びっくりの連続です
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少女が降り立った同時刻、森の術師達には緊張が走っていた。
「長老……!長老……!!」
「なんだ、何事じゃ、騒々しい……そなた、術師殿ではないか。どうかなさったのか?」
息を切らして長老の天蓋に入ってきた青年は森の民の中でも魔力を持ち、まじないや占いをする森の術師の一人である。
胸を押さえて息を整える様を見るに相当慌てて走ってきたようだが、何かあるにせよ話を聞かなければ始まらない。長老は術師が話し始めるのを待った
「あのですね、落ち着いて聞いてください……先程、巨大なエネルギーが湖の辺りに発生しました」
「ふむ、魔獣か?それとも魔物か。」
術師はかぶりを横に振る。
「いいえ……そんな矮小なものではございません。私ども、魔法や魔術に必要不可欠たる……星の意思たる精霊よりも上位の存在、全てを創りし存在、その一柱でございます」
「なっ、間違いではないのか!?」
「そう思い術師全員が占い、確認しました!精霊に確認をとった者もおります!」
長老はその立派な白髭を撫でつけ始めるとしばし考えを巡らせる。
神。この世界を創りし創造神--厳密には、まだ創造神と決まったわけではないのだが--が、
突如顕れた。一体、どうして……長生きしているだけの人間にすぎない長老には図ることは出来なかった。
「術師殿、成り行きを見守りましょう」
そう言って顔を上げた瞬間、長老はぎょっとした。その驚きように術師も後ろを振り向き、その体勢のまま固まった。
「えーと、長老様。お邪魔でしたでしょうか……?」
天蓋の入り口から顔を覗かせていたのは森の民の一員である青年と、この騒ぎの張本人とも言える見知らぬ少女であった--
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何故私は怒られているような心境になるんだろう。不思議な少女を連れてきた青年フレイはそう思った。
「して、フレイ。その御方は何故そなたと共におるのじゃ。」
「それには訳がありましてですね……説明するにも長いですよ?」
「わしらには聞かねばならん、何故その……神の一柱を連れ歩いておるのか、もな」
「はい?神?」
横にいる少女を見れば同じく見つめ返されこくりと頷かれる。さっと血の気が引くが長老に急かされ、静かに話し始めた。
「……要するに、そなたは湖に水汲みしにいったら偶然その場に出会ったと、そうじゃな?」
「簡易的に言うならば、そうですね。」
「ふうむ……」
長老が考え込み始めると、術師が跪いて少女--神の一柱に問いかける。
「大いなる我らが神の一柱様、どうかその偉大なる名をお教えください。」
髪をさらりと揺らし、少女は口を開く。
「体を起こしください、力ある者よ。私に跪く必要はありません……私の名は、アイリスです。」
アイリス、とフレイは反芻する。跪いている術師も口の中で呟き体を震わせて、言うとおりに体を起こすと目の前の神を眩しそうに眺める。
「アイリス様、ここにお越しいただいたのは何かご理由があるのですかな?」
長老が静かに聞く。術師もフレイもごくりと息を飲み、アイリスの口が開かれるのを待った。
「実は……。」
もったいぶるように区切られ、長老が目を見張るのが見えた。しかし、次の瞬間発せられるのは思いも寄らない言葉であった
「……実は、この星が一際輝いていて……とても居心地が良さそうで……その、ついつい立ち寄ってしまって……」
時が止まる、とはこのことなのだろう。
フレイは自分の顔が阿呆の顔をしているのだろうなと思ったが、端から見ればアイリス以外全員があんぐりとした表情で止まっている。
目の前の神はとても恥ずかしそうに照れながら手を絡ませもじもじしている。
やっと判明しました、主人公の名前と性別。
フレイは薄青の髪を持つ好青年……のはずです、はい(汗)