第109話 トークン結びがオープンソースになったぞ
「いよいよだな、在真」
「ええ。翔太さん」
今日の昼12:00を持って、俺達が作ったトークン結びシステムがオープンソースになる。
もっとも、すべてがオープンになる訳ではなく、コア部分を残してその周りのすべてがオープンソースになる。
「在真、本当にいいのか?」
「ええ。もちろんです。翔太さんこそ、いいんですか?」
俺もずいぶんと考えた。
このまま、クローズシステムで続けていけば、当然俺達の会社に入る資金は増え続ける。
俺達の手でなければ、開発ができない以上、言い値の開発費がもたらされるのだ。
しかし、それはどう考えてもいびつな形。
本来トークン結びが持つパワーを弱めることにしかならない。
外部からのハッキング防止にしろ、俺達だけがやっていては敵が強力になったら対応しきれないかもしれない。
オープンソースにすれば、ハッキング防止のシステムが専門の会社が参加してくるだろう。
「僕はトークン結びのシステムがどこまでいけるのか。それを見てみたいんです」
「そうだな。俺達がどれくらい儲かるのか、ということより、俺達が生み出したトークン結びのシステムがどこまでいけるのか、見てみたい気がする」
実際、いままでトークン結びで生まれたビジネスの10%くらいは俺たちの会社の売り上げになっていた。
これから、新しく開発されるシステムでは1%くらいまで落ちてしまう。
その代わり、多くの人達がトークン結びシステムを使って、いろいろなジャンルで活用をしてもらえる。
すでに俺の元に来ているリストには、参加を希望する世界中の有名企業が名を連ねている。
今日の発表は国連に参加している193の国と地域に同時発表される。
それぞれの国のテレビ局、新聞、ネットメディアに向けて配信される。
予告は
すでに送っているので、大抵のメディアはこの発表を掲載すると約束してくれた。
それもトップ記事で出すというところがずいぶんとある。
「これで翔太さんも世界的有名人ですね」
「在真はいいのか?」
「僕はシステム屋です。システムで表現するのがシステム屋のやり方ですから」
そういってマスコミ的に目立つのを避けている在真。
だけど知っているぞ。
オープンソースのスタート画面にアスキーアートで在真のキャラが登場することを。
最初の一回しか表示されないから、却ってインパクトがある。
世界のシステム屋にアピールはするつもりなのだろう。
「なぁ、在真。このトークン結びのシステムはどのくらいまで広がると思う?」
「いやー、分かりません。今までは僕の想像力に限界がありました。これからは世界中の優秀なシステム屋と翔太さんのライバルのビジネス屋がイメージを広げるんです。限界はまだ見えません」
「そうだな。俺達の手を離れて、世界中の天才たちに任せるとしようか」
「そうですよ。なにが起きるか分からないというのは、本当に楽しいことですね」
もう、トークン結びのシステムがオープン化するプレスリリースは、全部用意が終わった。
「GO」のボタンを押すだけで世界中1万2千の報道機関に送られる。
「あと、1時間ですね」
「ああ、楽しみだ」
俺達がトークンシステムに新たな命を吹き込む瞬間を待っていると、俺の秘書をしているカスミが部屋に飛び込んできた。
「大変よ」
「なんだ? 急ぎのことか?」
「エリカさんがさらわれちゃったみたい」
「なんだって! どういうことだ?」
「詳しいことは、ディスプレイで話すって」
「ディスプレイ? 意味が分からないぞ」
混乱していると、この部屋にあるすべてのディスプレイが真っ赤になった。
そして、真っ赤なディスプレイの真ん中にひとりの男のシルエットが現れた。
「翔太よ。エリカは預かった。彼女の命がおしいなら、俺の言うことを聞くんだな」
いかにも嬉しそうに、そのシルエットの男は語りだした。
お久しぶりです。12日ぶりですね。
毎日更新を続けて、3月末で完結予定だったんですが、終わり方の構想に手間取ったのと、コロナの関係が影響して、ずいぶんとお休みしてしまいました。
予定では、これからまた毎日更新に戻ります。
実は今、バリ島から帰ってきて、自宅にいます。
インドネシアも14日間の待機指示が出ているので、4月12日までは仕事も含めて自宅から出れない状態です。
だから、小説に集中するつもりです。
いよいよ、ラストに向かってスパートをかけるつもりの僕によかったら、下の☆で応援してちょうだいね。