第9話 決意
三日目の朝を迎えた。
俺はいつものようにシャワーを浴びて、熱々のコーヒーを飲みながら朝ごはんを食べていた。
そして余裕を持って学校へと出発する。
いつものように授業を受け、今日も変わった出来事は特になく放課後になった。
「……よし、問題はここからだな」
向郷会長との約束は三日後の放課後に生徒会室まで来いとのことだった。
俺は放課後になった瞬間にすぐさま生徒会室へ向かった。
「はあ……緊張する」
俺は生徒会室の入り口の前で息を整えていた。
此処に立つだけで緊張感が増していくのが分かる。
心臓の鼓動がいつもよりツーテンポほど速かった。
なんせ学園の中でも選りすぐりのエリートがここに集結し、そのエリート集団の一員にならないかだなんて言われ、その決断を今からしようというのだ。
緊張するなという方が無理である。
「すーはーすーはー……よし!」
バッチリと息を整え、俺は生徒会室のドアノブに触れる。
と、その時だった。
「あれ。君、こんなところでなにをやっているんだい?」
背後から聞こえてくる聞き覚えのない男の声。
その声に反応し、すぐに後ろを向くとそこには長身で眼鏡をかけたイケメンが立っていた。
「あ! いえ、俺は決して怪しい者なんかじゃ……」
すぐに弁解。とりあえず、自分は怪しくないという主張を必死に伝える。
すると長身の男は優しい声で、
「生徒会になにか用かな? 差し支えなければ僕が変わりに聞くけど……」
「いえ、俺は生徒会長に呼ばれてて……」
「あ、君が例の候補生だね。なら中で待っているといいよ。すぐにお茶を入れるね」
そう言って長身のイケメンに導かれ、生徒会室に入った。
どうやらこの人には俺が此処に来ることを知っていたようだった。
「どこでもいいから座って」
「あ、はい。失礼します」
周りを一通り見た感じ、まだ会長は来ていないようだった。
「粗茶ですが」
「い、いえお構いなく」
礼儀を弁えた丁寧な対応で接待してくる。
にしても近くで見るとよりイケメンなのがよく分かる。
男の俺でもカッコイイと思うくらいだった。
「そういえば自己紹介がまだだったね。僕は國松 彰吾、二年で生徒会副会長をしているんだ。宜しくね」
「金山剣人です。宜しくお願いします」
そのイケメンな男子生徒は副会長だった。
容姿端麗で礼儀も良い好青年という感じでこの生徒会役員としてこれほど適任な人はいないだろうというレベルだった。
(俺はこんな人と肩を並べて仕事しなきゃならないのか)
こう思っているとばたんと扉が開いて、
「おう。もうきていたのか。國松も一緒か」
向郷会長が入ってきた。
「お久しぶりです。会長」
「久しぶりだな國松。研究はどうだった?」
「まあぼちぼちって感じです」
「あの……研究ってなんですか?」
俺が向郷会長に聞く。
「國松はここの学園生でありながら、研究者でもあるんだ」
「け、研究者!?」
驚いた俺に國松さんが、
「まだまだ駆け出しの研究者だけどね」
(現役高校生で研究者ってどんなステータスだよ!)
さすがエリート学園の生徒会。普通ではなかった。
俺は気になって質問をしてみることに。
「國松副会長はどのような研究をされているんですか?」
「僕は地理学の研究を主にしているんだ。地層とか地殻とかの調査とかね。この地下施設でしかできない研究もあるから楽しいよ」
「すごいですね。同じ高校生とは思えないです」
すると向郷会長が、
「普段はこんな感じの頼りがいのない冴えない男だがな。研究になると人が変わる」
「あはは。中々ひどい言われ様ですね」
國松さんが苦笑いをする。
その二人の姿を見て、サバサバしている会長とほんわかしている副会長だからこそ調和がとれているのかなと思った。
すると会長があの話を切り出してきた。
「ところで、金山。例の話の目処は立ったのか?」
「はい。今日はそれを伝えに来ました」
「そうか。それでどうするんだ?」
俺はあの時からずっと考えていた。
今の俺にとって最善な行動を。
俺はなぜここにいるのか? ここは何のための場所なのか。
俺はとにかく真実が知りたかった。
考えた結果、この学園を知るためには結論は一つしかなかった。
「はい。ぜひお願いします! 俺を生徒会に入れてください!」
すると会長は真剣な顔つきで問い返した。
「それがお前の答えなんだな?」
「はい。そうです」
そう答えると、会長は少しだけ笑みを浮かべてこう言った。
「わかった。お前をこの生徒会メンバーに加えよう」
そういうと國松さんも祝福してくれた。
「ようこそ、生徒会へ! 歓迎するよ。金山君」
「お前にはこれから我が生徒会の書記として働いてもらう。シンプルな仕事が多いが、責任感を持ってやらなければならない仕事ばかりだ。心しておけよ」
「は、はい! 頑張ります!」
今日この日、金山剣人は生徒会に入ることとなった。
全てはこの学園の本性を知るために……




