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精霊さんが強すぎる!  作者: 純恋
3/5

第2話 異世界転生




ゆらゆら …… ふわふわ……



雪乃は無音の暗闇を一人彷徨っていた。


終わりの見えない闇をひたすら漂う。

……ふと、遠くに光の点が見えたような気がした。


(あっちのほうに行かなきゃ)


雪乃の意識はふわふわと漂いながら、

吸い寄せられるように点に向かって進んで行く。


急げ、急げ。


光の点の先から溢れ出る暖かさと明るさに、雪乃はひどく懐かしさを感じて恋しくなった。


(私は絶対にあそこに行かなければいけない)


あの光が消えてしまう前に。



点に近づくにつれ、光との距離は縮まり、それは強く大きく輝き出す。


暗闇を塗り潰す強烈なその光は、雪乃を呑み込み、耐え難い眩しさと熱さを与えた。



……光の先に誰かが立っているのが見えた。



『其方の強き意志、見事。

異界に再び生を授けん_______』



身を焼き尽くすような光に耐えられなくなった雪乃の意識は、再び浮上し始める……。





°○*°○*°○*°○*°○*°○*°○*°○*°○*°○*





雪乃は見知らぬ森で目を覚ました。

まだ頭がぼーっとして上手く考えられない。


そんな中、最初に雪乃が感じたのは戦慄だった。

顔が徐々に強張っていき、脳が覚醒してゆく。


雪乃の頭には、先程体験した死の記憶がこびりついていた。

あのときの記憶は、今でもはっきりと思い出すことができる。


強い衝撃が走る

瞬間、鋭い痛み

惨めな自分

最後に見た血染めの桜

失われてゆく体温


そして……死。


思い出せば思い出すほど記憶は鮮明に映りだし、

心臓が早鐘を鳴らす。

全身から汗が吹き出す。

指先が氷のように冷え、上手く動かせない。

雪乃の心と比例するかのように、震えは収まりそうになかった。



怖かった。すごく、怖かった。

そして悔しかった。



嫌だ、嫌だ、嫌だ。

もう二度とあんな体験はしたくない。





________死にたくない。




柔らかな光に照らされて生き生きと輝く草花。

鳥たちが楽しそうにさえずっている声。

そよ風が吹き、さらさらと葉が擦れ合う音。


____その光も、声も、葉の音も。

今の雪乃には鬱陶しく感じるだけ。



雪乃が座り込んでいる所、

それは複雑に木々が絡み合う鬱蒼とした森の中、

ぽっかりと穴が空いたように、全く木々が生えていない場所。

この世のものとは思えない、幻想的で美しい場所だった。


しかし、その奇跡のような風景にも、雪乃の心は動かない。


いつもならば、自然が好きな雪乃がこの景色を見た瞬間、飛び上がって喜ぶことは容易に想像できる。しかし、このときの雪乃は全てが皮肉に感じたのだ。



……ここが何処かなどはどうでもいい。

たとえここが夢の中だろうが異世界だろうが、はたまた天国だとしても、やる事はただひとつ。




「もうあんな思いはしたくない……っ」



雪乃は拳を小さく握りしめ、強く心に誓った。







_____そんな雪乃を、茂みの陰から優しく見守る、淡色の小さな光の玉がひとつ。



雪乃は気づかない

否、気づけない








今の雪乃には、見えるはずもないのだから。








ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

ブックマークや感想もとても励みになります!

初めて見た瞬間は興奮が抑えられませんでした笑

良ければまた次回も読んでいただけると嬉しいです。


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