第110話 私は完全な逆転計画を実行することした
話は1日ほど遡る。
場所は、手柄泥棒をボスとした組織の秘密基地。
「どうしたことだ? なぜ、あのシステムをハッキングできないんだ?」
「それが。簡単にハッキングできると思ったら、外部システムの防御プログラムが多重にあって」
「そんなことは知らん。なんとかしろ」
「なんとかと言っても……」
いくら天才ハッカーと言えども、しっかりとした防御プログラムが用意されているシステムは突破が難しい。
いくつか、防御システムの裏をかくプログラムを仕掛けるが、あっさりと裏の裏が用意されていて返されてしまう。
その上、追跡システムが強力で、ハッキングを仕掛けるためのサーバーがいくつも制圧されてしまった。
もちろん、資金は豊富にあるがハッキングを仕掛けるごとにサーバーを制圧されてしまうとリソース不足が起きてくる。
さらにサーバーから攻撃をした端末まで検知されて何人もの優秀なハッカーが捕まってしまった。
「このままじゃ、正直、じり貧になるしかありません」
「ふざけるな。いいか、あいつらは私の大切な資産のトークン結びシステムを公開するつもりなんだぞ」
「もちろん、わかっています。それをされると攻撃が本当にしづらくなります」
「そうじゃないだろう。私の大切な資産を他の奴らも勝手に使うようになるんだ。要は大金が詰まった私の金庫を誰でも空けてお金を取り出せるようになるってことだ」
「えっと。まだ、あのシステム、手に入れていませんよね」
「何言っている。あのシステムは私がいたから出来上がったシステムだ。あいつらの勝手にすることはさせはしない」
「それですと、あと1日のうちになんとかしないといけないってことですね」
「そうだ。何か手を考えろ!」
天才ハッカーは、IQ240の頭を目いっぱい廻して考えた。
2倍濃度の思考ポーションを続けて2つ飲み干した。
それで考え付く方法はたったひとつ。
「なんとか、コアモジュールへアクセスできれば可能なのですが。そのためには暗号キーが必要なんです」
「ほう。それが分かれば、あのシステムを私の物にできるのか?」
「できますよ。コアモジュールにブラックAIをぶち込んでやるんですわ。あいつらの言うこととか聞かないコアAIを暴走させて、こっちの命令を聞かせることができるようになります」
「それはいいな。すぐにやれ」
「待ってくださいよ。そのためにはコアモジュールの暗号キーがないと無理なんですよ」
なんと。
そんな制約があったのか。
どうしたら、いいのか私も最大限に思考を巡らして、作戦を組み上げないといけないな。
「それで、その暗号キーは誰が知っているのだ?」
「在真と翔太の共有だそうです。ふたりの了解がなければ暗号キーは解除できません」
「あのふたりか。あのふたりを動かすために必要なことか」
私は2倍濃縮思考ポーションを3つまとめてがぶ飲みした。
よーし、きたきた。
頭が廻っているぞ。
そうか。
翔太を誘拐して拷問さればいいんじゃないか。
私はやっぱり天才だな。
「おい、バリ島マフィア『ラスク』の幹部はいるか」
「はい、ここに」
「お前に、翔太を誘拐するように命ずる」
「ちょっと待ってくださいよ。無理ですよ」
「なぜだ?」
「翔太って日本人でしょう。それも有名な」
「ああ、そうだな」
「そんなことをしたら、国際問題になってしまいます。『ラスク』であっても国を相手にしたら勝ち目はありません」
うーむ、いい手だと思ったんだがな。
それは禁じ手だったのか。
「その代わり、別の女ならどうです?」
「別の女?」
「翔太の情婦で今は会社の社長をしている女ですわ」
「そんな女がいたのか」
「裏情報に関しては任せてくださいな。あるロスメンの部屋で密会していることはしっかりと突き止めてあります」
「ほう」
「この女ですわ」
「おお、いい女じゃないか」
確かにバリ島の会社を女の社長に任せたという話は聞いている。
どうせ、やり手婆のような女だろうと思っていたが、こんな若くて美人だとは知らなかった。
「この女と翔太が前回会ったときの盗聴音声がありますが聞きますか?」
「あー、どうせ、スケベなことをしているだけだろう」
「その通りですわ。それもすごい精力絶倫で驚きますわ」
「あー、そんなのは聞きたくないな。要はあいつはその女が重要だと思っているということだな」
「ええ。その通りですわ。公私共々つながりが強いんですわ」
「よし、決めた! その女をさらってこい」
「いつやります?」
「決行は明日の朝10時だ」
よし、これで暗号キーをゲットしてあのシステムは私の物だ。
そして、全世界の企業が私に上納金をがっぽがっぽと納入するようになるのだ。
全世界のGDPは88兆ドルだというから、その10%くらいは私の物になるだろう。
毎年、1000兆円の上納金か。
悪くないな。
「それまでに、ブラックAIをしっかりと用意しておけ。一気にいくぞ」
これで全世界は私に跪くのだ。
いままで私のことを蔑んできたやつらに「ざまぁー」と言ってやるからな!
赤い彗星っていえば、あれ。
黒い三連星っていうのもあったね。
だけど、僕が好きなのは青い巨星かな。
あ、なんの話か分かる人と分からない人がいるんだろうな。最近ではね。
まぁ、分からない人はなんとなく読んでね。
青い巨星とか言って登場したのが、その後、沢山出てきたときカルチャーショックを感じたのは僕だけじゃないと思う。
青い巨星が、いち、に、さん、し、ご。
全部で5機。
すると、青い五連星ってことになってしまう。
そう。僕が一番好きなのは、青い五連星。
ぼちっとすると、出てくるから、よろしくね。