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プロローグー6

 この世界の日米関係の説明になります。

 また。この世界では韓国が独立をずっと維持し、日本の韓国併合の動きは全く無かったので、伊藤博文公はハルピンで暗殺されていません。

 明治天皇の大喪の礼に参列した後で、伊藤博文公は病死しています。

「それにしても、満鉄の日米共同経営の結果、米国との関係が良好なのはありがたいですね」

 土方大佐は言った。


「まあな。日系移民のおかげで、米国内でも排日運動が盛んになり、それに反発する形で日本国内でも反米運動が盛んになるかもと心配していたのだが。

 満鉄の日米共同経営をきっかけに、米国財界としては満州を足掛かりに中国国内市場への本格進出を果たせるようになった。

 米国のために日本が中国の門戸開放に協力してくれたと米国財界の重鎮の多くが考えている。

 こうした中で日本の機嫌を損ねるのは、米国経済上よろしくないと米国財界の多数派は考える。

 そうなると、米国の新聞の論調も広告主である米国財界の多数派の機嫌を考えると親日的になって来るしな」

「お互いの新聞が敵意を煽るよりも遥かに建設的であるのは間違いないですよ」

 林元帥の述懐に土方大佐は答えた。


「日本の新聞も同様だ。

 満鉄日米共同経営に日本の財界は満足している。

 満州と韓国の市場を米国に割く羽目になったが、それより大きな米国市場が日本に好意的なわけだ。

 米国で排日運動が起こり、日本製品が売れなくなる方が満州、韓国市場を独占できることよりも日本の財界にとって正直に言って困ったことになるからな。

 そして、日本も新聞社の経営者は、財界の意向を完全に無視はできない。

 そして、一昨年の日英同盟改定の際に、英国から米国との総括的仲裁裁判条約に日本も加わらないかと誘いを受けた際に日本はそれを受け入れた。

 米国の上院のモンロー主義者の反対により日英米の総括的仲裁裁判条約締結は流れたが、日米関係が良好なのを世界に示す効果があった。

 未だに日米戦争に備えるべきだというのは馬鹿だけだ」

 林元帥は最後に辛辣な口調で言った。


「そういえば、日英同盟改定の際に行われた英国の総括的仲裁裁判条約への加入の誘いに、小村外相はいい顔をしなかったそうですね。

 人種的偏見から日本に不利な仲裁裁判結果が出るのを心配したとか」

「まあな。

 確かに小村外相の心配も最もだが、元老の伊藤博文公らの考えがより深かったからな。

 どうせ米国上院が総括的仲裁裁判条約締結なんて呑むわけがない。

 それなら、総括的仲裁裁判条約締結を呑んだ方が米国に対する敵意が無いことを示せると言われたそうだ。

 伊藤公は日清、日露と2つの戦争で米国に恩義を感じてはいるが、元々は尊王攘夷の志士だからな。

 冷めた目で米国を見ている。

 先日、伊藤公が病死されたのは本当に惜しまれることだ」

 土方大佐の問いかけに林元帥は答えた。


「しかし、また日露戦争が起こった際には米国が味方してくれるのは、まず確実なのでしょう」

「まあな。米国は今や日本と協同して南満州、韓国に鉄道をはじめとする大規模な権益を持っている。

 名目上は日本の権益だが、実際は日米共同の権益で資本の問題から米国の方が、英国に次いで大きな権益を中国国内に持っている。

 中国国内で反英米日の主張が広まるわけだ。

 そして、米国としては日本の軍事力が中国国内権益維持に必要不可欠だ。

 日露戦争と言う事態が起こったら、日本に味方せざるを得ない」

「たかだか、米国本土内で10万人余りの日系移民を排除することで中国の権益を失いたくないということになるわけですな」


「民衆レベルではそれなりに排日感情があっても、全国的な運動にはならん。

 日本は米国のために中国市場の門戸開放の先棒を担いで、それで米国は利益を得ているという現実があり、更に中国民衆の大規模な反米運動がある。

 中国市場を維持するために日米は国家レベルでは嫌われ者同士で結束するしかない」

 林元帥は何とも言えない口調で話した。

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