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第2章ー22

 日本軍の攻勢に連動した攻撃をANZAC軍団が行います

 林忠崇元帥は、8月6日の昼前、戦況を確認して満足げに肯いた。

 海兵隊の上陸作戦の第一段階は完全に成功した。

 後は掃討戦の準備を整えるまでだ。

 ガリポリ半島をトルコ軍の餓半島と化してやる。


 ここまでの戦果を挙げたのだから、トルコの首都へガリポリ半島から英仏日軍を進撃させるべきというアホが出るかもしれないが、補給の観点からすれば良港のないガリポリ半島からの進撃は無理筋だ。

 補給上、あきらめるしかない。

 林元帥は残念な思いに囚われた。


 8月6日の朝、ナイブルネシ岬のトルコ軍は海兵隊の猛攻の前に全員が戦死するか捕虜となり、海兵隊はスヴラ湾の橋頭堡とANZAC海岸に展開するANZAC軍団の橋頭堡の連絡を完全に確保した。

 この状況にANZAC軍団の将兵は奮い立った。

 これまで苦戦を強いられてきた戦況が一変しつつあるのだ。


 林元帥は上陸作戦前にANZAC軍団に対し、スヴラ湾上陸作戦と連動した攻勢を行うように要請していたが、ANZAC軍団は攻勢計画は立てるものの、実行に移そうとは思っていなかった。

 なぜなら、自分たちですら苦戦するこの戦況を日本の海兵隊が一変させることが出来るとはとても思えなかったからだ。


 どうせ、海兵隊の攻撃は失敗するだろう、そもそもドイツ統一帝国建国前からの戦歴を誇る老将が海兵隊の指揮を執るというのだ。

 そんな老将が現在の戦術等を理解しているはずがない。


 だが、その老将が新型の上陸用舟艇を活用した夜間奇襲上陸作戦を遂行し、航空隊の爆撃による地上支援とを存分に活用して見せている。

 ANZAC軍団の将兵は驚愕しつつも、自分たちが海兵隊に劣らぬ精鋭であることを示そうと決意して、攻勢計画を実行に移すことにした。


 ANZAC軍団の攻勢計画は単純と言えば単純だった。

 ローン・パイン、ガバ・テペ方面に牽制攻撃を掛けることで、へレス岬の友軍を援けようとしているように思わせつつ、実際の主攻撃は サリバール、チュヌク・ベア方面へと行おうというのだ。

 だが、その前提条件として、テッケ・テベへの日本海兵隊の攻撃が行われているというのがあった。

(裏返せば、そんなことは日本の海兵隊はできないと考えていたので、攻勢は計画に止まると考えられていた)


 しかし、8月6日の昼前には、テッケ・テベへの日本海兵隊の攻撃が行われるどころか、テッケ・テベが日本海兵隊の手に完全に落ちたとの連絡が届いた。

 このまま行けば、日本海兵隊によってガリポリ半島の根元が抑えられるという予想さえされだした。

 ANZAC軍団司令部は自分たちが日本海兵隊の攻撃中に寝ていたという悪評を立てられないためにも、緊急に攻撃を行うことを決断した。


 8月6日の日没が迫る頃、ANZAC軍団の攻勢準備は何とか整った。

 すぐに攻撃を開始すべきか、7日の朝を期して攻撃すべきか、軍団司令部内で意見が割れたが、現場が勝手に解決してしまった。

 攻勢準備が整ったANZAC軍団の将兵はすぐに攻撃を開始してしまったのだ。


 日本の海兵隊に勝利の栄光を独り占めされたくないというエゴからの攻撃開始だったが、このことは完全にトルコ軍の予想に反することだった。

 これまでの英仏軍の鈍重さから、早くともANZAC軍団の攻撃開始は7日朝からであるとケマルでさえ考えていたのである。


 ANZAC軍団の攻勢は、皮肉にもへレス岬方面からテッケ・テベ方面への救援に向かうトルコ軍の横腹を的確に衝くものとなった。

 時も場所もトルコ軍にとって最悪、英仏日軍にとっては最良のときにANZAC軍団の夜襲が始まった。

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