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第30話 アジトへ


 これはほんの数十時間前の話になる。

 学園の方針に不信感を感じた白峰さんたちは、真相を暴くべく行動をしていた。

 白峰さんの巧みな潜入術によってラグーンズの研究所に潜入することができたのだが、途中で防犯センサーに引っかかってしまい拘束された。


 だが、その時の正の咄嗟の神判断でなんとかその場を切り抜けられたらしい。

 まぁその時に研究所から学生特定の依頼が学園へ舞い込んだらしく、当然のごとく立ち入り厳禁の場所に無断侵入したことを罪に問われ、処刑対象って扱いになったわけだ。


「というわけで今の俺たちもお前と立場が一緒ってわけだ」

「都合がいいわ。その分大胆に調査ができるんですもの」


 この二人のメンタルは一体どうなっているのだろうか。

 ここまで堂々とできる正も大概だが、このチャンスを活かすような口ぶりをする白峰さんの考え方には何か強いものを感じた。


 まぁ、一つ分かったのはみんなも危険な状態だということだ。

 とりあえず俺はKDを呼ぶことにした。


 彼女たちが作戦に参加してくれたら大きな戦力となる。

 こちらとしても都合が良かった。

 KDが俺の父親だということはみんなには知らせていない。


 ただ心強い協力者という位置づけのため、俺の父ではなくKDと呼ぶことにした。

 KDはすぐに来た。


「協力してくれるという人はここにいるのか?」

「ああ、部屋にいる。でも一つ約束してほしい」


 俺は自分が金山剣人の実の父であるという真実は隠しておいてほしいということと職業はごく普通のサラリーマンという設定にしてほしいということを伝えた。


「分かった。彼らは月花学園の生徒なのかい?」

「うん、学友。みんな頼りになる人たちだよ」

「それなら心強いな」


 KDを部屋に案内する。


「みんなお待たせ。この人が協力者のKDさんだ」

「やぁ皆さん、初めまして」


 すると三人はいきなり立ち上がり、


「初めまして、白峰 夕と申します。この度は協力のほど感謝いたします」

「時宗 正です。お願いします!」

「星宮 芽久と言います。お願いいたします」

「KDだ。よろしく」


 こういう時は三人ともさすがだなと思う所がある。

 いつも調子がいい正も目上の相手にはしっかりと礼節を忘れない。白峰さんと星宮さんは性格のままって感じだ。


「さて……ということで早速本題に入ってもいいかな?」

「はい。お願いします」

「よし! では君たちに『ジャイアント・キリング』作戦を伝えよう」


 しばらくして作戦内容を全て伝えられた。


「分かったか? 決行は六日後だ。場所はそうだな……」

「学園前でいいじゃないか? 集合するには分かりやすいだろ」

「ああ、そうだな。じゃあ学園前に集合してほしい」

「分かりました。えっと……KDさん?」

「言いにくかったらダイスケと呼んでくれ」

「分かりました。ダイスケさん」

「それにしても剣人。お前、あの研究所に潜ったってのは本当なのか?」

「ああ、忘れられないよ。あんなの見せられたら」

「人の生命を使ってエネルギーを作るヒューマンレティクルという技術……でも一体それを何に使おうとしているんだ?」

「とうさ……KDが言うには兵器開発だそうだ」

「政府がこのことを感知できないのは地上の政府関係者に情報が洩れていないからということかな」

「その通りだよ星宮さん。だからこそ計画が進行する前に叩きたい」

「なるほどな。そりゃ阻止しないと大変なことになるな」

「でもとりあえず此処から移動しないと話にならないわ。明朝には研究所から使いが派遣されてくる」

「うむ。ではまずは私たちのアジトに招待しよう」


 時刻は深夜11時。

 俺たちは学園のマンションを後にし、KDのアジトへと向かった。

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