビードが上がっているボールを最適なポイントを打つと、ニッキーの足にボールが当たる。


ボールの移動角度が代わり、相手チームの選手の方へ。

草チームの選手だからいきなりのボールに対応できずに腰に当たる。


そのボールが味方選手のシュートしやすいところに転がる。

うん、想定通りだ。


キーパーの専務はあまりの展開に対応できずにいる。

味方の若手選手がシュート。


ゴールはがら空きだから、若手も余裕で決めたな。


「「「ナイスシュー」」」


ママさん達が応援の声を上げた。

これで同点だな。


「タイム」


おっ、ニッキーがタイムを要求してきたぞ。

どうも俺のやっていることがバレたようだ。


まぁ、偶然が三回続くというのは不自然だからな。

ニッキーが俺を指さして、チームメイトに何やら指示を出している。


キックオフで再開。


なんと、相手チームのふたりが俺を完璧マークしてきやがった。

とにかく、ニッキーの邪魔をさせないつもりらしいな。


だが甘いな、

マークされても、あちこち隙だらけだ。


今度はニッキーへのパスをカットして、前に出ている常務にパスした。

常務も仲間にパス。


うまくパスを回している。

俺をマークするためにふたりも使ってしまえば、ゴール前はガラガラになる。


よし、ゴール。これで逆転だ。


その後は、少し俺も動きを緩めることにした。

一方的な試合にする必要はないしな。


シーソーゲームになるように試合をコントロールした。


前半20分が終わり、6対4でリード。

後半では、すこしアクロバティックな技を決めてみた。


俺をマークしている選手の足を避けるふりで足がもつれたようにみせかけて大転倒。

たまたま、足が上がったところにボールが当たり、オーバーヘッドシュート。


肩を痛めたふりをしてなでていると、大歓声。

あれ? いつの間に観衆が増えていた。


他のコートでゲームしていた連中がゲームが終わった後、ニッキーがいるのをみつけて観戦を始めたようだ。


そんなときに、俺のすっころびオーバーヘッドシュート。

うん、大歓声があがるのも仕方ないな。


面白くなってきて、カンフー映画の酔っ払い拳みたいにふらふらして、要所だけボールに当てる。

円運動を基本とした動きでニッキーを翻弄する。


まぁ、いろんな拳法も一通りマスターしているから、フットサルに応用してみた。

思わぬところで役立つものだな。


そして、ゲーム終了の笛が鳴った。


結果は10対6。

俺たちの圧勝だ。


終わった後は、勝ち負け関係なく握手だな。

スポーツマンシップというものだな。


俺はつかつかとニッキーに近づき、右手を出した。

ニッキーは俺の顔をじぃーと見ていたが、すこしして握手した。


「悔しいですが格が違っていたようですね」

「なんのことかな」


俺はとぼけたけど、にっこりと笑ってみた。

ニッキーも笑顔になった。

常務は専務と握手している。


あ、お互いに握力の限りをつくしての握手のようだ。

本当にガキっぽいな。


試合が終わった後は、打ち上げになった

いつも決まった24時間営業の居酒屋にみんなまとめて行くことになった。


異世界帰りはフットサルでも無双ができるらしい。


「次はJリーガー挑戦か」

なんてね。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] フットサルはスライディング反則なんだが、、、
[良い点] フットサルの試合。 最後までとぼけて 本気を出さないのがいいですね。 さすが、銀座のママさん。 純ちゃんも、一流の人間を見て目が肥えているから 主人公のオーラを本当に見抜いていますね。
[一言] ありがとう、メリークリスマス。
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