第107話 デモは相変わらず増えたが乱入してきた人がいた
「トークンはバリにはいらない!」
「金儲け主義な奴らは出ていけ!!」
相変わらず、日曜日になるとデモが起きる。
それも参加者が少しづつ増えてきている。
「トークンはバリ島の宝だ」
「バリから世界へ!」
最近は俺たちのシステムを応援する側のデモ隊も出てきた。
バリ島の中心地、デンパサールにあるショータイムのオフィスから見て、左側が反対派。
右側が肯定派だ。
「数は、反対派の方が多いですね。3倍くらいでしょうか」
「ああ、そのくらいだな。しかし、肯定派の方が元気だな」
俺と在真は、デモ隊を見て評価している。
反対派は、あまりやる気がなさそうなおっさん連中が多い。
中心で声を張り上げている奴らだけは本気ぽいが、周りの連中は駆り出されたような感じだ。
「どうも、金で動いている連中ではないのか。やる気がないおっさん達は」
「肯定派の若い連中は翔太さんは動員したりしてないんですよね」
「もちろんだ。ただ、エチゼンリープ計画で就職した連中が休みの日に参加しているとは聞いている」
「あー。それはありかも。自分達の未来がかかっているんですからね」
エチゼンリープ計画に参加した若者は、環境がないが優秀と評価された人達だ。
それもトークン評価システムがなくなると、評価がうやむやになってしまう。
「まぁ、実際に使っている連中に文句言われるのは仕方ないがな。トークン評価システムで他のとこに仕事を取られたとか言われても、ちゃんと評価されるようにすればいいだけなんだがな」
「それまで、評価をうまくごかましていた連中にはトークン評価システムは邪魔でしかないんしょうね」
デモ隊を見ていて、そんな話をしていたらエリカが入ってきた。
今は、社長だからエリカと呼ぶのはどうかとおもうが。
「あのーーー。取材したいという方が来ているんですが」
「だから、受ける気はないと言っているだろ」
「それが日本のマスコミの方のようですが」
「えっ」
エリカの後ろから、ひょこっと顔を出したのは文秋の美人記者だった。
「やっとバリ島まで取材に来れたのに、門前払いってそれはないんじゃない?」
「えっと、こんなとこまで何しにきたのかな?」
「翔太さんがバリ島に逃げてしまって、日本のマスコミは寂しがっていますよ。今度はバリ島で騒ぎを起こしているということで編集長に直談判して取材に来ました」
「そこまでする必要があるのか?」
「何言っているんですか。ショータイムのシステムは日本でも話題になっていますよ。あの天才鑑定人が作った人間鑑定システムってことで」
あー、そうか。
すでに全世界に向けてシステムを開放してあるからな。
当然、日本で話題になることはあるな。
しかし、トークン結びのシステムは開放したけど、それに対応するサービスを実践する会社はまだ用意できていない。
普及するのは、もっと後だと思っていた。
「あれ、不思議なシステムですね。私も登録してみたら、リゾートの支配人にマッチングされてしまいました」
「あー、それはいいかもな。徹底的に調べまくるその根性はリゾートの評価をあげる特性につながる気がするぞ」
さすがに、文秋を辞めて支配人になる気はなさそうだが、実際にバリ島でやるならいくらでも紹介できるが。
「私の友達も面白がって登録しているわ。ただ、残念なのはマッチングされるのがバリ島が多いという罠」
「まぁ、こっちの人件費は安いからな。日本人が就職するとは思えないが」
「そうとも言えないわ。友達の中には本気でバリ島に来る気になっているのもいるわ」
あー、日本の真面目さに疲れた人だな。
こっちでのんびり仕事をするのもいいだろうな。
俺も結局、そうなってしまった奴だしな。
「それで、何を取材したいんだ?」
「まずは、翔太さんがバリ島で騒ぎを起こしているって話」
「あー、それか。まぁ、見ての通りだ」
「ええ。裏付けも、すでに取ってあるわ。バリTVの関係者にいろいろと聞いたわ」
「そうか。それなら、わざわざ俺に取材はいらないだろう。写真でも撮って終わりか?」
まぁ、美人記者も仕事だからな。
協力できるとこはしておいても、いいな。
「実は現状取材はおまけよ。本命があるの」
「ほう。どんな本命が?」
「翔太さんのやっているトークン評価システム。それの未来像を聞かせて」
「そんなの記事になるのか?」
「翔太さんはバリ島にいるから分からないでしょうね。もう、ショータイムはロフトバンクの損社長に『すぐにヘクトコーンになる』って言われているの」
おいおい、いきなりヘクトコーンか。
ヘクトコーンというのは、ユニコーンの100倍って意味。
ユニコーンが評価額10億ドルだから、ヘクトコーンになれば1000億ドルだ。
巨額すぎてイメージがわかないぞ。
「ウミルートが人材派遣でトークン評価の利用を検討しているという噂もあるわ」
「本当かよ。まだ、バリ島でやっと普及したばかりだけどな」
「投資の雄と情報の雄が揃って評価しているのよ、ショータイム、というより翔太さんをね」
うーむ。
日本を離れていた間にそんな話になっていたとは。
まぁ、話半分に聞いておくとしよう。
しかし、俺の未来ビジョンを聞きたいというなら、喜んで話してやろう。
どこまでもでかい話になるだろがな。
「では、一緒に食事でもしながら、お話を聞かせて欲しいわ」
「えっ」
なんか、俺の据え膳レーダーが反応しているぞ。
ただの仕事でバリ島まで来たというのではないような気がするぞ。
「せっかくバリ島まで来ているんだから、ちょっとくらいハメを外してもバチは当たらないわ」
「うん。俺もそう思うぞ」
いつものように、後先考えないで前に進むことにした。
とうとう、インドネシアも外国人を入れないことになった。
ビザ免除がなくなってしまうのが20日に施行らしい。
僕はビザなしで居られる29日に帰る予定だったけど、20日に帰らないと駄目かも。
元々取っていた飛行機は、マレーシアでトランジェットする予定だったけど、マレーシアが外国人シャットアウトだから、新たに直行便を取らないと。
どうなるかはわからないけど。
気にせず、のんびり小説を書きながら流れをみるとしよう。
そんなどうなるか分からない僕に「がんばれー」とか思ってくれたら。
☆をちょんと評価して欲しいな。