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精霊さんが強すぎる!  作者: 純恋
2/5

第1話 白と桜と紅と



……キーンコーンカーンコーン____



「やっと終わったー!」

いち早く学校から出てきた少女の顔は、教室に居た時とはまるで別人のようで、珍しく年相応に子供っぽく晴れ渡っていた。



しかし、それは続かなかった。

少女の顔に再び影が差す。


なぜなら少女には悩み事があるからだ。


中学に入ってから1ヶ月が過ぎようとしている。

しかし、少女は未だに学校に馴染めていない。


髪を人差し指に絡ませながら、ひとり物憂げな表情で桜並木の道を歩く。そんな少女の髪に一枚の薄桃色の花びらが落ちた。


透き通るような白い肌、

ほんのりと色づいた淡い唇、

春風に揺れて光を反射する美しい白髪、

そして、深海を閉じ込めたような蒼い瞳。


目が醒めるような純白の美少女。それは少女の人見知りと相まって、近寄り難いものを感じさせた。

そう、少女____神無月 雪乃は、アルビノだ。





°○*°○*°○*°○*°○*°○*°○*°○*°○*°○*




その日も雪乃はいつものように桜の絨毯の上を歩いていた。

上を見上げると、昨日までの雨が嘘のように感じるほどの、吸い込まれそうな清々しい青空が広がっている。快晴だ。


いつの間にか桜もほとんど散ってしまい、青々をした葉が顔を覗かせつつあった。

空気もすっかり様変わりして、初夏の独特の蒸し暑さが雪乃にまとわりつき、雪乃は思わず顔をしかめた。

……ああ、夏がやってくる。


だが、雪乃にはまだ友達が出来ていなかった。

半ば友達の存在を諦めつつ、ひとりぼんやりと景色を眺めて歩いていた。


(私は夏が嫌いだ。

虫が多いし、何より長袖を着るのが嫌だ。

だからといって、日焼けするのはもっと嫌だ。

でも……出来ることなら太陽が照りつける真夏の海で友達と泳いでみたい。)

しかしそれは叶わない夢。

雪乃は何度も自分の体質を呪った。


本当は分かっている。

いつも体質のせいにして、自分自身と向き合うことを拒絶する弱い自分が惨めで惨めで、涙がこみ上げてきた。

雪乃は立ち止まり、天を仰ぐ。

ひと粒の雫が頬を伝って流れ落ちていく。










突如、雪乃の身体に強い衝撃が走った____。





何が起こったのか、気づけば雪乃は踏み潰された花弁の海に身を投げ出していた。

一瞬のことで、雪乃は理解ができず、ただ目の前にある、散った桜の花びらを呆然と見ていた。


視界の隅に黒い車体が映る。

どうやらあれに轢かれたらしい。


地面の桜が、雪乃の紅に染まっていく。

失われてゆく体温が、嫌でも自分が確実に死に向かっていることを実感させられる。


……家族で色々な所に旅行に行った。

小学校の頃は、数少ない友達もいた。

皆は今頃どうしているだろうか。

今までの思い出が走馬灯のように、目の前にぼんやりと映り出す。


意識が遠のいていく中、雪乃は思った。

(次に生まれ変わるなら、普通の女の子になりたい)


血に染まった桜の下、雪乃は静かに息を引き取った。














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