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社畜さん、ヒモになる〜助けた少女は大富豪の令嬢だった〜  作者: 空野進
第二部

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5.

 うっ……体が動かない……。



 翌日、俺は全身の痛みで身動きが取れなくなってしまった。


 やはりたくさんの荷物を持ったからか……。

 それとも床で寝ていたからか……。



「す、すみません、私がベッドを使ってしまったせいで……」



 莉愛が申し訳なさそうに謝ってくる。

 顔を伏せて落ち込む莉愛に対して俺は彼女に近付いて頭を撫でる。

 すると莉愛は少し驚いていた。



「莉愛のせいじゃない。日頃の運動不足だな――」

「いえ、私のせいです。今度からは有場さんも一緒に寝てもらって大丈夫ですから」



 いやいや、そっちの方が問題あるだろう。

 ただ、莉愛の目は真剣そのもので断れるものでもなさそうだった。



「そ、そうだな……。まぁ考えておくよ」

「はい。何だったら今日からでも……」



 期待のこもった目で見てくる。

 ただ、俺は慌てて断っていた。



「いや、毎日はちょっとな……」

「そ、そうですね……。私も恥ずかしくて寝られないかもしれません……」



 莉愛は一緒に寝たところを想像して顔を赤らめながら俯いていた。



「と、とにかく動けないのなら前と同じように私がマッサージしますね」

「あぁ、お願いしても良いか?」



 なんとかクルッと回ってうつ伏せになると背中にちょっとした重さを感じる。

 そして、ゆっくり背中を押していってくれた。



「大丈夫ですか、有場さん。重たくないですか?」

「あぁ……、むしろ軽いくらいだな。もう少し食べた方が良いんじゃないか?」

「えっと、有場さんはもう少しぽっちゃりしてた方が好きなのですか? そ、それなら私、頑張ります!」

「いや、莉愛は今でも充分可愛いぞ。だから気にしなくてもいい」



 俺がそういった瞬間に莉愛の動きが止まる。



「そ、そんな、可愛いなんて……。あ、ありがとうございます……」



 今はその姿を見ることができないものの莉愛が真っ赤になっているのが想像できる。



「そ、それよりも有場さん、体の具合はいかがですか?」



 再び背中を押し始める莉愛。

 実際は痛いのは変わらないのだが、こうして莉愛にマッサージをしてもらうとよくなっているような気持ちになってくる。



「あぁ、動けるようになってきたな」

「それならよかったです」



 それから莉愛はしばらくマッサージをしてくれた。

 そのおかげで歩ける程度には回復していた。


 ◇


「今日はゆっくりしていてくださいね」



 それだけ言うと莉愛は自分の部屋へと戻っていった。

 その後に俺はベッドに戻り、体を休めていた。


 昨日莉愛が寝ていたからだろうか。なんだか俺の布団ではない、良い匂いがしている気がする。


 って、俺は変態か!


 思わずその場で身悶えてしまう。

 すると部屋のドアがノックされる。


 誰だ? 莉愛が戻ってきたのだろうか?



「えっと、どうぞ……」



 俺は体を起こすと中に入ってきたのは勇吾さんだった。



「やぁ、久しぶりだね、有場君」

「勇吾さん……、どうかしましたか?」

「いや、たいした用じゃないんだけどね。ただ、昨日莉愛と水着を買いに行ってきたと聞いてね。それなら力になれるかと思ったんだよ」

「どうしてそれを――」



 いや、あのショッピングモール自体が神楽坂が経営している場所か……。

 それなら勇吾さんの耳に入る可能性があるわけだ。



「理由がわかったようだね。それで君に新しくお願いがあってきたんだよ」

「お願い……ということは新しい仕事ですか?」

「まぁ、そう捉えてくれても構わないよ」



 つまり以前に遊園地に行ったものと同じ類か……。



「それでどんな内容ですか……」



 真剣な眼差しを向けてくる勇吾さんに思わず息を飲む。

 突然のその迫力……、もしかするとやる内容はとんでもなく大変なのかもしれない。



「あぁ、これはとてつもなく大変で難易度の高い仕事だ。有場君、君でも果たしてこなせるかどうか……」



 前置きをつけてくるくらいに難易度が高いものらしい。

 ただ、ここまで話されてすでに俺に拒否権はない。

 それならば早いうちに頷いておく方が後々の評価を考えると良かった。



「わかりました。是非やらせてください!」

「おぉ、有場君ならそう言ってくれると信じてたよ!」



 わかりやすく大げさに喜んで見せ、俺の手を掴んでくる。



「それで何をしたら良いのですか?」

「あぁ、そうだったね。有場君達は今度、海に行くんだろう?」

「えぇ、そのつもりですけど」

「そのときに写真を撮ってきて欲しいんだ。場所は私が新しく購入したプライベートビーチを手配してあるのだが、私自身はなかなか行く余裕がなくてね」



 見たこともない場所を購入したのか?

 いや、勇吾さん自身が行っていないと言うだけなのだろうな。



「それは周りにあるビーチとか施設を撮ってこればいいのですか?」

「いや、できれば莉愛をメインに……。いや、そうだな、そんな施設とかも撮ってきてくれて良いぞ」



 ……えっと、メインは莉愛を盗撮してこいってことか?

 さすがにそれは犯罪じゃないのか?



「いくら勇吾さんの頼みでも隠し撮りなんて……」

「い、いや、勘違いだ、それは。別に隠し撮りはしなくて良いんだ。ただ、最近私が忙しくて莉愛のアルバムの写真が少ないんだ。だから、それを撮ってほしいんだ――。思い出と言えば大丈夫だろう?」

「それは仕事とどんな関係が……」

「ほ、ほらっ、新しい施設で楽しむ様子がどんな感じなのか収めた写真は必要だろう、いろんな説得に。だ、だからそのついでに莉愛の写真も撮ってきてくれたらいいんだよ。頼んだよ」



 かなり無理やりこじつけてきている気もするが、仕事としても使うのなら仕方ないか……。

 さすがに隠し撮りはできないので莉愛の写真を撮るときは彼女の許可を得ないとだけど。



「はぁ……、わかりましたよ。それで写真はスマホで撮ったら良いのですか?」

「この一眼レフの――」



 勇吾さんがやたら高級そうなカメラを取り出してくる。

 ただ、そんなものを俺が使いこなせるはずもなかった。



「俺に使いこなせると思いますか?」



 すると勇吾さんは少しがっかりした様子でカメラをかたづける。



「まぁスマホで構わないよ。では、海に行くときはぜひ頼んだよ」



 それだけ言うと勇吾さんは部屋を出て行ってしまった。

 まぁ、思い出のために写真を撮るのは悪いことじゃないよな。

 そう言い聞かせて自分を納得させることにする。


 ◇


 そして、昼過ぎになる。

 ただ、やはり動くのがつらいのでベッドで寝ていると莉愛がお盆に料理を乗せて持ってきてくれる。



「大丈夫ですか、有場さん」

「もう大丈夫だ。ただそれは?」

「えぇ、有場さんのためにお昼ご飯を持ってきました」



 莉愛がテーブルにお盆を置く。

 皿の上には色取り取りのサンドイッチが並べられていた。

 よく見るとパンの形が不揃いなのは愛嬌だろうな。



「えっと、これは莉愛が?」

「はい、やっぱり少し不揃いですよね?」



 苦笑を浮かべる莉愛。

 いや、日に日に上手くなっていってるんだが――。



「いや、ここまで作れるなら充分だと思うぞ。早速頂かせて貰うな」

「はい……。いえ、有場さんはお疲れですから私が食べさせてあげますよ」

「そこまでは――」

「大丈夫です、私に任せてください!」



 サンドイッチを手に取ると莉愛がゆっくり俺の方へと近付いてくる。

 そして、口の前に差しだされる。



「では、あーん、をしてください」



 笑顔で言ってくる莉愛。

 さすがにこの状況で断れるはずもなく俺は口を開ける。



「あーん……」



 莉愛がゆっくり口にサンドイッチを運んでくれたので、俺は一口齧り付く。



「……うん、うまいな」

「本当ですか!?」

「あぁ、本当にうまいぞ。莉愛も食ってみるか?」



 先ほど食べたサンドイッチの残りを莉愛に差し出す。

 すると彼女は少し恥ずかしそうにしながらも口を開ける。



「あーん……」



 その口にサンドイッチを入れてあげると、莉愛がゆっくり噛み締めていた。



「本当ですね。とっても美味しく出来て良かったです……」



 安心した表情を見せてくる莉愛。

 それからしばらくは食べさせあう。

 そして、結局二人でサンドイッチは全部食べてしまった。


 ◇


「そういえば先ほどお父様が有場さんの部屋に来ていませんでした? ちょうど廊下ですれ違ったんですよ」



 食べた後の片付けをしながら莉愛が聞いてくる。



「あぁ、そうだな。ちょうど来てたぞ、海に行くときに写真を撮ってきて欲しいって言われたくらいだ」



 せっかくだから先ほど勇吾さんに頼まれたことを莉愛に話しておく。



「そうですね。記念に有場さんの写真を残しておきたいですからちょうど良いですね」



 莉愛がにっこり笑いながら言ってくる。

 いや、撮ってくれって頼まれているのは莉愛の写真なんだけどな……。


 まぁ本人が楽しそうならいいか。それに何か思い出を残すのも大切だろうし。



「でも、その前にお祭りがありますよ。有場さんも浴衣を着ていきますか?」

「いや、俺は普段着の格好で十分だ」

「……でも、せっかくですから有場さんも着てみましょうよ」

「さすがに浴衣は持っていないからな」



 苦笑を浮かべると莉愛がにっこり微笑んだ。



「大丈夫ですよ。もう準備してありますから」

「えっ?」



 いつの間に……。



「私も着ますのでせっかくですから有場さんも着ませんか?」

「まぁ既にあるのならいいかもな……」

「わかりました。では、準備しておきますね。有場さんとお揃い……ですね」



 莉愛が嬉しそうに微笑んでいた。



 ◇



 お祭りの当日、俺は目の前に置かれた浴衣とにらめっこをしていた。


 これってどうやって着るんだ?


 上に着て、ただ帯を巻くだけかと思ったが、いざ目の前に置かれると戸惑ってしまう。


 とりあえず着てみないことには始まらないか……。


 早速羽織ってみる。

 そして、帯を結んでみる。

 ただ、着替え終わった後のあまり自信がなかった。


 ……これでいいのか?

 わけもわからずにとりあえず着てみたが。



「有場さん、お着替えは終わりましたか?」



 莉愛が扉をノックして聞いてくる。



「えっと、これでいいと思うが……」

「何でしたら私が直してあげますよ」


 確かに莉愛に見て貰った方が良いだろうな。

 俺は莉愛を部屋に招き入れる。


 ドアを開けると莉愛は薄いピンク色の浴衣を着ていた。

 それが彼女にすごく似合っている。



「莉愛、すごく似合ってるぞ」

「あ、ありがとうございます……」



 莉愛は嬉しそうに微笑む。



「有場さんは……えっと、その……」



 今度は莉愛が俺の浴衣を見て褒めようとしてくれる。

 ただ、褒められずにはにかんでいた。



「どうかしたのか?」

「えっと、襟が逆……ですよ。帯もなんだか結び方が変ですし……」

「初めて着たからな」



 やはり着方が違ったようだ。

 莉愛が苦笑を浮かべる。



「大丈夫ですよ。私が直してあげますから……」



 莉愛が俺の帯に手をかける。

 ただ、帯を外したところで固まってしまう。


 俺の体を見て顔を真っ赤にしていた。



「そ、その……、少し照れてしまいますね……」



 恥ずかしそうな表情を見せてくる莉愛。

 むしろそんな風にジッと体を見られていると俺の方が恥ずかしくなってくる。


 お互いに顔を赤くしながら、莉愛は浴衣を整えてくれる。



「まずは襟を直して……、服と整えて……、あとは帯を……できました」



 莉愛のお陰でしっかりと浴衣を着ることができた。



「ありがとう」

「いえ……、その、とってもお似合いです……」



 莉愛が頬を染めたさながら答える。

 それがなんだかむず痒く感じ、俺は頭を掻く。



「それよりもそろそろ行くか」



 俺が手を差し出すと莉愛はそれを手に取る。



「はいっ!」



 笑顔を見せてくる莉愛。



 そんな彼女と二人、祭りが行われているという神社へと歩いて行く。

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