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第2章ー18

 上陸作戦の決行日が近づく中、41期の同期生たちの会話等のシーンです。

 8月2日の夕方、大田実少尉は同期の草鹿龍之介少尉らに水上機基地からの別れを告げていた。

 上陸部隊の中隊長、小隊長クラスは偵察員として何度かガリポリ半島の上空を飛び、上陸地点のスヴラ湾近辺を重点的に偵察した。

 トルコ軍の配置、塹壕線等の陣地整備、そしてガリポリ半島の地形等々がこれによって把握できた。

 空からの偵察なので実際の戦闘では見え方が違うだろうが、全く知らないよりは遥かにマシだと大田少尉は思った。


 ちなみに同じく海兵隊に所属している同期の市丸利之助少尉は昼間に草鹿少尉らに挨拶を済ませている。

 大田少尉は最後の偵察飛行組で、今から所属部隊に戻り、上陸直前の準備に取り掛かることになっていた。


「色々と勉強させてもらった。

 礼を言う。

 ガリポリ半島の上陸作戦では情報を生かして勝ってみせる」

 大田は草鹿らに言った。


「ぎりぎりまで偵察飛行は続ける。

 何か変わった動きがあればすぐに連絡する。

 こちらも地上部隊の見方とか、いろいろと勉強させてもらった」

 草鹿は言葉を返した。


「それにしても、地上部隊の偵察や爆撃は本来は陸軍航空隊にやらせたいものだ」

「全くだな」

 草鹿の愚痴に大田は笑った。

 周囲も笑った。


「海上を偵察して、敵の船を追い求め、見つけた敵の船に魚雷をぶち込む。

 そういった戦闘をしたいよ。

 それこそ海軍航空隊の本来の仕事だろう」

 松永貞一少尉がぼやいた。


「松永の言うとおりだな」

 青木泰二郎少尉も松永の言葉に肯いた。

「今回は仕方ないし、この戦争中にそういった機会に恵まれるかは分からんが、そういった機会に恵まれることを同期として祈りたい」

 大田の一言に、皆は肯いた。


 大田が水上機基地から出発するのを見送って、草鹿らが基地に戻ると明日からの偵察飛行の予定が掲示板に張り出されていた。

 これまでは海兵隊員が偵察員を果たしていたので、航空隊の操縦員資格を持つ者は全員が操縦員として活動していた。

 しかし、海兵隊員が全員、原隊に復帰した今、半数は偵察員として飛行することになる。


 草鹿は自分の名を操縦員の中から探したが自分の名は挙がっていない。

 偵察員になるのか、何だか格下げの気がする、と草鹿が内心で思っているといきなり後ろから肩を叩かれた。

 思わず振り向くと大西瀧治郎中尉がいて、声をかけてきた。

「明日からよろしく頼むぞ」


 草鹿がいきなりの声掛けに返答できずにいると、大西中尉は気にせずに言葉をつないできた。

「お前と組んで、明日から飛ぶことになった。共に頑張ろう」

「分かりました」

 草鹿は取りあえず返答しつつ、思った。

 これはきついことになりそうだ。


 大田が原隊に戻ると、部下たちは黙々と上陸作戦の準備をしていた。

 大田はとりあえず、水上機基地で作成していた偵察結果の報告書を清書し、間違いがないかを確認して、中隊長に提出した。

 中隊長を経由して上層部に報告書は届けられることになる。


 気が付くと消灯時刻にもなっている。

 部下の様子を確認したかったが、明日にすることにし、大田は眠ることにしたが、中々寝付けない。

 初の実戦を前に精神が緊張して眠るに眠れないのだ。

 体は疲れているのに眠れない、はっきり言って辛かった。

 部下たちも同様なのだろうか、まだ3日もあるのに大丈夫か、大田は様々に思いを巡らせた。

 これまで頭では戦場を考えてきたが、実際の戦場の臭いを自分は嗅いでいない、戦場の臭いに自分は耐えられるだろうか、そんなことまでも考えている内に大田は眠りに落ちていた。

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