第105話 魔王ちゃんを囲んで戦ってみた
「はい。エキストラの人はこっちへお願いします」
全部で40人ほどが集まっているな。
ほとんどは、オタクっぽい恰好をしている。
「俺はオタクだ」と、大きく書いたTシャツを着ている男もいる。
そんなに主張しなくても、誰もオタクではないと勘違いはしないと思うぞ。
そんな中に入ると在真は本当に目立たないな。
オタクの群れに溶け込んでいる。
「あっ、魔王ちゃんだ」
PV撮影はビーチでするようで、撮影場所に移動する魔王ちゃんを目ざとく在真が見つけた。
今日の魔王ちゃんは、かっこいい&かわいい路線のコスプレ衣装だ。
まずは、ショッキングピンクの布地の少ないビキニを着ている。
その上から、魔王コスプレのためのでっかい外套を着込んでいて、ブラッドレッドがベースで縁取りが黒といういかにも魔王ちっくだ。
手にもっているのはドラゴンの杖で、曲がりくねった堅い木でできた杖に細身のドラゴンの造形物が絡んでいる。
ドラゴンの口にはどでかいピンクの水晶玉がはめ込まれている。
背中には大きな黒と赤の翼がついていて、どういう仕組みになっているのかは分からないが、パタパタ動いている。
左右のこめかみ当たりから曲がりくねった角がでていて、なかなか禍々しい雰囲気がある。
コスプレは基本的に怖い感じで作られているのだが、それを纏っているのがピンクのビキニを来た巨乳美少女。
怖可愛さ爆発だ。
「今日のは、すごくかわいいですね。あー、抱き着きたい」
「おい、在真、本当に抱き着いたりするなよ。あれは非合法ロリだからな」
「えっ、聞いてないんですか? 今回のエキストラに連絡があった公式ルールとして撮影中は抱き着き程度はオッケーってありましたよ」
「あー、今朝、送られてきたメールな。あれは読んでないな」
そんなことが書いてあったのか。
公式に抱き着きオッケーだと?
ふっふっふ。
オタクばかりだから、大丈夫だと思ったのかもしれないな。
俺が参加している以上、抱き着きオッケーなら、やるっきゃないな。
「なら、抱き着くとするか」
「え、翔太さん? 本気、出す気ですか?」
「ああ。公式に認められているなら、やるしかないぞ」
「うわー。魔王ちゃん、ピンチかも」
☆ ☆ ☆
「ふふふっ。抱き着きオッケー。これは最高のルールだ。この時のために用意した身体強化の2倍濃度のポーション。なみいるオタク達を蹴散らして私がしっかりと抱き着くしかないだろう」
ポーションを一気飲みした手柄泥棒は怪しく笑っていた。
☆ ☆ ☆
「はーい。準備できたエキストラさん達は、こっちにおいでください」
それぞれが剣士のいでたちだったり、魔法使いのローブ姿だったり、騎士の鎧姿だったり。
魔王ちゃんに挑戦するパーティレイドとしての役割が与えられている。
在真は、ちゃっかりと賢者コスプレをゲットしている。
俺はもちろん、勇者コスプレだ。
もっとも、異世界では金髪蒼眼のイケメンだったから勇者の装備が似合っていたが、ど日本人の今の俺だと違和感ばりばりだ。
これで魔王ちゃんに戦いを挑むふりをして抱き着くのか。
いいかも、しれないな。
「それじゃ、本番いきます。好きに魔王ちゃんに絡んでください」
「「「「うおおおーーーー」」」」
オタクの群れが一気に魔王ちゃんに向かっていったぞ。
さすがにあれだけの大群にどう戦うのか?
「うわ、魔王ちゃんすごい。寄ってくるオタク達を軽くいなしているよ」
「賢者在真よ。あの魔王ちゃんのうごき、只者じゃないとみた」
「勇者翔太さん。あれは我々でないと倒せないね」
「その通り。我々は最後に登場するとしよう」
本当のことを言うと在真は、オタクの一種だから大して戦力にはならない。
俺だけで、あの魔王ちゃんの動きを封じて、抱き着くとしよう。
「どおおおおりゃーーー」
でっかい剣をもった騎士が魔王ちゃんに迫っていく。
こいつ、なかなか動きがいい。
力任せの攻撃に見せかけているが、魔王ちゃんの動きに合わせて微妙に攻撃ラインを調整している。
「あいつ。ドーピングしてやがるな」
「ええーーー。ポーションですか? こんなとこでも手に入るんですね」
「ああ。だが、ドーピングしているにしても、いい動きだ。もしかしたら、もっと上級のポーションがあるのかもしれないな」
騎士が剣を魔王ちゃんのお胸にむかって横なぎにするが、魔王の杖であっさりと受けられる。
騎士の下半身に魔王ちゃんのキックが決まると股間を押さえて悶絶してしまった。
「あー、見た目はプレートアーマーだけど、実際は着ぐるみだからな。あれは痛いぞ」
「そんなのんびりと観戦してちゃ駄目ですよ。僕らもいきますよ」
「よし。いくとするか」
在真が何も考えずに、抱き着き攻撃を仕掛けるが魔王の杖が阻むように振り下ろされる。
それを俺が伝説の剣を使って押しとどめる。
「なっ、お前、やるな」
「そっちこそ。ただのコスプレイヤーではないとみた」
「我は魔王ぞ。我の元にひざまずくがよい」
「それなら俺は勇者だ。魔王の世界征服を阻むのが任務だ」
俺もなかなか、なりきるタイプだったらしい。
何も考えずに抱き着こうとする在真をサポートしてやる。
魔王ちゃんは俺と在真の攻撃になかなか、てごずっている。
「あー、うっとおしい。こいつの邪魔があって、強いこいつとの戦いに専念できないぞ」
在真はただ、抱き着きたい一心で無防備攻撃を繰り返している。
本来なら簡単に排除させられてしまうはずが、俺が絶妙な攻撃を入れ続けるこで、排除しきれていない。
「さて。本気の一撃を入れさせてもらおう。天翔鳳凰剣!」
実際には特殊効果など、異世界ではないから発生しないが、気分だけでもパワーアップは可能だ。
魔王ちゃんのビキニの紐を狙って剣をふるう。
「な、なにぃー。なぜ、勇者の必殺技を知っているのだ?」
おっ、隙ができたぞ。
単なるコケ脅しなんだが、妙に反応しやがった。
あっちの世界で魔王に最後に決めた技をイメージしただけあるな。
パラりとショッキングピンクのビキニの胸部分が外れかかる。
もちろん、在真はその瞬間を見落としたりしない。
「ラッキーーー」
「きゃあーーーー」
あれ?
何が起きたのか。
俺は病室で目を覚ました。
横のベッドには在真も寝ている。
「あ、目覚ましたわね、翔太さん」
「えっと、カスミ。どうなったのか?」
「ふたりは魔王ちゃんの叫びのすごさで失神したの。やりすぎよ。反省しなさい」
「むむむ。一番、いいところを覚えていないとは不覚だ」
まぁ、久しぶりに勇者ごっこは楽しかったから、良しとしよう。
後書きが思いつかないっ。普通におねだりしちゃおう。
ほら、ちょっとしたに、☆が5つならんでるでしょ。
そこのどれかをクリックして欲しいな。ちょんと。
すっごく簡単だから、やってみてね。