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第21話 なんと銀座で接待を受けることになったぞ

わーい。

ローファンタジー日間2位キープ中。


1位との差も縮まってきたぞぁー。

応援よろしくです。

何をしたらいいのか。

分からないまま朝になってしまった。


カスミと一緒に朝寝坊をしていたら、スマホが鳴った。


相手は車屋の常務さんだった。


「今夜、慰労会ということで銀座あたりでどうでしょうか」

「ああ、いいぞ」


やることが見つからなかったから、ちょうどいい。

ザギンでシースーとかか?


☆   ☆   ☆


「このたびはありがとうございました」


この方は日本一の売り上げの会社の常務さんのはずだ。

会社で何番目に偉いのか分からないがたぶん一桁に入っていると思う。


ちょっと気になって調べてみたら、社員は関係会社も入れると30万人もいるらしい。


その会社のトップ10に入っている人にお礼を言われてしまった。

それも敬語を使われているしな。


すごいことなのかもしれないぞ。


「まぁ、なんだ。ちょっと本気を出してみた、くらいなので気にするな」

「あの後、チーム一丸となってがんばっています。このままいけば、バグで発生した損失をカバーしてそれ以上の利益になると取締役会で評価されていまして」

「すごいな、あのチームは」

「波及効果を考えたら何千億円程度の利益につながると評価されています」

「うーむ。それを聞くと俺のフィーの700万円が安く感じるな」

「そうですとも。そこでささやかな物とは思いますが、慰労会をさせていただきます」


常務に連れていかれたのは、スーシーではなく。

銀座のクラブだった。


「あら、みっちゃん。お久しぶりね」

「ママさん。やっと一段落してな」


馴染みの店らしいな。

和服をぴしっと着込んだママさんは、日本美人って感じの女性だ。

年齢は30代半ばというところか。


鑑定する気はないが、来ている和服も、本人も相当、上品なオーラを放っている。


「あら、珍しいわね。一人じゃないのね。こちらの若い方はどなたかしら?」

「こちらの大先生は、あのトラブルを1週間で解決していただいたすごいお方だ」

「あのトラブルって、あれ?」

「そうだ。うちの会社が倒産するのではないか、とバカマスコミが騒いでいるあれだ」

「すごいわ。この方のおかげでなんとかなりそうなのね。よかったわ。みっちゃんのとこだから心配していたのよ。全然顔を見せてくれなかったし」

「うちの会社、どころか、私の部署のトラブルさ。会社がつぶれることはないだろうが、私が左遷させられるのは、ほぼ決まっていたようなものだ」


さっきから、ママさん。

俺のことをじろじろと見ている。


おおっ、鑑定しているな。

もちろん、鑑定スキルを持っている訳じゃないだろうが、多くの経験から男の鑑定はできるんではないかと推定できる。

ママさんの鑑定では俺はどう評価されるのだろうか。


「たしかに、すごい感じがするわ。みっちゃんみたいなお偉いさんを前にしても、全然物怖じしないしね」

「そうなんだよ。私なんかより、ずっと器が大きい方だぞ」


それは言い過ぎだろう。

その地位に登りつめるまで、そうとう苦労しているのが分かる。


あ、しかし。

賢者の魂の地獄のしごき30年に比べれば、その苦労も大したことないか。


「今日は、私の首が皮1枚でつながったことのお礼の場なんだ。彼を楽しませてくれよな」

「もちろんよ。こんな器の大きな男を前にしたらわたしも身体が熱くなってしまうわ」


あ、俺のこと鑑定したから、身体が反応したのか?

女性特有の反応を。


「おいおい、ママさん。20年もママの元に通いつめている私を前にして何を言うのかな」


あれ、20年だって?

そんなにママさんをしているのか?

いったいこの女性の本当の年齢はいくつなのか。

もちろん、女性の年齢鑑定なんてヤボなことはしないがな。


じゅんちゃんを呼んで頂戴」


呼ばれた純ちゃんはたぶん、この店のトップクラスの女性なのだろう。

20代の半ば。

カワイイ上に美人だ。

その上、巨乳だ。


重要なところだから、もう一度書くぞ。

すごい巨乳だ。


巨乳を強調するような胸の上が大きく開いた薄ピンクのドレスを着ている。


「こんにちは。初めまして、純です」

「純ちゃんだな」

「はい。純です。よろしくお願いします」

「おう。よろしくな」


本当のことを言うと純ちゃんの胸を見ながらお話をしていたいところだが、常務が話しかけてくる。


「おかげさまで、車載AI問題はなんとかなりそうです。その上、改良ポイントまで用意してもらって」

「いや、あれは俺というよりチームの力だ」

「そんなことはありませんよ。発想はすべて出していただいたと聞いています」


まぁ、そうなるな。

チームのそれぞれがしっかりと車載AIの状況を理解していたから、俺も新しいアイデアの可能性をいくつか出して、その可能性を鑑定できたんだけどな。


「あのチームは素晴らしいな。俺が一言いえばあっと言う間に実現してしまう力がある」

「選んでもらった人たちはうちの第一線級のメンバー、つまり日本の第一線級ですから」

「ああ。それは俺も感じた」


鑑定したときに、どの人も素晴らしいポテンシャルを感じた。

選ばなかった人たちも力が劣っているのでなく、今回の目的に合わなかった、それだけだったからな。


「チーム編成も素晴らしかったです。選ばれたチームを見て気づいたんですが、あの組み合わせは絶妙です」


それはそうだろう。

魔王を討伐する最適メンバー選抜にくらべればずっと簡単な組み合わせだった。

優秀なメンバーがいれば、大きな目標であっても射程距離に入るからな。


「どうでしょう。うちの会社に入っていただくことはできませんか。特別な待遇を用意させていただきますが」

「すまん。その気はない」


冗談じゃないぞ。

短期だから、目標に向けて本気で動いただけだ。


魔王の時みたいに、でかい目標なんかたてられたら目を当てられん。


「やはり、そうですか。それは残念です」

「まぁ、あきらめてくれ」


せっかく、ゆるい令和の日本に帰ってきたんだ。

今持っているスキルで十分すぎる収入を稼げると分かったんだから、あとの人生はスローライフでいく予定なんだからな。


「うわぁ~。すごいわ。日本一の会社の特別待遇の誘いを断ってしまうのね」

「純ちゃん。俺は単に雇われ人が向いていないだけだ」


そうは言っても、巨乳な美人に褒められるのは気持ちがいい物だ。


これも賢者の魂のおかげともいえるな。

もっとも、賢者の魂は俺の上司という訳ではないな。

とんでもなくうるさいただのパーソナルコーチにすぎない。


「俺は『俺が今やるべき』と思うことだけやるつもりだ」

「すっごい! 本当に素晴らしいこと、やりそうだわ」

「もしかして、俺に惚れたか?」


せっかくの銀座のクラブだ。

仕事の話だけでなく、巨乳の女の子を口説くこともしておかないとな。

さっとそれが今、俺がやるべきことだろう。


(違うだろ。お前が今やるべきことは別にあるぞ)


そんな声が聞こえた気がするが、ありえないことだ。

間違いなく、空耳だ。

まさか、こんなとこまで賢者の魂がやってくるはずがないからな。


「惚れるのは、どうしようかなー。きっと女の人がたくさんいる気がするしなー」

「純ちゃん、何を言ってるの。駄目じゃない」


あ、ママさんに怒られているぞ。

純ちゃんは自由奔放系とみた。


「あら。ママさん。まさかママさんも本気で彼、狙っているの?」

「えっ、冗談でしょ。ずいぶん年下だし……」

「あ、言い訳している。いつもは華麗にかわすママさんなのに」

「本当にそうだな。うちの若社長を連れてきたときだって華麗にかわしてしたのに。そんなドキマギしたママを見たのは初めてだぞ」


おっ、みんなママさんをいじっているな。

面白いから俺も参戦してみるか。


「すまんな。ママさん。俺の魅力でそこまでさせてしまって」

「えっ、そんな。私が勝手に……」

「おい、ママさん。本気で惚れてしまったのかい! 私が20年も通って落ちなかったママさんがな」

「わかるー。ママさんと並んでオーラで負けない男の人、初めてみたわ」


おっ、純ちゃんもオーラが見えるのか。

たしかに魔王を倒した俺のオーラは、とんでもないモノになっていると思うしな。


「でもね。男の人って若い女性が好きなのよ。ねっ」


おいおい、その「ねっ」はずるい。

妙な期待をしてしまったじゃないか。


若い女も好きだが、巨乳の女はもっと好きだぞ。


「そうだな。年齢相応な純ちゃんにしておきなさい。ママさんにはちゃんと了解はもらっておくから」

「だ、駄目よ。純ちゃんなんて……」

「あ、ママ、ずるい。そんなことでママの権限つかうなんて」

「え。そうじゃなくて……」


おっ、なんか、ママさん、かわいいな。

今のオーラはただの薄ピンクになっているしな。


さっきまでは、虹色のオーラが覆っていて、どこから攻めたら落ちるのか、すぐには分からない感じだったが、今は隙だらけだな。


「うーむ。降参だ。このママさんがこんなになってしまう、すごい男だったとは。どんな女でも参らせる魅力の持ち主のようだ。男としても、仕事人としても。何よりも人間として、な」

「本当にそうねー。このお店に来てから各界の有名人とずいぶん会ったけど、こんなにすごいーって素直に思える人、いなかったわ」


もしかして。

銀座のクラブでは、俺がモテモテなのか。

そういえば、銀座のクラブというのは弱肉強食の世界だと漫画で読んだことがある。

強い男はモテまくる素晴らしい世界なのかもしれないぞ。


「あーあんまり、本気にしすぎるとハマってしまいますから、気をつけておいて欲しいですな」


おっと常務さんに釘を刺されてしまった。

やばい、もしかして銀座の女たちの罠にはまりかけたということか?


「えっ、あ、もしかして。これが銀座のクラブってことかな」

「まぁ、それだけじゃないと思いますが。ただ、このお店クラスだと気持ちよくのんで一人20万円ってとこでしてな。あまりハマりすぎるとまずいかと」


一晩で20万円か。

キャバクラだったら1週間通い続けることができる金額だな。


ただし、ママさんや純ちゃんのレベルを考えたら当然も言える。

ゲストを楽しませることに関しては天才的なものだからな。


「なぁ、ママさん。すこしは私のことを持ち上げてくれないのかい?」

「みっちゃん。何を言ってんの。みっちゃんがすごいのは言わなくても分かっているじゃない」

「初めてのゲストを連れてきているんだからさ。本当はすごい人だって言って欲しいな」

「じゃあ、本当のことを言うわ。みっちゃんは日本一の企業を未来につなげることができる人よ」

「それはすごいな」

「これはオフレコだけどね。私も自動車関係のお偉いさん、ずいぶんと見ているけど、みっちゃんは全く別の視点を持っている人よ」


おっ、ママさん。しっかりと仕事モードに切り替わった。

オーラが虹色に戻っている。

ただ、輝きが増しているところを見ると本音で語っているらしいな。


「そうなの。いつもママさん。みっちゃんの話をしてるの。最近来ないから、どうしているのかなって」

「おおっ。寂しがってくれてたのか。うれしいよ」

「駄目よ、純ちゃん。余計なこと言わないの」


うーん、うまいな。

このふたりの連携プレー。


これをやられたら、でかい会社のお偉いさんでも、でれーっとなってしまうのは分からんでもないな。


「ママさん達に褒められたから言うんじゃないですが。今、わが社の人事管理にメスを入れる予定でして。保守的な取締役連中とバトルをしてましてな」

「そうそう。みっちゃん、すごい仕事をしているのよね」

「そんなときの車載AI問題で、頭を抱えていたとこでしてな。それが解決した上に、人事管理のアイデアもいただきました」

「へっ?」

「翔太さんの組み上げたチームです。あれは理想的な人事のモデルパターンです」


そうだといえばそうだな。

なんと言っても、賢者の魂直伝の人物鑑定と未来予測に基づく人選だからな。


「しかし、あれを真似するというのは危険だぞ」

「分かっています。ただ、理想を見せていただいたことで、可能性を追求することを決断しました」

「すごいな。それって危険なことなんだろう?」

「もちろん。保守派に負けたら、私はどこかの子会社に飛ばされますね」


権力争いはどこの組織でもあるからな。

大きければ大きいほど過激になるしな。


あっちでも大貴族の間の権力争いはすさまじかったな。


「こんどは、そのあたりでも助言をいただきたいと思いますが。お願いできますか?」

「ああ。それなら、この店で話すならいいぞ」

「おー、もちろんです。あまり普通の店で話せる内容ではないですからね」


やっぱり、銀座のクラブと赤坂の料亭は、そういう話が似合うな。


「それはそうと。明日の午後って、仕事ですか?」

「あー。今は仕事はしていない。夜に一時間の副業くらいだ」


お宝動画鑑定をするくらいだから、ほとんどニート状態だ。

それまで忙しかったから休憩中だ。


「実は明日、うちの会社のサッカー好き仲間でフットサルをするんですよ」

「運動か。この身体は相当なまっているから、いいかもしれないな」

「おおっ、それなら、参加しませんか? 実はひとり風邪で倒れて欠員がでてしまいまして」

「別にいいぞ」


フットサルか。やったことはない。

サッカーなら小学生のときの体育でやったことある。

まぁ、似たような物だろう。


「よかったです。これは宿敵との試合をドタキャンしないですみます」

「宿敵?」

「相手チームのキャプテンが、ライバル会社の専務でしてね。本業では勝てないからと言ってフットサルで挑んでくるんですよ」

「それは、なんか盛り上がりそうだな」

「ところが大したことないんですよ。今年に入ってから5戦していますが、うちの連勝です」


うーむ。

さっきのママさんのときも感じたけど。

この常務、やたらと負けず嫌いみたいだ。


「では、気楽に参加させてもらうよ」

「ええ。一緒にいい汗、流しましょう」


この日は、あとはどうでもいい話ばかりしていた。

さすがに銀座のクラブということだろう。


楽しく会話して、満足して帰った。


別れ際に純ちゃんとママさんの名刺をもらったから、タクシーで帰るときに見てみたらそれぞれLINEIDが入ってた。


なんと、プライベートのIDらしい。


本当かなと思いつつ、登録するとすぐにメッセージがとんできた。

また、男の妄想が広がってしまったぞ。


銀座のクラブで無双!

異世界帰りの実力を発揮するときだぁ~。


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― 新着の感想 ―
[一言] 貴族相手のスキル
[良い点] ここまで面白く読ませていただいてます [気になる点] 私の好みとは思いますが、主人公が敬語を使えないのが非常に気になります 物語は面白いので、残念です
[一言] 金太郎から硬派を抜いたらこんな感じ?
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