第102話 経済理論は政治理論を超えられるか
「大変です、総長!」
「なんだ? いつも、騒々しいな」
せっかく、朝のティータイムを楽しんでいたのにな。
この世界に来て、とにかく楽しいことが増えた。
朝のティータイムもそのひとつ。
今朝は、ロイズンのクッキーに、ミントジンジャーディ。
ぼどよい甘さは、ジンジャーの刺激が良く合う。
だけど、こいつの騒がしい「大変です」で、せっかくの雰囲気がぶち壊しだ。
「それが、分かったんですよ。総長ポーションの横流し先が」
「ほう。それなら関係した奴を処分すればいいぞ」
「まぁ、そうなんですが」
「何か? 我が直接手を下した方がいいというのか?」
見せしめは得意だぞ。
一応、世間じゃ人を殺しちゃいけないってルールがあるみたいだが、裏社会は通用しないぞ。
裏から裏にすべてを消し去るやり方なら、いくらでも用意できるが。
「そうじゃなくて、行先があまりに意外だったので連絡まで」
「ほう、それはどこだ?」
「バリ島です!」
「なに!? それは大変じゃないか」
「でしょう。だから最初から大変だって」
「すぐに行かないと駄目じゃないか」
「へっ?」
「何をしている! すぐに用意しろ」
「ちょっと待ってくださいよ。総長が行くんですか、バリ島に!」
「もちろんだ」
朝のティータイムを邪魔されたのはムカつくが、持ってきた情報はいい情報だ。
さすがに新宿中心の生活は飽きてきたとこだ。
大阪で勢力争いのドンパチを期待したんだが、関西勢が勝手に傘下に入ってしまったから、それもなくなった。
要は暇だったんだな。
ポーション研究もだいたい済んで、必要となりそうなレシピ集は完成しているしな。
きっとこのポーションレシピ集を商業出版したら100万部はいくと思うんだが、どうも周りが賛成しないようだ。
だから、暇していたときにバリ島だ。
エメラルドグリーンの海、ビーチチェア、トロピカルドリンク。
南の島でぼーっとする。
これはナイスなアイデアだ。
「総長がわざわざ出張らなくても……」
「うーむ、反対か」
「当たり前でしょう。必要ありません」
「なら、必要性をつくるまでだ。コスプレPVをつくるぞ」
「えっ、コスプレ? PV」
「そうだ。もっと我の影響力を広げるために、PVがいるだろう」
「バリ島で?」
「そうだ。ギリギリ小面積ビキニという秘密アイテムも投入するぞ」
「小面積ビキニ!」
うむ、やっぱり秘密アイテムの破壊力はすごいな。
この一言で、我のバリ島行きは決定した。
よーし、思いっきりバカンスを楽しむぞー。
☆ ☆ ☆
「大変です!」
「どうした? 翔太を攻撃する情報番組の視聴率があがらないのか?」
「いえ、逆です。それはうなぎ登りです!」
「やったじゃないか。初めの情報戦では私の勝利だな」
思い返せば、借金漬けになった最初の原因がマスコミを使った情報戦に負けたことだ。
情報を制するものがビジネスを制する。
情報戦をおろそかにしたのが前回の敗因だ。
今回はだから、情報戦にしっかりとした布陣をして、さらにタイミングを見て奇襲を仕掛けた。
「どうだ。私の作戦は完璧だっただろう?」
「それが視聴率はいいんですが、それ以上に奴らのサービスに対する登録者が増えてしまっていて」
「ちょっと、待て。どういうことだ」
「テレビでインドネシア全域に情報を広めたら、とんでもないコマーシャル効果がでてしまいまして」
「なんで、そんなことになるんだ。悪が作ったサービスだぞ」
「民衆は悪かどうかなんて気にしません! 便利かどうかです」
これだから、バカな民衆は困る。
日本もそうだが、インドネシアの民衆は本当に駄目な奴らだ。
「情報を止めることはできるな」
「できませんよ! うちらの息がかかった連中は止められますが、他の局とか、同じ局でも派閥が違うと制御不能です」
「おいまてよ。それじゃ、あいつらのサービスがインドネシア全域に広がるのをただ、見ていろというのか」
「もちろん、違います。日本の連中には考えつかない方法があります」
「なんだ、それは?」
「賄賂です! しかるべき部署にいる高官に賄賂で思い通りの規制をさせることがインドネシアではできるんです」
「それだ!」
まだまだ、だ。
いくら民衆に人気がでたところで、政府に否定されて公開をストップされたら、どうしようもなかろう。
「どのくらい使います? 賄賂に」
「一億円だ。アメリカからの支援をそのまま流せ」
「ええっー。全部ですか?」
「大丈夫だ。これだけ普及をし始めたサービスだ。アメリカに対する脅威は増したはずだ。支援の増額を交渉しろ」
「なるほど!」
頭がぐるぐると廻るな。
素晴らしいドラッグがあるものだ。
これで10倍希釈だというのだから驚きだ。
原液を飲んだらどれだけ素晴らしい効果を発揮してくれるのか。
「そのまま飲んだら駄目ですよ」と3回も言われたほど、すごい効果を保証されているものだ。
まだ、今の状況ならまだまだ、だが。
そのうち必要になったら、すぐに使ってやる。
翔太のような小心者にはできないことだろう。
最後に勝つのは私であることは、もう決まったようなものだな。
本編はいよいよ、バリ島決戦に向けて主要メンバーが集結中。(笑)
世の中はパンデミック宣言。
どっちも、従来の常識が通用しない世界に突入してきた。
そんなときに、使える考え方がある。
「お天道様が見ている」
他の誰も見ていないと思っても、お天道様は見ている。
これが日本古来からの考え方、なんだよね。
だから、あることをやるべきかどうか。
お天道様に聞いてみると、答えが出てくる。
それに反したことをした人って、今はネットでも叩かれているね。
意外とネットとお天道様は近いのかもしれないね。
だから、僕もお天道様にお願いしておこう。
お天道様、評価ポイントがたくさん入るように、楽しいお話を書き続けますので、よろしくです。