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短編

【お試し短編】身代わりで呪いを掛けられたら、女の子になった件

作者: カズキ

四話分を短編としてまとめたものになります。

コツコツ書きためたものですが、なかなか進まなくなり、供養も兼ねて投稿します。よろしくお願いします。

1 

 

 その日、とある貴族の屋敷は騒がしかった。

 まだ幼いが跡継ぎであるその家の長男が、呪いで倒れたのだ。

 すぐに懇意にしている宮廷魔術師を呼びつけ見せたところ、この呪いは命に関わるものだとわかった。

 呪いを解く方法は一つ。

 誰かに移せば良い。それも血の繋がった身内でなければならない。

 その話を聞いたとき、父親であり貴族であるその男は、以前遊びで手を付けた女のことを思い出した。

 女は未婚のまま男の子供を身籠り、産んだ。

 その後は適当に金を渡して、これまた適当な家に放り込んである。

 あれから約十年。死んだという報告は無いので母子共に生きているはずだった。

 正妻や愛人との子供は可愛いが、一時の遊びでしかない女の子供に愛着などあるわけはなく。面倒なことにならないよう、家と金を与えたに過ぎない。

 逆に言えば、今まで生活を保護してやっていたのだ。

 あの女とその子供は、その恩を返すべきである。

 そう男は考えた。

 代々男の家に仕える、屈強な男達に女が勝手に産んだ子供を連れてくるよう指示を出した。

 連れてこられたのは、黒髪に黒い目の、賤しいどこにでもいる庶民の子供だ。

 この子供に自分の血をわけたかと思うと虫酸が走った。

 若かったとはいえ、遊びすぎた。そう後悔したのも今は良い思い出である。

 こうして、思いもかけない所で役にたつこともあるのだから。

 可愛い息子のため、男は躊躇いなくその子供を、長男と同じ自分の息子であるその子を犠牲にすることを選んだ。


 嫌がる子供を宮廷魔術師の指示に従って、逃げないよう魔方陣の中心に置くと殴って動きを止めた所で、鎖で手足を縛り上げる。

 その横には同じように別の魔方陣が描かれていて、苦しそうに悶えている長男が寝かされていた。

 尚もバタバタと体を芋虫のように、動かして逃げようとする子供の腹を強く蹴った。

 骨が折れる音と同時に、今度こそ子供は動かなくなる。


 「公爵様。死なれては、儀式になりません」


 嗜める宮廷魔術師の魔術師の言葉に、公爵は慌てて今蹴ったばかりの子供の様子を確認した。

 息はしている。

 まだ生きている。

 その事に、ホッと息を吐く。

 

 「まだ息がある。今のうちに早くしろ!」


 「では、魔方陣から出てください」


 そうして、その儀式は始まった。

 宮廷魔術師が呪文を唱えると同時に、二つの魔方陣が淡く光出す。

 最初に変化があったのは長男の方だ。

 長男の体から、黒い靄のようなものが出てきたのだ。

 その靄は呪いが可視化したものであった。

 その靄は、ゆっくりと空中を漂いながら新しい呪いの受け皿である、実の親に蹴られ骨を折った子供の方へ向かう。

 そして、少年のところまでたどり着いた靄は子供の中に吸い込まれていった。

 続いて第二の変化が訪れた。

 呪いの受け皿となった子供が光に包まれたかと思うと、絶叫を上げ始めたのだ。

 血をはきそうなほどの叫びと共に、子供の体が明滅しやがておさまると、その変化が訪れる。

 髪が雪のような白に、見開いた瞳は血のような紅に染まっていった。

 

 やがて、全てが終わると子供は先程までの絶叫が嘘のように口を閉ざし、瞳も閉じたまま魔方陣の上に転がっていた。

 男達には見えていないが、子供の服の下、そうちょうど心臓の位置にある場所には不可思議な紋様が浮かんでいた。

 貴族の男ーー公爵は急いで長男の様子を確認する。

 そこにはすやすやと、穏やかな寝息を立てる可愛い息子の姿があった。

 息子が無事助かったことに安心すると同時に、男は身代わりにした子供を母親の下に捨ててこいと指示を出した。

 



 戻ってきた可愛い息子の、変わり果てた姿に母親は嘆き悲しんだ。

 全てはこの母が悪いのだ、と責め続けた。

 しかし、嘆き悲しんで自責ばかりもしていられない。

 息子は、まだ息があった。

 生きてほしい。

 それだけだった。

 ただそれだけしか無かった。

 持てる知識を全て使って、母は息子を看た。


 数日後。公爵から手切れ金が届いたその日。

 奇跡的に、子供は意識を取り戻し回復に向かい始めた。

 手切れ金には手紙が添えてあり、道具として大いに役にたったのだから感謝しろ、そしてもう役立たずなのだからその金を持ってどこかに失せろという内容が書かれていた。

 怒りに手を震わせ、母はその手紙を握り潰した。


 「どれだけ、どれだけ人の人生を踏みにじって狂わせれば気がすむの?!」


 怒りのままに握り潰した手紙を壁にぶつける。

 その時だった。

 やっと起き上がれるようになった子供は、ふらふらとした足取りで彼女の方にやってきた。


 「おかあさん、どうしよう、ぼく、ぼく」


 その不安そうな顔に、母は気づく。

 自分の体に起きた最大の異変。その重要性にようやく実感がわいてきたのだろう。


 呪いの副作用なのか、真っ黒だった子供の髪は雪のように白く、同じく黒だった瞳は血のような紅に、そして紛れもなく男だった体は、幼いながらも女のものに変わっていた。

 あぁ、これからこの子は、今までとは全く違う人生を生きなければならなくなった。

 ましてや白髪に紅い瞳は、この国では忌避の象徴だ。

 何故なら、まず生まれない色だからである。

 母は不安に体を震わせる子供を、安心させるように抱き締めた。


 「大丈夫、大丈夫よ、おかあさんがついてる」


 赤ん坊の頃そうしていたように、優しく子供の背中を撫でてやる。

 そうしながら、自分達の人生を踏みにじった男から送られてきた金の入った袋を見た。

 ここに居ても差別され、まともな生活など送れないだろう。

 彼女の実家もとうになく、頼れる人もいない。

 しかし、まだ生きているのだ。

 だから、生き続けなければいけない。

 

 「大丈夫、大丈夫だから」


 母に頼れる人はいない。

 しかし、この子供にとって頼れるのは母しかいない。

 決意を込めて、壊れるんじゃないかと言うほど母は子供を強く強く抱き締めた。




***


 一年後。

 

 差別の無い国。

 そんなものはどこにもない。

 それを知っていた彼女は、かつて学んだ知識をもとに誰も踏みいらないその場所に移り住むことにした。

 鬱蒼とした森。

 その森は国と国の間、国境に存在していた。

 森を切り開き、道を整備すれば隣国との交易もやり易くなるのだが、この森は太古からの神がすまう土地であり、誰も手が出せなかった。

 手を出せば神の怒りを買うと知っていたからだ。

 その神は龍の姿をしていた。


 「やぁ、娘。朝から精が出るな」


 龍神である神は一年前、突如やってきた親子を受け入れた。

 嘘偽りなく事情を話した娘の母親、その母親の話を聞いて首を傾げたのは良い思い出である。

 娘が呪われ、一命をとりとめた。

 それはまぁいい。問題は呪われたと言うのに、娘の中に穢れが無かったことである。

 呪われた人間は穢れるのだ。

 しかし、その穢れがないのである。

 その理由が、おそらく娘の胸へ刻まれていた紋様にあるのだろうとはわかったが、しかし、それが何のためのものなのか人の世界に疎い龍神にはわからなかった。

 娘の母は何か気づいたようだったがわざわざ問うこともなかった。

 穢れていたら、龍神はきっと親子がここに住むことを許可しなかったことだろう。

 神々しい気配はそのままに、人へ姿を変え少女の前に現れた。

 銀色の艶やかな髪から覗く一対の角。瞳は蛇のように鋭いがしかし慈愛が浮かんでいる。

 豊満な胸が歩く度に揺れる。

 

 「あ、おはようございます! 龍神さま!」


 地面に膝をつき、深々と頭を下げてくる少女に、龍神たる彼女は苦笑する。


 「そんな畏まらなくてもいい、と言っただろう。

まだ、違和感は消えないか?」 


 呪いの副作用で存在が書き換えられ少年から少女になったのだと、この子の母親は言っていた。

 一年前はたしかに人間の雄の子供にしか見えなかった少女だが、たった一年で女らしさが出てきたようだ。

 しかし当人はまだ違和感が消えないらしい。


 「はい。でも、割りきりも大切かなって思ってます。

あんまり気にしすぎるとお母さんが悲しむから」


 「そうか」


 「それに、ボクはここでずっと暮らすことになります。

だから、男とか女とか関係無いかなって思うようにしてるんです」

 

 この子供は己の容姿がどんなものか理解しているのだ。

 龍神であり、絶対的な力を持つ彼女には理解出来ない人間の仲間意識。

 白い髪と紅い瞳は、その仲間意識からすると処罰の対象になるらしい。

 何故なら、他の人間にはそんな色を持った者は存在しないからだ、というのが人間たちの、この親子がいた縄張りでの取り決めだったらしい。

 他と違うから群れから追い出される。

 実にくだらない。

 他と違うことが当たり前だった龍神からすれば理解に苦しむ。


 「そうか。しかし、娘よお前は美しい。

世が世なら傾国の美姫にもなれただろうに」


 「あはは、ありがとうございます。

でも呪われたボクと結婚したがる人なんていませんよ」


 朝日が少女の髪を照らす。

 白だったそれがまるで太陽のように輝いた。




さらに一年が経過した。

 女の体になって二年も過ぎたからか違和感も薄れてきた。

 身代わりで呪われて性別が女になった子供ーー十二歳となったナルはいつものように母の指示に従って朝から薬草を集め、近くの町や村で売る薬を作り、畑の世話をして、龍神に教わって魔法や武器の扱い方の手解きを受けながら生活していた。

 この二年で、ナルの髪は背中まで伸びていた。

 龍神からどうせなら伸ばしたらどうだ、と言われて手入れはしつつも伸ばした結果である。

 その容姿から人里に行くことは出来ないナルは母が、薬を売り、そのお金で森にはない物を買い出しに行くときはこの森で留守番をすることになる。

 ナルと言うのは愛称で、本名は別にあるがもうこれからは愛称でしか呼ばれることはないだろう。

 ナルは家に戻り、薪を割ったり家の掃除をしたり忙しく動き回っていた。

 二人が住む家は、龍神が知り合いだというドワーフの男性を呼びつけ建てさせたものだ。

 地下水を汲み上げ、取っ手を押すだけで水が出てくる不思議な道具のおかげで井戸から水を汲むという仕事がないのは、とてもありがたい。

 他にも、生活に困らないよう設備を整えてくれたのだ。

 魔法技術を応用した道具や設備がこの家にはたくさんあったが、ナルが理解出来たのは使い方までだった。

 母は夕方まで帰ってこない。

 今日のお茶のお供はどうしようかと悩む。

 しばらく悩んだあと、ラズベリーのパイを作ろうと決めた。

 この前、家の点検にきたドワーフの男がお裾分けでたくさんくれたのだ。

 ナルは、さっそく作業に取りかかることにした。

 と言っても、生地はずっと冷たいままの不思議な、ナルがすっぽり入れてしまうほどの箱の中に作り置きがあったし、カチカチに氷っているそれを取り出して少しやわらかくなってから、必要な分だけ切り取って残りはまた箱の中に片付ける。

 ラズベリーを煮詰めて作ったパイの中身。パイ生地を型にはめてそこにラズベリーを煮詰めたものいれ、その上に細長く切った生地で格子模様を作る。

 窯にいれ、あとは待つだけだ。

 ただ待っているのも退屈なので、母が買ってきた古びた本を読みながら焼き上がるのを待つ。

 次第に良い香りが漂い始めた。

 頃合いを見計らって、ナルはお茶の準備を始めた。

 温めたカップに淹れたお茶を注ぐ。

 程なくこんがりと焼き上がったパイが窯から姿を現した。

 ナルが切り分けたパイを食べようとした時。


 こん、ここんっと玄関の方から扉を叩く音が聞こえてきた。


 「誰だろ? ドワーフのおじさんが来る日じゃないし。龍神さまはノックなんてしないし」


 不思議に思いながらも、ナルは玄関に向かう。

 今度は扉の向こうから、弱々しいというよりはちょっと恐る恐るといった声が聞こえてきた。


 「すみません、誰か、いませんか?」


 また、こんこんと扉が叩かれる。

 

 「道に迷って、その、とてもお腹が空いているんです。

お願いです、誰かそこにいるのなら助けてください」


 その必死な訴えに、ナルは扉に近づいた。

 この二年、限られた者としか接触できていなかったので、久しぶりの他の人間の来訪に、驚く。


 「あ、ちょ、ちょっと待っててください!」


 ナルはそう言うと、一度家の奥にいき大きなぼろ布をすっぽり被って、すぐに玄関に戻ってきた。

 瞳はどうしようもないけれど、髪だけは隠そうと思ったのだ。

 ゆっくりと、ナルは扉を開けた。

 扉の先にいたのは、眩い金髪の少年だった。

 男の子はナルと同い年くらいに見える。

 無駄だとわかりながらも、ナルは纏ったぼろ布を目深に引っ張る。

 なるべく、この紅い瞳を見られないようにするためだ。


 「あ、えっと」


 ナルの姿に困惑しているのだろう。

 ナルはすぐにくるりと少年に背を向ける。


 「お腹、減ってるんですよね?

甘いもので良いなら、さっきパイが焼けたばかりなんです」


 「あ、お、お邪魔します!」


 少年をテーブルまで案内し、座ったのを確認するとカップをもうひとつ用意して、お茶をいれなおす。


 「君は、ここで一人で住んでるの?」


 出された紅茶を飲んで、喉を潤してまるで一流の菓子職人が作ったかのようなパイと、ナルを交互に見て少年は訊ねてくる。


 「どうぞ、お腹減ってるんでしょう?」


 少年の問いには答えず、ナルは彼のために切り分けたパイをすすめる。

 

 「あ、う、うん。いただきます」


 フォークでパイを少しだけ掬って口に運ぶ。

 そんな少年を見ながら、ナルはそう言えば母やドワーフの男以外にこうして料理を食べてもらうのは初めてであることに気づいた。

 目深に被った布の下から紅い瞳を向け、どんな反応が返ってくるかとドキドキして待つ。

 パイを一口食べた直後、少年の目が丸くなり、たった一言呟いた。


 「美味しい」


 笑顔で夢中になって食べる少年を見て、何だか嬉しくなってナルは微笑んだ。

 その笑みを偶然視界の端で見てしまった少年は、ぽとりとフォークを落としてしまう。


 「どうかしましたか?」


 固まってしまった少年へ首を傾げ、声をかける。


 「紅い目」


 「!」


 少年の続いた言葉に慌てて、もっと見えないように布を下げようとしたナルだったが、次の彼の言葉を聞いてその手を止めた。


 「宝石(ルビー)みたいに綺麗っ!

なんで布で隠そうとするの? もっと見せてよ!」


 子供特有の好奇心が勝ったのか、少年は椅子から降りてナルに近づくと纏っているぼろ布を取ろうとしてくる。


 「や、やだ! やめて、やだぁぁああああ!」


 「ちょっとだけ、ね、そんなに綺麗なんだから」


 ブンブンと頭を振って、布を剥がそうとしてくる少年の魔の手から逃げようとする。

 

 「やだ、いやだ! やめて、離して!」

 

 そうやって揉み合っているうちに、二人の足が縺れて転んでしまう。

 転んだ拍子に布が取れてしまい、一緒に隠していた白い髪も顕になってしまう。


 強かに頭を打ちつつも、ぼろ布に隠されていた白と紅を見た瞬間、あまりの綺麗さに言葉を失う。

 

 「あ、ご、ごめん」


 「やめて、って言ったのに」


 泣きべそをかきながら、ナルが言うと、もう一度『ごめん』と返ってくる。

 

 「目もそうだけど、髪も綺麗だね。隠す必要なんかないのに」


 邪気も悪気もない少年に、しかし二年前、この森にくるまで様々な好奇と悪意の視線の的になり、石を投げられたことが思い出される。

 

 「みんな、気持ち悪いって言うんだ」


 「え?」


 「好きでこんな髪に、目の色になったんじゃない!

でも、みんな、こんな色の子供はいない。いない色を持っているのは、違うのは気持ち悪いって、皆がボクを見て言うんだ」


 「俺は、綺麗だっておもったけど?」


 先に少年が立ち上がり、ナルへ手を差しのべてくる。


 「ごめんね。大丈夫だよ。俺は気持ち悪いなんて思わないから。

それに、こんなに可愛いんだから、布なんて被らないでよ」


 ナルも身を起こし、じいっと少年を見る。


 「そんな事、初めて言われた」


 しかし、すぐに視線を外して続ける。


 「でもね、ボクに起きたことを知ったら君だって気持ち悪いって言うに決まってる」


 「?」

 

 「きっとすぐにここから逃げ出す」


 「え~。君は俺を助けてパイをご馳走してくれた恩人なのに?

俺、そんなに薄情に見える?」


 「わからない。でも、お母さんや龍神さま達以外は石を投げてきた」


 「俺は石なんて投げないよ」


 「殴られそうになったことだってある」

 

 「今の時点でやろうと思えばできるけど、俺、君の事殴ってないよ?」


 「でも、でも」


 「だって。俺は君の言う『今までの皆』じゃないよ。

あ、泣かないで。女の子に泣かれるのは苦手なんだよ」


 「ボク、本当は女じゃない」


 そう言ってしまってから。母を心配させまいと知らない振りをしてしまいこんでいたナルの感情が溢れだしてきた。

 誰かに聞いてほしかったのだと、後になってわかった。

 

 「君もお腹減ってるんじゃない? ほら俺だけで食べてたから。

一緒にパイを食べよう。それで、君の話を聞かせてよ!

もちろん、俺の事も話すからさ」


 ね? と促されるままにナルは差し出された手に触れた。

 そして、お茶会が始まった。

 



   ナルの母親が森へ戻ってくると、その出入り口で龍神が待っていた。

 珍しいこともあるものだ。

 不思議そうにしている彼女へ、今、彼女達の家へ客人が来ていてナルがその相手をしていることを告げる。

 迷子の、ナルと年の近い子供でどうやらこの森の反対側から迷いこんだようだ。

 龍神がその子供を無理やり、森の外へ追い出さないと言うことは、悪い人間ではないのだろう。

 しかし、母親以外の人間を見るのは二年ぶりのはずだ。

 大丈夫なのだろうかと、別の意味で心配になる。

 それに、森の反対側から迷い混んだということはアーバンベルグ国の人間ということになる。

 彼女の実家があった国であり、故郷である。


***


 

 少年の名前はジョットというらしい。

 ジョット・ディー・アーバンベルグというのが彼の名前なのだそうだ。

 この森を挟んだ、一応隣の国の王族らしい。


 「じゃあ、王子さまなんだ。

でも、王子さまって護衛を沢山つけて、どこに行くのにも大変って聞いたことあるけど」


 「何で護衛もつけずに迷子になっているのか? か。

簡単だよ。それは俺がいらない王子だから。

俺の母親の身分は低かった。貧乏貴族の出身だから。

だから、後宮での母と俺への扱いもそりゃぁ酷いものだった。

上の兄や、その母達の気まぐれの嫌がらせ命令は絶対だ。

逆らえるものなんていない。

俺の母は先月死んだ。虐めに耐えて、頑張って、頑張りすぎたのか、病気で死んだ。俺の王位継承権なんてあって無いようなものだ。

実際、母が死んでから俺は放っておかれた。

かと思えば思い出したかのように、今朝、兄達から『王族たるもの一人で魔物を狩らなければならない。狩れるまで戻ってくるな』と言われ森の中に置き去りにされた」


 これは、何処にでもある話なのだというジョットに、ナルは返す。


 「ひどい」


 「たぶん、今頃宮中じゃ俺が死んだことにされてるかも。

まぁ、俺が死んだところで次代の王の予備が一つ無くなったくらいだろうけれど」


 「でも」


 「だからいっそのこと、森向こうにある、ナルの出身の国ーーレベルターレ国に行って仕事でも探そうかと思って、真っ直ぐ歩いてたつもりだったんだけど」


 「迷ったんだね。でも、いいの? ボクがこんなこと聞いちゃって」


 「いいんだよ。ナルだって、俺に秘密を教えてくれたんだから。おあいこってやつだよ」


 そうしてどちらともなく笑いあった。

 


 これが出逢いだった。

 二人の出逢い。

 この日は帰ってきたナルの母にジョットを紹介、事情を説明して泊めることとなった。

 母はその出自に驚いたものの、龍神がジョットがナルへ危害を加えることがないということを教えてくれていたので、彼に対して冷たい態度を取ることはなかった。

 ナル自身も、久しぶりの年の近い友達ができたことを喜んでいるようだった。

 ジョットへの同情もあった。

 似たような境遇だ。だからだろう。

 ナル達はジョットを受け入れ、男手が必要な仕事を手伝ってもらうようになった。

 気づけば、三日、一ヶ月、数ヵ月と時間が経過していた。

 ジョットが言ったように、彼の迎えは来なかった。

 本当に捨てられたのだろう。


 「ジョット君」


 その日、朝から薪割りをしていたジョットへ、ナルの母は真剣な顔をして話を切り出した。

 もう数ヵ月だ。

 ジョットが来て数ヵ月。

 幸いにも、森での狩猟や薬作りを手伝ってくれる彼のお陰で増えた食費はなんとかなっている。

 しかし、いまや娘となったナルと、これからどんどん男になっていくジョットを一緒に住まわせておくことに、母は不安を募らせていた。

 今の二人は仲の良い兄弟か友人という関係だ。

 しかし、それがいつ男女の関係になるかと冷や冷やしているのも事実なのだ。

 というのも、ナルに初潮がきてしまったのだ。

 いつかくると思っていた。

 男の子だったナルはその現象に戸惑い、何か重大な病気ではないかと不安でたまらなかったようだ。

 必死と言えば、普段の暮らしに必死で、そういった話を何もしていなかった母にも責任がある。

 ゆっくりと、安心させるようにその現象がなんなのか説明した時。

 ナルは震える声で、「ボク、男なのに」と呟いた。

 その呟きに、母はナルにとってはおそらく死刑宣告のようにこれからのことを話した。

 男女の子供の作り方、処理の仕方、泣いてそれでもどこか諦めて受け入れるしかないとナルなりに納得した後。ナルは言ったのだ。

 この森から出ないのなら、そもそもそんな心配はないし、こんな教育は無意味だと。

 そう、ジョットさえ来なければ無意味だったことだろう。

 しかし、ナルがどう捉えた所でジョットは日に日にナルへ好意をもっていくことが理解できた。

 ナルの事情を知ってさえ、そうなのだ。

 ましてや彼は、母の故郷の末席とはいえ王族だ。

 王族は遅くても十歳までには婚約し、十五才までには学生であろうと婚姻を結ぶのが一般的である。

 

 「話があるの」


 ジョットの中にある恋心は、本当にまだ淡いものだろう。

 しかし、それがいつ彼を母を孕ませたあの男のように獣になるとも限らない。

 龍神から、彼は危害を加えないことはお墨付きだが、しかし、それでも不安なものは不安なのだ。

 ナルが彼の好意を受け入れるなら何も問題はない。

 しかし、ナルは元々男である。

 恋を知らないうちに、男女の違いを身をもって体験する直前に性別が変わってしまった。


 「貴方、ナルのことが好きでしょう?」


 単刀直入の言葉に、ジョットは顔を赤らめる。


 「は、はい」


 「少し下品な話になるけど、貴方、精通きてるわよね?」


 さらに顔を赤くして、視線を反らしジョットは頷く。


 「ナルはたぶん貴方のことが嫌いじゃないと思う。

でも、貴方がナルに対して抱いている好きとは種類が違う、と言うことはわかってるかしら?」


 「はい。ナルは俺のことを兄みたいだと言っていました。

もしいたら、俺みたいだったのかなって」


 「そう」


 「もちろん、このままじゃ俺、いつかナルに酷いことをするんじゃないかって思ってて、母さんはそれが心配なんですよね?」


 「ええ」


 「ナルの事情も、母さんの事情もわかっているつもりです。

だから、俺はいつかここを出ていかなくちゃならない。

ナルを傷つけたくないから」


 そこまでジョットが言った時、母は息を吐き出した。


 「それが聞けて少し安心した。ここには龍神様もいるし。龍神様はナルのことをいたく気に入っているの。そして、その龍神様はジョット君は危害を加える存在じゃないと言っていた。

それでも不安だったの。ごめんなさいね」


 「謝らないでください。俺は貴女方親子に感謝してるんです。

二人は俺のことを助けてくれたから。

ナルの今までを知ったのが最初で良かったと思っています。

欠片でも嫌悪感を抱いたらすぐにここから去るつもりでした。

でも、日に日にナルのことを好きになっていくんです。

だから、俺は」


 「ジョット君ってお父様似なのね」


 遠い目をして、懐かしそうに言う母にジョットは軽く驚いた。

 

 「父を知っているんですか?」


 「えぇ、昔ちょっとね。

そういえば言ってなかったかしら、私はアーバンベルグの出身なの。

色々あってレベルターレに移住したんだけど」


 「はい、初めて聞きました」


 「実家は下級貴族でね。私が家を出た後、もう十五年以上前になるのか、流行り病で家族も使用人も死んだときいた。

だから、そっちにも帰る家はないしレベルターレの方にもないの」


 「そういえば、姓も知らないです。

今さらですけど」


 クスクスと母は笑った。


 「そういえば、名前だけだったわね教えたの。

ほとんど使う場もないけど、私もナルもドレッドノートを名乗ってるわ」


 その名前に、ジョットは目を見開いた。


 「ドレッドノート?! ってあの伝説の魔導士の一族。

ドレッドノート家ですか?」


 「伝説って。そんな大層な家じゃないわよ。

先祖代々、みんな魔法が好きで魔法を極めちゃったおかしな一族なんだから」


 宮廷魔導士にも姓こそ違うがドレッドノート家の遠縁のものが、何人も在籍している。

 しかし、直系、本家の人間にはあと一歩及ばない。

 ジョットは人伝の話でしか知らないが、今から二十年前そのドレッドノート家を悲劇が襲った。

 それが母の言った流行り病だ。

 しかし、ただの流行り病にしては不自然なことが多く一部の陰謀論者の間ではいまだに良い玩具となっている。

 魔法を極めつつも下級貴族だったのには当然わけがある。

 必要以上の力をつけさせ、政治の中心へ他の貴族が置きたがらなかったからだ。

 そもそも先祖代々、変わり者が多かったドレッドノート家は研究費用さえちゃんと出してもらえれば、何も文句がでなかった。

 

 「それじゃあ、父と知り合いと言うのは」


 「何度か社交界で、ね」


 「違う。そうじゃないですよね?

唯一、父の心を射止めた、ドレッドノート家の娘で正室候補がいたことも有名です。自由奔放な彼女はしかし、旅先で連絡が途絶え、死んだとされた」


 「もう、昔の話よ。たしかにそんな娘がいたのも事実だろうけれど、それはもう昔の話なの」


 それ以上はジョットも何も言わなかった。

 

 


 正直な所、ジョットは父と顔を合わせたことはほとんどなかった。

 王族とはいえ、ジョットの王位継承権は十位。

 さらに側室の中でも一番身分の低い母親から産まれた子である。

 せいぜい、国の大きな行事に参加するくらいだ。

 王子だってジョットを含めて上に九人もいるのだ。

 姫は上と下合わせて十五人くらいだろう。

 姫達の母親も、ジョットの母より身分が高い。

 年齢が彼より下であっても、姫達はジョットを見下してくることが多かった。

 それは、次期王妃の座を狙う貴族令嬢達も例外ではない。

 ジョットには、利用価値が無いと判断されていたのだ。

 そして兄や姫達の態度もそれに拍車をかけていた。

 なにもしていないのに、嫌がらせはどんどん酷くなり、そしてとうとう母が天に召された。

 その後も嫌がらせが続き、役にたたない穀潰しである彼を兄やその母達が独断で処分しようとしたのだ。

 隣国で生きようとした、それはもちろん嘘ではない。

 だが、この家を見つけなければきっとジョットは行きだおれて死んでいたことだろう。


 「どうしたの?」


 屋根に登って、雨漏りの修繕をしていたジョットへナルは、同じように登ってきて声をかけた。

 女性としての体つきになりつつナルは、今までと変わらないように接してくる。

 ナルの母との問答からさらに月日が過ぎて、気づけばここにきて一年が経過していた。

 お互い十三歳。王族でも婚姻を結びはじめる年頃だ。


 「なんでもないよ」


 ナルは外の世界を知らないまま、この先この森の中で生きていくのだときめている。

 ドレッドノート家の血がそうさせるのか、ナルは今や魔法で本来だったら男の仕事すら片手で済ませてしまえるほどになった。

 まるで、いつかジョットですらここを出ていくことを見越しているかのように、なんでも出来るように頑張っていた。


 「お昼出来たよ。ちょっと休憩しよう」


 実際、ナルは自分一人だけになった時のことを考えて行動していた。

 ジョットと暮らしはじめて一年。

 最初は気づかなかった、その心境の変化に気づき始めたのはつい最近だ。

 その心の変化が怖くなって龍神に相談したら、あっさりと『恋』だと教えてくれた。

 でも、素直に自分の心を認めることができなかった。

 まだ、自分は心のどこかで男であると思っていたからだ。

 男が男を好きになることは、普通はありえないことだ。

 しかし、気づけばジョットのことを視線で追っている自分がいた。

 彼に誉められたりすればとても嬉しいし、たまに喧嘩をするとすごく落ち込んでしまう。

 ジョットは、ナルの事情を話しても嫌うことはなかった。

 ましてや、今は性別は女である。

 女が男を好きになるのは普通のことだ、でも、それでも男だったという事実が、それを伝えているからこそ、想いを打ち明けることが怖かった。

 ジョットは、ナルのことを弟のように思っている。そうナルは信じていた。

 このままでいいや。

 そうナルは考えていた。

 あえて関係を壊すことはない。

 いつか、ジョットがここを出て森の外で家族をつくり、お嫁さんと子供を連れて時々この森に顔を見せる。

 そんな未来も幸せで良いじゃないかと、思うようになっていた。


 「うん。わかった」


 そんなナルの心境を他所に、区切りである一年が過ぎた今日。

 ジョットはナルへ告白しようと決めていた。

 母の手伝いで少しずつ貯めたお金を使って、安いながらも婚約指輪も用意した。

 安い、でもナルの瞳と同じ真っ赤な石のついた指輪だ。

 怖かった。

 これは、今までの関係を壊すことだ。

 事前に、意思は堅いことを母に伝えてある。

 問題は、いつ決行するかである。

 今日も母は夕方まで帰ってこない。

 なら、昼食が終わった後にでも。

 いや、でも断られたらずっと気まずいことになる。


 悩んだ末、ジョットは昼食の席でそれを渡すことした。


 「ナル、いや、アースナル・ドレッドノートさん」


 配膳を終えたナルへ、ジョットは畏まって声をかけた。

 隣に座りながら、ナルは不思議そうにジョットを見る。


 「そ、その、俺と」


 「どうしたの? ジョット」


 「俺とこんーー」


 意を決して続いた言葉は、突如響いた玄関の扉を叩く音と続いた声でかき消されてしまった。


 「失礼する! 噂に名高い賢女の家はこちらだろうか!!

誰かおらぬか?!」


 男の大きな声だった。

 その声にナルの体があからさまにびくついた。

 見れば、ナルの手が震えていた。


 「俺が代わりに出るよ」


 「う、うん」


 ジョットの申し出に、ナルは家の奥に引っ込んだかとおもうと一年前と同じように布をすっぽり被った。


 「はい。どちら様でしょうか」


 正直、邪魔しやがってと忌々しく思いながら扉を開けると、そこには久しぶりに見るアーバンベルグ国の王お抱えである騎士団の団長の顔があった。

 そのうしろに控えるのは、騎士団の副団長とその助手である。

 三人とも、ずっと行方不明であったジョットの登場に驚いた。

 

 「殿下」


 「人違いです」


 呼ばれ、しかしジョットはそれを切ってすてる。


 「良かった無事だった。本当にいた。良かった」


 今にも泣き崩れそうな騎士団の団長を、しかしジョットは冷たい目で見る。

 その背後から、布を被って髪を隠したナルが不安そうに声をかけてきた。

 見るからに怪しげな少女の登場に、団長は眉を寄せる。


 「と、とり、あえず。た、たちばな、しも何なので、どうぞお上がりください」


 カタカタと体を恐怖で震わせながら、ナルは提案する。

 騎士達の視線からナルを守るようにジョットは立つ。

 そして、小さくナルに訊いた。


 「良いの?」


 「りゅう、じん様が、ここまで通した、のなら。

たぶん、だいじょうぶ」


 たぶん大丈夫と言いながらも、やはり父親と同じ年代の男が怖いのか、ナルはジョットの服を握ってきた。


 そうして、騎士団の三人を家へあげるとお茶の準備を始めるナルだったが、どうにも危なっかしいので何時ものように手伝おうとしたら、それを見咎めた団長が威圧をかけてきた。

 それをジョットは睨んで辞めさせる。


 「あ、あの、母は、今家にいなく、て。その」


 もごもごと口ごもり次第に言いたかったことが消えていく。


 「そもそも、ここに騎士団が何の用だ」


 お茶を全員分淹れて、配り終えるとジョットがナルの言葉を引き継いだ。

 団長がその問いに答える。

 何でもジョットが、兄とその母達から嫌がらせでこの森に捨てられた直後。

 王が体調を崩したのを皮切りに、お家騒動が勃発したらしい。

 騒動は泥沼になるだけで解決せず、なんとか王の体調が持ち直した頃には兄達は共倒れとなり、跡継ぎがいない状況となってしまった。

 幸いにも姫達は全員無事だったので、有力貴族から婿を迎えてその婿を王にしようとなったらまた血生臭い騒動が起き始めた。

 そこで漸く王はジョットの事を思い出した。

 まだジョットが残っているのだから彼を次代の王に、となった。

 そう、王にはジョットのことが伏せられていたのだ。

 ことの次第を聞いた王はそれはもう怒った。

 全てが遅すぎるとわかっていながらも、せめて骨だけでも埋葬をとなり、宮廷魔導士に現在のジョットの居場所を占ってもらったところ、生きていることが判明した。

 それも、数年前から森に住んでいるという賢女の下で元気にしているとわかり、半信半疑ではあったがこうして騎士団が派遣されたと言うことだった。


 「都合良すぎ。この一年。誰も捜しに来なかったくせに」


 それどころか、次の国の指導者候補がいなくなって、ようやく存在を思い出したくらいだ。

 予備がいなくなったから戻ってこいというわけである。

 たぶん、薪割り用の斧を持ってきて暴れても許される気がする。

 ナルが泣くだろうからやらないが。


 「それは、その通りです。

ただ、殿下だけが目的では無いのです。

実は、王は毒を盛られ呪術をかけられていたらしく、その犯人の捜査に賢女殿のお力添えを願おうかと参ったしだいでして」


 要するに、ジョットからも賢女であるナルの母に口添えして捜査に協力させようとしているわけだ。


 「それに、宮廷魔導士の占いからもうひとつ、我々はとある人物の捜索を指示されました」


 まだあるのか。

 内心うんざりしながらも騎士団長の言葉を待つ。

 

 「【刻印の聖女】が現れたらしいです。ただ、占いではどこにいるのかまでは、わからなくて」


 【刻印の聖女】もしくは【聖痕の乙女】と呼ばれるその存在は、所謂伝説の存在である。

 伝説によれば、神様に愛された存在であり、聖女や乙女と呼ばれているように女性である。

 その女性は国を平和に導く神子を宿すとされ、その目印として体のどこかに紋様が刻まれているらしい。

 歴史上、その存在は何度か文献に登場している。

 その存在が最後に確認されたのは今から五百年前。

 当時、まさに戦国乱世であった時代にその少女は現れた。

 旅人である少女は、落ち延びていた亡国の王子を助け国を取り戻す手伝いをしたという。

 大変腕もたち、護衛として王子が少女を雇ったのだ。

 雇われた少女は、その旅の中で王子と愛を深め、戦乱をおさめたあと大恋愛の末に王となった彼と結ばれ、やがて神子を産んだとされている。

 その少女の腕には生まれつき刺青のような痣があり、それが【刻印の聖女】であった証しらしい。

 今ではただのお伽話となっているが、王権を正当化するための伝説かと思えばそうでもない。

 実際、その刻印の聖女が存在し、聖女を手に入れたとされる国は今でも存続し続けているのだ。

 そして、現代にその存在が確認された。

 そもそも、聖女の存在は謎に包まれている。

 刻まれている紋様だって、五百年前の少女のように生まれつきのものから、何かが切っ掛けで現れた者もいるらしい。


 「へぇ、お伽噺の聖女が現代に、ね」


 「はい。国の王室の存続を考えるならば、方法はいくつか用意すべきということで」


 「賢女と聖女。そして俺か。

ま、いまうだうだ言っても始まらないな。母さん、話は賢女が帰宅してからだ」


 ジョットと騎士達の話を聞きながら、ナルはうつむいた。

 いつか来ると思っていた日が来てしまったのだと、表情を暗くした。

 

 

 








 

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 短編なら短編らしくそれだけで一応話を終わらせてほしい。 続きそうだなあ。続いてほしいなあ。 は、いいけれどまだまだ続きますという短編はちょっと。 [一言] というわけで連載してください…
[一言] 続きが気になります!更新待ってます!
[一言] 続きが気になるぅ~! 更新を心よりお待ちしております!
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