会社に……
ある大企業に勤める母親がいた。
彼女が帰宅すると、息子が駆け寄ってきた。
「おかえりなさい。お母さん」
「ただいま。はい、これ」彼女は息子に菓子の箱を手渡した。外国のものらしかった。
「わっ。ありがとう。どうしたの、これ」息子は喜んだが、入手先が気になり、尋ねる。
「会社にもらったのよ」なんとなしに、彼女は答えた。
翌日、彼女はまた仕事へ出かけた。
「ありがとうございました。息子も喜んでいましたよ」彼女は礼を言った。それを聞き、心なしか相手も喜んでいるような気がする。
帰り際、彼女は肩を叩かれた。「はい……あ、また下さるんですか。ありがとうございます」
飴をにぎった巨大な手が、ビルから伸びていた。




