第18話 俺は王義之の書をオークションに出してみた
「教授、あの掛け軸の評判はどうだ?」
「すごいことになっていますよ。今回のオークションの一番人気でしょう」
王義之という書聖の写しの掛け軸。
それも日本の第一人者の保証付き。
人気がでない訳がないと言う。
「これなら1000万円越えも狙えるかもしれませんね」
「1000万円越えっ、すごいわっ」
カスミのテンションが上がっているな。
オークションが始まった。
オークション会場には200席ほどのパイプ椅子が並べてあり、全て埋まっている上に立ち見の参加者もいる。
舞台の上では司会進行役がハンマーを持って出品物を紹介している。
俺の掛け軸の登場は最後らしく、人気のほどが分かる。
始めのうちは、数万円程度の物から数十万円の物まで。
順調に進んでいく。
後半に入ると100万円を超すものが増えてきて、300万円超えも出た。
「いよいよですね」
「いよいよだわ」
「そうだな。今までの最高落札額が600万円ほどか。1000万円にとどくのかな」
「大丈夫でしょう。ほら、立ち見の人が増えているでしょう」
確かにな。
スタートした時点では、チラホラ程度の立ち見客が今はぎっしりになっている。
最後の出品だけ興味がある人がそれだけいるということか。
「それでは最後の品です。600年前に制作された書聖、王義之の写し。500万円からのスタートです」
いきなり500万円か。
強気だな。
しかし、500万なんていうのはあっさりと入札され、どんどんと値段があがっている。
700万円になっても、10人ほどが入札に参加している。
「800万円です。はい、そちらの方、810万円」
まだまだ上がるな。
900万円も超えて1000万円に近づくぞ。
だけど、ここまでくると3人しか残っていない。
最前列と、真ん中あたり、もうひとりは後ろの方の席。
3人が小刻みに値段を上げていく。
990万円、995万円、1000万円。
とうとう1000万円を超えた。
まだいくか。
最前列の人が1100万円で入札した瞬間、もうひとりの入札者があきらめた。
これで決まりか。
「1200万円」
おっと立見席から入札があった。
いままで入札に参加していなかった人だな。
ん? 服装からすると中国人か?
「教授。あれは中国人じゃないのか」
「そのようです。王義之は中国でもコレクターがたくさんいますから」
「中国人って金持ちよね」
うーむ。爆買いをしていた中国人パワー顕在だな。
「しかし、困りものですね。せっかく日本で見つかった王義之の掛け軸。中国に持っていかれるのはしゃくですな」
「だが、オークションだから入札額の高い人の物になるんだろう」
「それはそうなんですが。日本人にがんばって欲しいものです」
さすがに1200万円になると最前列の人も札を上げない。
中国人で決定なのか。
「1500万円」
おっと、席の真ん中あたりで声があがった。
日本人だな。
「あ、あの方は有名な書のコレクターですよ。中国人に持っていかれる訳にはいかないってことですね」
「それはいいな」
また値段があがり始めた。
コレクター氏と中国人。
一騎打ちだ。
1600万円になったところで中国人はあきらめたようだ。
コレクター氏の落札で決定した。
「よかった。私の連絡した方が落札して。中国人でなくて」
「それで俺は1600万円もらえるのか?」
「手数料が10%ですから、1440万円ですね」
「すごいわっ。ゴミの袋から1440万円ね」
その4割が俺の物か。
584万円が俺の取り分だな。
しかし、宝探しは楽しいことだな。
ただいまです。
9泊10日のバリ島から帰ってきました。
コメントをたくさんもらったけどレスできてなかったから、
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