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第3章ー4

「ヴェルダン要塞を救援するとして、どうすればよいと思う」

 林忠崇元帥は、他の提督たちに尋ねた。


「当然、救援のために兵をまず送り込む、というのは駄目ですな。

 正にそれが独の狙いです。

 兵をヴェルダン要塞に送り込めば送り込むほど独軍の思う壺にはまります」

 柴五郎中将が皮肉気に答えた。


「まず、独軍の支援を断ち切るというのはどうでしょう」

 八代六郎中将が言った。

「仏軍より独軍の被害の方が圧倒的に多くなり、独軍の方が消耗するようにさせる。

 そして、ヴェルダン要塞攻撃を独軍が諦めざるを得ない状況を作り出すのです。

 独軍が要塞を攻撃するには砲兵による支援が必要不可欠です。

 また、攻撃を続けるには補給が必要不可欠です。

 それらを妨害します」


「どうするつもりだ。

 騎兵による挺進行動でも行うのか」

 吉松茂太郎中将が反問した。

「我々には新兵器があるではありませんか」

 八代中将はにこやかに言って、山下源太郎中将を見た。


 吉松中将を始め、他の提督連もその瞬間に察したが、当の山下中将は渋い顔をしながら言った。

「日本海軍航空隊を当てにしてもらっても困る。

 我々にいるのは60人に満たない搭乗員とそれを支援する整備兵たちだ。

 ガリポリ半島で使用したショート水上機を仏海軍に委託して保管してもらったばかりだ。

 陸上機を至急入手して、搭乗機の転換訓練を行う必要がある。

 少なくとも1月、できたら2月は欲しいな。

 それに新しく搭乗員になる者、約200人が日本から来ることになっているが、彼らも訓練する必要がある。

 いろいろ考えあわせると日本海軍航空隊が最前線で活発に活動できるのは、頑張っても5月に入ってからになる。

 本音で語らせてもらうと6月にさせてくれ」


 会議に参加している提督全員がうめき声をあげた。

 とても間に合わない。

 となると、どうするか、提督たちは考え込んだ。


「越権行為もいいとこだが。わしの名前で、パリの日本大使館に連絡しろ」

 林元帥が言った。

「英露に同盟国の義理を果たせと、日本も仏と協働して声を上げてもらう。

 東部戦線やバルカン戦線等で攻勢に転じてもらうのだ。

 特に東部戦線の露に期待しよう。

 個人的には、露に大量に血を流してもらいたいしな。

 そうすれば大戦終了後に満州や韓国防衛に気を使わなくて済む」


「酷いことを言いますな。

 ですが、私も同感です。

 それがまず第一の方策になりますか」

 黒井悌次郎少将が言った。

 他の提督、柴中将らも同意して肯いた。


「毒ガス対策等も充分に講じた上でないとヴェルダン要塞に我々は行けないのではないでしょうか。

 毒ガス対策のマスクを入手したり、兵たちに対策を教授したりする必要があります」

 吉松中将が発言した。


 昨年の4月に独軍が塹壕対策用に塩素ガスを使用、更に同年12月にはホスゲンを独軍が使用と最新の西部戦線では独軍が攻撃の際に毒ガスを使用するのが当たり前になっている。

 当然のことながら、英仏軍も毒ガスを使用して報復しているが、独の方が化学工業の基盤が充実しており、英仏側が毒ガスを使用した戦闘に際しては劣勢を強いられている。

 ちなみに日本軍海兵隊の毒ガス対策はまだなされていないと言っても過言でない状況だった。

 確かに毒ガス対策は必要不可欠だと会議に出席している提督たちは皆、考えた。


「よし、毒ガス対策の機材、新しい陸上機等々、大量の物資を英仏に売ってくれるように依頼しよう。

 そして、4月一杯は仏軍に頑張ってもらおう。

 その代り5月から我々はヴェルダン要塞に赴き、守備に奮闘しようではないか。

 その間にできる限りの対策を講じよう」

 林元帥は会議を締めくくるように言った。

 会議に出席した提督達は皆、同意した。

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