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ありふれた異世界転生もの  作者: てきとうな人
ウルーク王国編
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2、第一異世界人

 

 

「さて、どうしたものかな」


 回想に入る前と同じ言葉をもう一度呟き、周囲を見回す。

 遠くに高い山々を望む、見渡す限りの青々とした草原の中。サワサワと揺れる草の流れで、吹き過ぎて行く風の形が見える。


「建物どころか、道らしきものも見えないな」


 次に、自分の状態を確認。

 身につけているのは、町人Aといった感じの何の変哲もない布の服に革製らしき靴。そして、……所持品はない。


「……どうしろと?」


 チート能力を貰っていなかったら、野垂れ死に確定だったのではなかろうか。


(本当に長生きさせたいのか疑問に思うレベルだ)


 疑っていたわけではないが、異世界に人を送ることに関して、本当に慣れていなかったのだろう。

 気を取り直して、貰ったチート能力を試してみることにする。


(とりあえず、神(?)の望み通り長生きするとして、その為には何が必要だろうか?)


 そして、ここが剣と魔法の世界だということを思い出す。


(きっと魔物なんかもいるんだろうな。ということは、まずは防御力だよね)


 うんうんと頷き。


「どんな危険があるか分からないしな。鎧は、全身を覆うようなものなら安心出来るかもしれないけど、重そうだし、動きにくそうだし、却下だな」


 そこまで呟いたところで、思い付いたことの中二加減にニヤニヤする。


「身体を薄く覆う防御フィールドとか良さげかな。その機能を付与した腕輪とか、……創れるかな?」


 自分自身にその能力を持たせる事も考えたのだが、それはいずれ覚える予定の魔法でやりたい。

 では試してみるか、と思ったが。


「うん? そういえば、どうやって能力を使うんだっけ?」


 考えても分からないので、とりあえず目を閉じ腕輪のデザインを思い描きながら念じてみる。


(防御の腕輪……、防御の腕輪……)


 かすかに、身体の中から何かが抜ける感覚があった。次の瞬間、上を向けた掌の上にかすかな重さを感じ、目を開く。


「おぉっ!」


 そこには思い描いた通りの、幅1センチほどのシンプルな銀の腕輪があった。


「心の中に詳細な形を描けるし、《想像力強化》はバッチリだね。後は、ちゃんと効果があるか……」


 腕を通すと、設定した通りに自動でサイズが調整される。


「良いねー」


 防御フィールドの発動を念じると、何かが肌を覆うような(かす)かな感覚。

 それから、物は試しと近くに顔を覗かせる岩まで歩いて行き。


「えいっ!」


 そこそこ力を込めて殴ると、硬い物をぶつけ合うような音とともに岩の欠片が飛び散る。


「うん、まったく痛くない。念じてから発動したし、特に設定はしなかったけど息苦しくなったりもしないから《思考からの拡張解釈》ってのも大丈夫そうだ」


 防御フィールドなんて、仕組みがさっぱり理解できないものが創れる。これが、《世界の理による最適化》というやつなのだろう。


「次は……怪しくないであろうレベルの装備として、鉄の剣でも創るか」


 今度は、自分が剣を装備した姿を思い描きながら念じてみる。

 先ほどよりもさらに少量、身体の中から何かが抜ける感覚。


(これが魔力なのかな?)


 《創造》によって消費する魔力は、創る物のサイズではなく性能によって変わりそうだ。


「よし、成功」


 重さを感じて確認すると、腰には革の剣帯と、それに吊られた剣。


「想像した通り、装備した状態にも創れたな。……これは本当に何でも出来るんじゃないか?」


 おそらく、そうしようと思えば核ミサイルだって創れるだろう。オレのような子供に、世界を滅ぼすことすら可能な力を与えるなんて、神(?)の不慣れさには危機感すら覚える。


(……いや、そうじゃないな)


 もしかしたら、世界が滅びることすら神(?)の想定する変化の一つなのかもしれない。


(まぁ、これも考えるだけ無駄か)


 小剣サイズのシンプルなデザインの剣を抜き、一度振って感触を確かめてから鞘に納める。


(むむ、結構難しいな)


 何度か抜いては納めを繰り返すと、何とかサマになってきたように思う。


「あとは、この世界の常識とかを知ってからが良さそうだよね?」


 《創造》というチート能力の性能に頬を緩ませながら、もう一度周囲を見回す。


「とりあえず、遠くに見える山と並行に行ってみるか」


 山々を右手に望みながら歩き出す。そのうち、道か川にでも行き当たるだろう。



ーーーーーー



「夏の終わり、ってとこかな」


 現在地の季節は、そのくらいだろうと感じる。


(オレが元いた場所と同緯度あたりに居るのかもしれないね)


 途中で喉が渇き、無限に水が湧き出る水筒を創った。革製で重さは1キロ程、中の水は革臭くならず、腐らず、水温が7℃くらいに保たれるという優れものだ。

 そんなことをしながら、四時間ほど歩いただろうか。


「おおっ! 道がある!?」


 正面の黒々とした森の手前に丘があるのだが、その丘の左右に道が伸びているのが見えるようになってきた。


「山へ向かう方には何もなさそうだね。ということは、反対の方向へ行けば人が住んでいる所があるはず。……きっと、たぶん、恐らく」


 一人しかいないせいか、ついつい漏れる独り言で根拠のない適当な推測をしながら進んでいると、丘の向こうから声が聞こえた気がする。


(おっと、第一異世界人発見か?)


 この世界で初めての生き物の気配が嬉しくて、ついついアホなことを考えてしまった。


(友好的な存在とは限らないよな)


 気を引き締め、身を屈めて近付く。

 そして、丘の端、街道に面する2メートルほどの崖の上から見えたのは、壊れた馬車と数人の倒れた人影。さらに、少し離れた所で何かに顔を埋める、体高が1メートル、体長は3メートルを超えていそうなイヌ科の獣の姿があった。

 

 

ーーーーーー

 

 

「これは、どうしたものかな」


 幸い、こちらが風下らしく、今のところ気づかれた様子はない。

 倒れている人影のうち、武装していない小柄な人影は息があるようで、かすかに胸が上下しているのが見える。


(これは、助けるべきか? というか、いけるのか? 防御フィールドの性能がどのくらいなのかが不明なんだけど……)


 狼(?)も少しは怪我をしているようだ。


(いざとなれば《創造》もあるし)


 ということで、出来るだけ静かに剣を抜いて崖沿いに丘を下り、風下の馬車の陰から足音を殺して忍び寄る。もう少し、という所で狼(?)が何かに気付いたのか顔を上げた。

 それを見たオレは、一気に走り寄り剣を振り下ろす。


(もらった!)


 が、しかし。重い手ごたえと共に剣が弾き返された。


(やったことはないけど、タイヤを木刀で殴ったらこんな感じか? まったく切れる気がしないんだけど!?)


 力も技も足りていない結果だろうか。

 動揺して動きを止めてしまった次の瞬間には、喉に食い付かれて倒れていた。


(おぉっ……! 動きが見えなかったぞ!?)


 軽く恐慌状態に陥ったが、まったく痛くないことに気づいて少し冷静になる。


(防御フィールド、グッジョブ。とはいえ、手詰まりだな……。どうしたものか)


 食い付かれたまま脚で押さえ込まれた身体は、狼(?)の重さもあってほとんど動かせなくなっていた。


(えぇい。手段を選んでいる場合ではない!)


 ムキになったように喰らい付く狼(?)の頭に、かろうじて動く左手を向ける。

 その次の瞬間、くぐもった爆発音と共に狼(?)の頭が真っ赤に爆ぜた。


(魔法っぽいものだけではなく、機械的なものも大丈夫、と。《世界の理による最適化》グッジョブ!)


 役目を終えたリボルバータイプの銃は、あらかじめ設定していた通りにサラサラと崩れて消えていく。


(あ〜あ……。血まみれだよ)


 グロくなった狼(?)を見ないようにしながら、その下からなんとか這い出す。すると、狼(?)が何かに顔を埋めていた場所に、質の良さそうな服を着た男が見えた。……が、すぐさま目をそらして反対側を見回す。


(お腹が抉れてるのなんて、見えてないったら見えてない!)


 目を逸らして見える範囲には三人。その内の二人の武装した男たちは、やっぱり亡くなっているようだ。


(喉を食い千切られてるのなんて、見えてないったら見えてない!)


 見ることができる範囲が狭まる中、残りの1人の下へ。簡素な服を着た白っぽい長髪の小柄なその人は、やせ細り薄汚れているが、整った顔をしていた。


(……女の子?)


 その少女は、かろうじて生きているものの意識はなく(後で聞いたら、足に噛み付かれ、倒れた時に頭を打って意識を失ったらしい)、靴が飛んで裸足になっている足に、大きな傷を負っているのが見える。


(左のふくらはぎが大きく抉れてるのなんて、見えてないったら見えてない!)


 さらに見ることができる範囲が狭まる中、慌てて超回復薬を創った。


(ゲームとかやってたおかげか、こういうアイテムのイメージには困らないな)


 小瓶を傾け口に流し込むと、欠けていた部分が盛り上がってあっという間に傷が塞がり、もうどこに傷があったのか分からなくなった。


(血の匂いで魔物とか寄ってきそうだよな)


 気配など分かりはしないが、とりあえず森の方を窺い、何も見えないのを確認してから改めて少女へと目を戻すと。


「……あれ?」


 やせ細っていたはずの身体に肉がつき、女の子らしい丸みを帯びているのが分かる。

 薄汚れた顔は、やせていた時よりも美少女度が上がっていると思う。


(異世界美少女キター! ……って。違う! 超回復薬、仕事し過ぎだし!)


 確かに、やせ細っていたのを残念に思う気持ちはあったかもしれない。そんな自覚していない下心が起こしたのであろう結果に動揺し、アホなことを考えていると。


「う、うぅん……」


 少女が身じろぎし、目を開ける。


「お、大丈夫かい?」


 そう問うオレに、少女が口を開く。


「……awatana?」


 その口が紡ぐ綺麗な音色、しかし残念ながら、オレにはその音色が表す意味を理解出来なかった。


(異世界の洗礼キター! 何言ってるかまったく分からないよ!?)

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