第106話 インターネット上の攻防戦
「あれ。翔太さん」
「どうした、エリカ?」
「最初のロスメンの評価、おかしくない?」
エリカがスタッフとして入った最初のロスメン。
トークン結びの評価システムを見てみると、なぜか1になっている。
「おや。おかしいな。こんなに低くなるはずはないんだが」
「毎日、ロスメンの評価は見ているけどいつもは4は超えていたのに」
最大評価は5だから、4以上の評価なら優秀な宿として評価されている。
それがいきなり1になる訳がない。
そんな話をしていたら、在真から電話が入った。
「翔太さん! トークン結びシステムが外部から干渉されています」
「やっはり、そうか。ロスメンの評価がいきなりおかしくなったからな」
「あちこちの評価が書き換えられています」
外からの干渉ということは、ハッカーの仕業か。
公開している以上、そういうリスクはあるだろうしな。
「それで、対策はどうなっている」
「はい。パトークンが出動しました」
「パトークン?」
「パトロール・トークン。略してパトークンです」
「うーん、語呂が悪いな。パトトークンの方がよくないか」
「えっ、そこ?」
命名に突っ込みを入れたら、驚かれた。
まぁ、名前より大事なことがあるのは確かだしな。
「それならパトトークンでいきましょう。パトトークンは外部からの干渉をチェックして正しい評価に戻すトークンです。要はトークンの警察官です」
「そんなものを用意してあったのか?」
「ええ。どうしても分散処理システムになると、防御ウォールを展開するには無理がありますから。同じデータをいくつものトークンがそれぞれ持つことで、検証しあうようになっています」
「するとパトトークンが出動するのはデータの差異が起きた時ということか」
「そうです。もちろん、パトトークンだけじゃないですよ。もっと強い防衛用の仕組みも用意しています」
「パトトークンはその第一段階ということか」
セキュリティに関しては完全に在真にまかせっきりだからな。
インドネシアが中心といえ、これだけ普及してきたら、ハッカーの攻撃も受ける可能性があるな。
「で、今、できることはないか?」
「はい。パトトークンを全力で展開するために、予備で用意してあるサーバーを投入します。いいですか」
「もろちんだ。それで足りなければ、他からも借りて投入することもありだ。金でなんとかなるなら、ガンガン使え」
「分かりました!」
在真の元には、バリ島をはじめとした優秀なプログラマーが集まっている。
中にはハッカー経験者も混じっている。
優秀となったら、経歴を無視して集めた連中だ。
「あら。評価が元に戻ったわ」
「おお、そうか。パトトークンが動き出したな」
「よかったわ」
☆ ☆ ☆
「なんだ、どうした?」
「どうも、相手の防御システムが動き出したみたいです」
「はぁ? せっかく、あいつの関連している部分の評価を下げまくり計画がうまく行き始めたのに、どうしたことだ?」
「いままで関わりを持たなかった、新しいトークンが動いて、こちらが書き換えた評価を直しはじめました」
「うーむ、それならもっと大量に書き換えをすればいいだけだろう?」
「今は無理ですね。テストで書き換えをしただけですから。手動で書き換えをしても限界があります」
翔太のやつ。
そんなシステムを隠していやがったか。
だけど、こっちにはまだまだ、手があるってことを見せてやる。
「それなら、書き換えを自動化する方法はどうだ?」
「いいですね。一気に書き換えられたら、対応しきれなくなるでしょうから」
「そのために、ハイパワーなサーバーを用意してあるんだ。サーバー能力の限界まで書き換えプログラムをぶん回せ」
「分かりました。基本的なセキュリティー突破方法は開発が終わっています。あとは、書き換え実行をプログラム化するだけです」
翔太よ。
我々の攻撃と、お前の防御。
どっちが勝つか、勝負ということだな。
「あと。このセキュリティー突破ロジックをハッカー仲間に公開していいですか?」
「どういうことだ?」
「どうせ攻撃するなら、あちこちからやるのが一番です。ハッカー仲間にも、トークン結びのシステムは噂になっています」
「そんな手があるのか。しかし、ただの好奇心だけでハッカーが動くのか?」
「そうですね。賞金があったら、もっとハッカー仲間も本気で攻略を始めますね」
「それは面白い。賞金は3000万円用意しよう」
「すごい。それだとハッカー仲間がこぞって参加してきますよ」
待っていろよ、翔太。
お前のシステムをボロボロにしてやるからな。
バリ島の超高級リゾートのスイート・ヴィラで手柄泥棒はニヤリと笑っていた。
わーい。総合評価が52000になった。
前作に追い付いてきたぞーー。
これも評価してくれた、あなたのおかけでです。
まだ、評価してないよって方は、下にある☆をぼちっとしてね。