神様って、なんでしょうね
残されたアイリスは、思考を持て余し指先を湖に向けてくるくると弄ぶ。すると、その先にあった水面が波立ち水が浮いた。
「……それに、例え他の神々が人間の行動に興味を示し観察していたとしても、それ以上はなかったけれど。」
私は、全てに愛を注いでいたかったんです。と呟く声は風に浚われる。しかし、アイリスはその言葉に含まれる矛盾を理解していた。
そもそも神々とは、天上の存在。等しく全てに愛と慈悲を注ぎ、また等しく全てに不幸と呼べるものを注ぐ、均衡を保つ概念的存在とも言えるだろう。だが、その力が及ぶかどうかは人間次第、そして神に意思や感情があること自体アイリスは疑問に思っていたことだ。
--あるいは、神ですら人間に創り出されたものなのかもしれませんね。
鶏が先か卵が先かの、まさしく雲を掴むような話だ、と思ってから、すぐにかぶりを振る。
そもそも、人間は自らの判断で神をも創り出す。ならば神の性格とやらも人間がその神の性質に肉付けしただけではないのか--そこまで考えて、アイリスは溜め息をついた。
「やはり、これこそ考えても無駄、ということでしょうか。」
指を動かし浮かべていた水を湖に落として、考えを区切る。
それでも、数多ある世界を渡る度に思考せずにいられないのは、存外暇だと感じるせいであろうか。
「そんなことより、フレイ達の後を追う方が楽しそうですね」
ただ思考するよりは、発生した事象を見ていることの方が興味を引く。そうして彼女も、フレイが走っていった方向にゆっくりと歩いていった。
***
「長老様!」
少し開けた場所に出ると、兵士らしき人物と長老が話し合ってる姿が見えた。兵士は既に剣を抜いていて、ただならぬ雰囲気だということがわかる。
「おお、フレイ!」
こちらを眼光鋭く振り向いた長老は、フレイとカルロを素早く見やるとその気配を緩めた。一瞬の出来事に兵士とカルロは気付かなかったが、フレイはより一層警戒を深める。
「ちょうどよかった、そこの優男。大樹が発生した現象について何か知らないか」
「ですから、わしらは何も知らないと言っているじゃないですか……」
「ええい!お前には言っておらん!そこの優男に聞いているんだ!」
しぶしぶといった様子でこちらに振り向き、長老はフレイを手招く。
「カルロ、離れて見ているんだ。絶対に近付かないように、いいね?」
「うん、わかった……フレイ兄様、気をつけてね……」
小さな声でカルロに囁くと、同じく小さな声で返事が帰ってくる。いい子だ、と頭をくしゃりと撫でる。
カルロの不安げな様子が和らいだのを確認して、苛立たしげに急かす兵士の声を聞きながら長老の所へ向かった。
アイリスさん、今行くのは不味くないですか?(汗)
ちなみにこの世界は魔法はほぼ一般化しています。といっても、やはり適性などはありますが。
前回アイリスさんがやったのは歌魔法と言い、この世界で最近知られ始めたものです。
一般的にあそこまで強大なことは出来ませんが、息遣い、音程などに魔術的な意味を含めれば威力が高くなったりします。
まぁ、前回のはアイリスさんだからこそ出来たものですが……(笑)