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社畜さん、ヒモになる〜助けた少女は大富豪の令嬢だった〜  作者: 空野進
第一部

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閑話 初給料の話(後編)

お待たせしました。

初給料の話、後編になります。

 翌日になり、俺は莉愛と二人で昨日訪ねた店へとやってきた。


 目的は当然のことながら莉愛とのペアリングを買うことだった。



「本当に良いんですよね?」



 莉愛がわくわくした様子で確認してくる。



「あぁ、ただ、できるだけ値段は――」



 莉愛基準で買われてしまうと全く金が足りない……なんてことが起こるかもしれない。



「大丈夫です、足りないときは……私が出します!」



 きっぱりと言い切ってくる莉愛。

 いや、それだと今回買ってあげる意味がないんだけど……。


 俺は苦笑しながらも莉愛と一緒に店の中に入っていく。



「うーん、いろんな種類がありますね。どれにしましょうか?」

「それより前に指のサイズを測ってもらった方が良いんじゃないか?」

「そうでした。ちょっと計ってもらいますね」



 莉愛が店員を呼び、指のサイズを測ってもらっている間に俺は店内を見て回る。


 指輪の値段を見ていたが下は安いものから、上はとても手に届かないようなものまでいろんな種類があった。


 さすがに高すぎるものを言われてしまうと俺の給料じゃとても足りない。



「お待たせしました。計ってもらいました」



 莉愛が嬉しそうに戻ってくる。



「どのサイズだった?」

「えっと、五号……でした」



 かなり小さいな……。いや、莉愛くらいだとこのくらいになるのが普通なのか?



「有場さんはどうですか?」

「俺か? 俺は十五号だったぞ?」



 前に買いに来たときに自分の分は計っていた。



「十号も差があるのですね……」



 莉愛がペタペタと俺の手を触っていた。



「それよりも肝心の指輪をどうするんだ?」

「あっ、忘れてました。でも、私もつけてて大丈夫で有場さんも困らないものって考えると――」



 莉愛が真剣に悩み、それでようやく指輪を決めたようだった。



「これがいいです!」



 莉愛が選んだものはシンプルな、装飾の少ないものだった。

 銀製品なので、それなりの値段はするもののそれでも手が届かないものではなかった。



「えっと、これでいいのか? 莉愛ならもっと装飾が付いてるようなものが良いんじゃないのか?」

「私の好み的にはそうなんですけど、でもあんまり派手なものは普段から使うには恥ずかしいですよ……。それに有場さんも同じものをつけるならこういうシンプルなものが一番ですよ」



 莉愛がにっこりと微笑んでくれる。

 確かに俺がつけるのならそのほうがいいか……。





 店員を呼び出すと莉愛が選んだものをペアで購入する。



「ペアリングなんですね。どうしますか、ここでつけて帰られますか?」



 店員が気を利かせてくれる。

 すると莉愛が目を輝かせながら頷いていた。



「もちろんです! あっ、よかったら有場さんがつけてくれませんか?」

「そのくらいだったら良いぞ」



 ただ、指輪をつけるだけだからな。

 そう思いながら莉愛の指輪に手をかけると彼女はそっと左手を差し出してくる。



「その……薬指で……おねがいします――」



 消えそうなほど小さい声で真っ赤になりながら頼んでくる。


 この指輪自体に特別な意味はないのだから、どこにつけても良いと思うんだけどな……。


 そんなことを思いながら莉愛の薬指に指輪をつけてあげる。


 すると彼女は嬉しそうに指輪をいろんな角度から眺めていた。



「それじゃあ次は俺のやつだな」



 自分で指輪を取ろうとすると莉愛が先に取ってしまう。



「もちろん有場さんの分は私がつけてあげますよ!」

「いや、そのくらい自分で……」

「私がつけます!!」



 有無を言わさない莉愛。

 ただ、つけるだけなのにな……。


 俺は莉愛の様子を見ながら苦笑をする。



「わかったよ。それじゃあよろしく頼む」

「はいっ、それじゃあ左手を出してください」



 莉愛が嬉しそうに言ってくるので、俺は言われたとおりに左手を出す。

 するとゆっくりと莉愛が薬指に指輪をはめてくる。


 そして、はめ終わるとにっこり微笑んでくる。



「おそろい……ですね」

「あぁ、そうだな」

「有場さん、本当にありがとうございます。こんなに嬉しいプレゼントは初めてです……」



 莉愛が満面の笑みを見せてくる。

 ここまで喜んでもらえると俺自身もプレゼントをしてよかったなと素直に思えてくる。



「これは……婚約……と思っても良いんですよね?」



 莉愛が小さな声で呟いてくる。

 いやいや、気が早いぞ……。ただの初任給のプレゼントだ……、と思ったが莉愛が嬉しそうだったので、それ以上俺は何も言わなかった。

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