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第2話 月花学園


 俺の名前は金山剣人。十五歳の新高校一年生だ。この春から月花学園に入学する。

 入学式当日、俺はいきなり初めての体験をした。それは異性の同級生と一緒に登校すること。


 しかも超絶な美少女だ。


 いままでの俺には無縁の話だった。

 だから最初は色々あったけど、これからうまくいきそうだとそう思えるようになった。


 なのに……


 ♦


「――新入生の諸君、ご入学おめでとう」


 こう話すのは月花学園の学園長だ。どうやら学園長自体も国のお偉いさんらしい。

 いい感じに生えそろったチョビ髭が印象的な人だった。


「――えー、そもそも種の起源と申しますのは……」


(な、長い……)

 

 しかも立たされながら聞いているため余計苦痛だった。

 内心、早く終わらないかなと言ったところ。


 ま、学園あるあると言った典型的な校長先生だった。


「――以上で、私からの祝辞とさせていただきます」


(や、やっと終わったぁ……)


 地球の起源から始まる長々とした話を聞いた後、入学式は無事に終了した。

  

 その後、俺たちは各クラスの教室へと導かれ、いよいよクラスメートとご対面する。


「あなた、私と同じクラスなのね。これからよろしくね」


 突然話しかけてくる美少女が一人。

 登校途中で出会った白峰夕だ。


 クラスは一年×(ばつ)組。何と俺と同じクラスだったという事実。


「こちらこそよろしく! いやあ偶然だね!」


 気が付けば俺も口調が友達と話すような砕けた口調になっていた。


(こんな美少女と友達感覚で話すなんて夢みたいだ……)


「おいお前ら。さっさと席につけ!」


 一人の女性の声がクラス中に響き渡った。


 皆、颯爽と席に着く。


「これからお前たちのクラス担任を務めることになった福園(ふくぞの)だ。まだまだ未熟なお前らに教育を施し、国を背負える能力を持った社会人にすることが私の仕事だ。容赦なく教育していくつもりだから覚悟しておけ」


 ものすごい覇気のある教師だ。


 何かに例えると―――金剛力士像みたいな迫力があるというべきか。


「あらかじめ言っておくが、お前達×組は入学試験合格者の中では一番低い連中を集めた落ちこぼれクラスだ。お前たちには特に厳しい教育をしていく。心しておけ!」


 力強く、芯のある声が教室中に響き渡る。


 すると近くに座っていた白峰さんが小声で、


「この私が落ちこぼれ……?」


 なにやら信じられない様子だった。


 福園が話す。


「さて……本題に入るが、その前に、改めて入学おめでとう。歓迎する。この学園の要項は既にパンフレットを見て知っていることだろうが、もう一度説明する」

「パンフレット? そういえばそんなものがあったような」


 あの時は色々混乱していてパンフレットなんて見ている余裕がなかった。

 すると福園が淡々と話し始めた。


「この学園は日本で初の人工知能により人をより高度な人種へと変えるべく作られた更生人工プログラム『アイリスプログラム』を実験的に導入している。学園内では、様々な事象全てがこのプログラムによって管理されている」


 さらに福園はまるで流れる滝のように話しを続ける。


「そして基準となるのがお前たちに支給した電子端末型の学生証に書いてある『APアイリスポイント』というものだ」


 皆、一斉に電子学生証を開く。


「いまはポイントが入ってはいないが、試験や行事貢献など様々な所でプラスになる働きをするとポイントが1APずつ増えていく。逆にマイナスの行為に働けば、どんな理由があろうがプログラムの独断と偏見でポイントが減っていく」


 さらに福園は付け加える。


「そのポイントはいわばお前たちの人間としての価値を示すものだ。ポイントが低ければ低いほど人間として終わっているということだな。どうだ、分かりやすいだろう?」

「怖いこというなあ……」


 俺は息を呑みながら、先の学園生活に不安ばかりが残った。


「ちなみに言っておくが、学年末には毎回ポイント決算というものがある。もしそこで規定数以上のポイントが取れない場合は……」


 教室が沈黙の渦に飲まれた。そして福園が笑みを浮かべながら、


()()()()()()


 ……え?


 唖然として言葉も出ない。周りもざわつき始め、混乱しているようだ。


「これが証拠だ」


 といって見せたものはポイントを獲得できなかった生徒が次々と研究所施設内で処刑されている一部始終を収めたものだった。


 福園は続ける。


「ポイントがマイナスになった場合も同様の扱いになる。この学園を無事に卒業したければ、ポイントを取り続けることだな」

「嘘だろ……」

「そんなの聞いてねえよ……」


 あちらこちらでクラスメートたちが騒ぎ始めた。俺は驚きのあまり声すら出なかった。

 すると福園が話しを付けたす。


「しかし我々も鬼ではない。お前たち新入生には入学祝いとして100APを贈呈した。これを活かすも殺すもお前たち次第だ」


 確かにもう一度学生証をみてみるとAPの欄に100という数字が刻まれていた。


 そういうと一人の男子生徒が怒号するような口調で話した。


「おい、てめえ聞いてねえぞ。んなこと! こんな殺人学園に通えるか! 俺は今すぐでもやめてやる」

「そうだ! こんなところ通えるか!」


 周りの生徒たち数名もそれに賛同した。


 だが福園は不敵な笑みを浮かべてこう話した。


「残念だが、それは無理な話だ。一度入学を許し、同意を得た場合は一切の退学もそれに準拠することも許されない。お前たちがこの場を抜け出すにはこの学園で結果を残し、無事に卒業することだ。それに見てみろ。お前たちの学生証に刻まれたAPを。特に赤城(あかぎ)、お前が一番知るべき現実だ」


 そういうと文句をつけた複数人の生徒たちが自分の学生端末を一斉に見た。


 すると、一気に彼らの顔色が変わった。


 一番驚いているのは、先ほど真っ先に喧嘩を売った赤城という人だ。


「減っている……半分も……」


 他の文句を言った人たちもAPを減らされているようだ。


 すると福園が、


「お前らは不適切な発言によって10APから最大50AP減らされたはずだ。この学園で一番ポイントを減らすことになる原因は発言だ。他人への悪口や学校の方針そのものに背く生徒は容赦なく大量減額の対象になる。そのことをよく考えてから発言するのだな」


 すると文句いっていた生徒たちが一気に静かになった。


 俺とて例外ではない。静かに装っているが、かなり動揺している。今すぐにでも逃げ出したいくらいだった。


「もう一度言う。お前らがここから出るにはAPを規定数以上取り、卒業することだ。それ以外で出られる方法は処刑されて、墓場に行くぐらいだ。それと、学園内だけがプログラムの範囲内だとは思うなよ? この学園都市は全ての施設でアイリスプログラムとリンクしている。学園内だろうが外だろうが問題を起こせばポイント減点の対象になる。覚えておけ」


(普段の生活にもポイントが反映されるのか……)


 ただし、テスト以外でのポイント評価は学年末に行われるポイント決算で告示されるらしい。


 そしてこの騒ぎに呼応するかのように静寂とした教室内にチャイムが響り響いた。


「以上でホームルームを終わる。これからの君たちの成長に期待する」

 

 福園はそれだけ言い残すと、教室を出ていった。

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