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プロローグー5

「南満州の開発の方は順調に進んでいるみたいですな」

 土方大佐は林元帥に言った。


「鞍山製鉄所を筆頭に順調に進みそうだ。知っているか?USスチールが何を思ったのか、鞍山に製鉄所を設立することを1909年に決めたが、その際に亜細亜一の製鉄所にすると豪語したそうだ。おそらくタフト大統領のドル外交に目がくらんだのだろうがな。でも、それが本当になりつつある。日本国内で最高の製鉄所の八幡製鉄所が顔色をなくす量の製鉄をとうとう今年、鞍山製鉄所は実現したそうだ。質の面では言うまでもない。八幡製鉄所は顔色を変えて、質量の向上に努める羽目になった。そして、鞍山製鉄所の製鉄を当てにして関連工業が発展しつつある。例えば、南満州鉄道の機関車やレール等は近々南満州内での完全生産体制が整うのではという見通しだそうだ」


「嬉しいような、哀しいような話ですな。南満州が順調に発展するのは喜ぶべきなのですが、まだまだ日本の技術が欧米に及ばないのを思い知らされます」

 土方大佐は林元帥に言った。

「全くだな、韓国の政治的混乱が収まり、理性的に開発が進めば、南満州と平安道、漢城、慶尚道をつなぐ一大工業地帯が実現するだろう。日本にも見返りがある筈だ。それを期待しよう」

 林元帥は話を締めくくった。


「そういえば、台湾情勢はどうなのです。武力蜂起は収まったのですか」

 土方大佐は話を切り替えた。

「ようやく収まりつつあるというところだな。武力抵抗には徹底鎮圧で対応するが、非武力抵抗ならば話し合いで対応すると言う硬軟両面の対策が功を奏しつつある。それに日清戦争から20年近くが経つ。武力抵抗しても無意味と言うのが住民にわかりつつある。それに武器を手に入れる先も住民には無くなりつつある。清国が崩壊し、中華民国になったが、革命騒ぎが絶えない有様で、中華民国内からの武器支援は絶望的だ。米領フィリピンは日本と友好的で、積極的に台湾への武器の密輸を取り締まっているのが現状だ。こうして孤立した台湾住民が武力抵抗に希望が持てるか?」

 林元帥は反問した。


「台湾の住民で理性がある人は武力抵抗に絶望するでしょうな」

「そして、日本は台湾の開発に積極的に投資した。その分、台湾から見返りとして利益を受け取ってもいるがな。台湾は今や日本の穀倉であり、砂糖の一大産地だ。鉄道や通信網の整備も進み、更に公衆衛生も清国統治時代と比較すれば大幅に向上した。台湾住民の生活水準は、明らかに向上し、贔屓の引き倒しの気がわしにはするが、日本国の本土の住民の生活水準とほぼ遜色がないと台湾総督府は豪語する有様だ。こうなった台湾住民の大部分が武力抵抗を続けるわけがない」

 林元帥は話をした。


「そういえば、台湾へと亡命を希望する中国本土の住民が辛亥革命以降に増えているそうですな。そこまで豊かになったのなら、私も中国本土の住民なら亡命を希望したくなります」

「かつて、台湾の住民の武力抵抗が激しくて、海兵隊も何度も陸軍の応援のために台湾に赴いたことを考えれば隔世の感があるな。斎藤一提督が、台湾で何度も山登りをする羽目になって、山岳地帯に海兵隊を行かせるなと抗議の電文を海兵本部に送ったことさえあるのは知っているか」


「私が知らないわけがないでしょう。岸三郎大佐が登山を趣味にして、海兵隊内の登山が同好の士を集め出すことさえやりましたから。岸大佐に言わせれば趣味と仕事を合致させて何が悪いということですが、海兵隊に山岳部隊を作るつもりか、と私は岸大佐に苦言を言いました」

「海兵隊の山岳部隊か」

 心の琴線に触れたのか、土方大佐の言葉に林元帥は爆笑した。

 南満州と台湾の情勢です。

 次から東アジア以外の世界情勢になります。

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