First impression
「あの・・」
「はい?」
「あの・・450円分の定額小為替が欲しいんですけど・・」
「ああ、それでしたら貯金の窓口ですので、受付番号が書かれたレシートを受け取ってお待ちください。」
慎吾は言われるがまま、近くの発券機からレシートを受け取り、不安気な面持ちで自分の番号が呼ばれるのを待っていた。
「248番の方」
窓口担当者の発した音、窓口上に設置された電光掲示板の番号、そして自身が持っているレシートの番号が一致したことを確認し、窓口へ向かう。
「あの・・」
「はい?」
「あの・・450円分の定額小為替が欲しいんですけど・・」
担当者が用紙を取り出し、金額を記入した。
「それでは、手数料が100円かかりますので、550円頂戴いたします。」
手数料がかかるとは想定外だったが、まあ仕方ないかと自分を納得させ、財布から1000円を取り出す。
お釣りと定額小為替証書を受け取り、証書を手に持っている封筒に入れてそのまま郵便の窓口に提出すれば本日の任務は終了だ。
長かった。いや、工程的には大したことはないのだが、少々面倒くさくなってしまった。
封筒の中に免許証のコピーを入れる必要があったのだが、今の住居に引っ越した際、免許証の住所変更をしていなかったのである。
別に免許証ではなくても保険証のコピーでもよかったのだが、今日はせっかくの平日ということもあり、土日は警察署の窓口が開いていないので、この際、免許証の住所変更手続きをしようと思い立ったわけである。
住所変更には住民票が必要なため、今日は朝から区役所で住民票をもらい、警察署で免許証の住所変更をし、近くのコンビニで免許証のコピーを取り、そして今に至る。しかも、区役所と警察署が地味に距離があったことも面倒くさくなってしまった一つの要因だ。
封筒には「岐阜県郡上市役所総務部市民課宛」とでかでかと書かれている。大学進学以降、手書きで文字を綴るという行為が極端に減った人間らしい歪さがこれでもかというくらい表現されていて、慎吾はそれが少し恥ずかしいと思った。
やはりこんな面倒くさいことをせずに、最初から母にお願いするべきだっただろうか。
そんなことを思いながら封筒を郵便窓口に提出し、切手代82円を支払った。先ほど定額小為替を購入した時にもらったお釣りの中から100円を使ったので、また小銭が増えてしまった。財布が重たくなっていくのを感じる。
この封筒が宛先である岐阜県郡上市役所に届くまで、だいたい2日くらいだろうか。それとも明日にはもう届くのだろうか。普通郵便の配達日数は具体的にどれくらいなのだろう。タイミングによっては速達と普通郵便の配送時間は同じになることもあるとテレビで見た記憶があるのだが。
まあどっちにしろ今週中には戸籍謄本が家に届くだろう。
書類に不備がないことを祈り、慎吾は郵便局を後にした。