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第2章ー12

「実はガリポリ半島上陸作戦は泥縄もいいところの作戦なのだ。

 最初の作戦と現在の状況は全くかみ合っていないというか、違うものになっている」

 林忠崇元帥は言った。


「チャーチル海相が最初に立てた作戦では、英海軍が今年の2月に戦艦12隻を主力とする艦隊をダータルネス海峡に派遣、コンスタンチノープルを戦略目標として艦隊の水兵から成る陸戦隊によってガリポリ半島を占領し、その支援の下、ダータルネス海峡を英艦隊が強行突破するという計画だったらしい」


 それを聞いた山下源太郎中将は呆れたような表情を浮かべた。

 どう見ても成功するとは思えない作戦だ。

 トルコに陸軍が無いと思っているのか。

 艦隊の水兵から臨時に編制された陸戦隊でガリポリ半島が占領できると考えて計画を立案したとは。

 ちなみに7月下旬現在、英仏軍13個師団とトルコ軍16個師団がガリポリ半島で対峙していることから考えれば、如何にチャーチル海相の陸軍を使用しないという最初の作戦が無謀なものか分かるものだ。


「だが、さすがに英陸軍等から横槍が入り、修正がいろいろとなされていくことになった。

 ガリポリ半島方面に対する作戦は、2月19日から本格的に始まった。

 その際は英仏併せて前ド級戦艦を含むとはいえ18隻の戦艦から成る艦隊がダータルネス海峡に対する攻撃を行ったが、トルコ軍の砲撃が意外と効果的でな。

 機雷を除去するための掃海作業が進まなかった。

 そうこうしている内に3月18日には機雷と砲撃の組み合わせで英仏の戦艦3隻が沈没、それとは別に3隻が大破するという大被害を艦隊が被った。

 こうして海軍単独の作戦は中止されることになった。

 ガリポリ半島を陸軍で確保し、その支援の上でダータルネス海峡を艦隊が突破するという作戦になったのだ」

 林元帥は、話を一段落させた。

 山下中将は肯いた。


「だが、ガリポリ半島に陸軍を派遣するということ自体が急に決まったものだから、英軍に適当な部隊が無い。

 慌てて部隊をかき集めることになった。

 仏軍にも協力を要請し、英本国から第29師団、オーストラリア、ニュージーランド連合部隊が2個師団、英海軍師団が1個師団、インド軍1個旅団に加え、仏軍1個師団をかき集めてガリポリ半島には4月25日から上陸作戦が開始された」

 林元帥は言葉をつないだ。


 それを聞いた山下中将は今度は感嘆するような表情を浮かべた。

 急な作戦にも関わらず、よくもまあそれだけの部隊を集めてガリポリ半島に上陸作戦を行えたものだ。


「だが、所詮は泥縄な作戦だ。

 上陸後すぐにトルコ軍に英仏軍の前進は阻止されてしまった。

 わしが海軍軍令部第4部から得た情報によると、どうも上陸作戦前にガリポリ半島のまともな地図さえ無いのに英仏軍は作戦の立案等を行って、作戦を実施したらしい。

 更にトルコ軍は自国の領土に敵が上陸してきたということで果敢な反撃を行い、英仏軍を阻止した。

 そして、西部戦線の悪影響だ。

 充分な砲兵の支援なしに、英仏軍の歩兵は上陸に成功しても前進しようとしない」

 林元帥は、英仏軍を臆病者と暗に蔑んだ。


 我が海兵隊なら砲兵の支援が無くとも突撃すると言外に言っている。

 実際に日露戦争時に海兵隊は砲兵の十分な支援無しに旅順要塞に突撃したことがある。

 最も結果は大失敗に終わったので誇れるものではない、と山下中将は内心で思った。


「それから後は、西部戦線と同様だ。

 英仏軍とトルコ軍はガリポリ半島でお互いに塹壕を競うように伸ばし、堅陣を築いてしまった。

 そして、お互いに敵に負けまいと増援部隊を集めあって膠着状態に陥っている。

 この状況を打破するために我々は呼ばれたわけだ」

 林元帥は言葉を切った。

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