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異世界チート  作者: 瀬戸 生駒
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異世界でチートすぎた話

この世界では、人は1つの「スキル」を持つ。

幸運にもそのスキルに気がつけた私は、ぐんぐんのし上がった。

100戦全勝、何も怖い物はない。


そして、101勝目が確定した。

 この世界では、人間は必ず1つの「スキル」を持って生まれてくる。

 だが、少なくない人間はスキルに気がつかないまま一生を終えるし、そのスキルと職業が適合するとは限らない。


 手のひらが触れた部分のケガを一瞬で完治させられるスキルを持つ者は、医者として重宝される。

 ただし、切断された指はもう生えてこないし、死者を生き返らせる事もできない。

 逆に、死者を数分間蘇生させられるスキルを持つ者もいる。

 殺人事件の被害者に、自分を殺した犯人を自白させることができるのだから、捜査員としては最高だろう。

 もっとも、数分後には再び死の苦しみを与えるので、自らもメンタルを病む者が多い危険なスキルでもある。


 私のスキルは「未来予知」だ。

 1時間後に起こることを「見る」事ができる。

 というと事故の予防に役立ちそうだが、見たことは必ず起こる。

 どんなに対策を講じたところで、結果は変わらない。


 あまり役に立たなそうに見えて、使い方次第ではとてもありがたいスキルだ。

 サイコロの出目が100%あてられるのだから、バクチでは必勝だ。


 このスキルを活かせる職業として私が選んだのが「博徒」、つまりヤクザだ。

 いや。気がついたらヤクザになっていたと言うべきか。

 宝くじや株で一山当てられればと考えたが、宝くじは当選番号発表の2週間前には終売になっているし、ストップ安が続いている株に売りを重ねたところで、さして儲けは出ない。

 その点、バクチはスキルに合っていた。

 万馬券を1点で当てられるのだ。

 とはいえ、1万円が100万円になるだけでしかない。

 もっと割のいいレートの高い賭場を探すうち、いつの間にか博徒になっていた。


 もちろん、バクチは勝ち続けた。

 が、私はこのスキルに別の使い方があることに気がついた。

 対立抗争中の組幹部に隙ができるのも「見える」。

 そのタイミングを狙って若い衆を走らせれば、高確率でタマがとれる。

 いつの間には私は、私自身は全く手を汚すこともなく「凄腕」と呼ばれるようになっていた。


 正業を持たずシノギはバクチ1本、反目する相手には鉄砲玉。

 昔気質の極道として他の組の親分衆にもかわいがられ、襟のバッジは金色になった。


 緑色のテーブルに着く。

 マンションの高層階だが、ほとんど調度類は置いていない。

 12畳ほどの部屋の中心に四角いテーブルがあり、4人が座る。

 それを囲むように、10人ほどの男達が眺めている。

 組の息のかかったマンション麻雀だ。

 千点棒1本が100万円というレートだが、すでに私の勝ちは「見えて」いる。

 と。「白」をツモってきた。

 トイメンは「發」と「中」を鳴いて、大三元が見えている。

「白」は超危険牌だが、私は無造作にツモ切った。

 トイメンの動きはわかっている。この牌が当たることはない。

 それでも、つい「見て」しまった。


 ……?

 シャンデリアが見えた。

 つい最近、どこかで見た記憶があるようなないような。

 もっとも、私は表現によっては4つの目で見ているようなもので、目にする情報量は常人の数倍にもなる。

 うっかり視線のどこかをかすめたノイズか。

 覚えていないということは、さして重要でもない情報だろう。


「ポ……ポン!」

 トイメンが鳴く。

 大三元確定、ツモられても私の責任払いになる。

 が、私に動揺はない。

 トイメンが入れ替わりに切り出した牌から指を放すと同時に、捨て牌を見ることもなく、ぱたりと手を開いた。

指の下からあらわれたのは「西」。

「ロン。小四喜。48000の3本場は48900点だ。トビか?」

 相手に役満を確定させておいて、自分が役満をあがる。

 卓を囲んで外馬を決めていた親分衆から感嘆の声が漏れた。

「さすがにカシラの麻雀は華があるな」

「馬は負けたが不思議と悔しくない。いい物を見せてもらった」


 口々に上がる声を遮って、私は言葉を重ねた。

「トビか?」

 卓の引き出しを開くが、点棒が残っているはずはない。

 誰が何点持っているか把握しておくのは、麻雀の初歩の初歩だ。


 トイメンが卓の上に出したのは、点棒ではなく、グリップに大きな星の刻印があるトカレフだった。

「足りねえよ。そいつは50万がいいところだ」

 笑う私に向けてトイメンの腕が上がり、銃口がこちらを向く。


 え?


 ぱん! ぱん! ぱん!


 それっきり、音が消えた。

 だんだん狭く、暗くなっていく視界の中央に、あのシャンデリアが光っている。

 手も足も、指1本動かない。

 ただ椅子に身体を預けてもたれかけ、首をそらして天井の1点だけを見ていた。


 1時間後を「見て」みる。


 やはりシャンデリアが灯っていた。

おつきあいありがとうございました。

麻雀の役など、興味のない方にはわかりづらい表記がありますが、ご容赦ください。


誤字脱字など気がつかれましたら、ご指摘ください。

すみやかに訂正致します。

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